雷電の申し子②
「マスター、試したいことって?」
座って準備している俺に、光明が顔を覗き込んで尋ねてきた。
「ああ、これを改良したから試せないかなって」
「これって、《正純》?」
俺が手に持つのは真っ白な刀《正純》。
「改良しなくても十分強いでしょ? なんでまた」
「いやー、この前の風魔の里の一件は言ったじゃん? それの対策用にちょっとばかり性質を変えてみた」
俺の異能の一つ《再構成》は、《異能工房》で作成した呪具を造り直すことができる。とは言え、呪具の形状を変えることはできない。作り直せるのは中身の異能だけだ。
「どういう風に変えたのさ」
「それは摸擬戦の時に見せるさ。これを使う時がくればだけどね」
「それが二人同時に相手をする理由?」
「それもあるけど、やっぱり二人には成長してほしいからね」
「? どういうこと?」
「音無君の異能は広範囲に強力な攻撃を放つタイプだけど、これには弱点があってね。光明、何かわかる?」
「んー、速度が遅いこと?」
そりゃ光明目線でみりゃ遅いかもしれないけど。あれはあれで結構いい速度出てんのよ?
「残念、外れ。正解は、味方も巻き添えになること」
「あっ、確かにあの雷撃じゃ……」
「自分は良くても周りの被害は甚大だ。防御しようにもあの威力、並みの異能者じゃあ防げない。だから音無君にはそこを意識してもらいたいのさ。普通の異能戦は一対一でもなければ一対多じゃない。多対多が圧倒的に多いからね」
異能戦の基本は集団戦。重要なのは個の力ではなくチームワーク。
「そうなると、楓にも何か考えがあるの?」
「楓の場合は普通の異能戦じゃない一対多が多いから、経験を積んでほしいってだけ」
楓の依頼のほとんどは警察からの依頼が多いらしく、詳しい内容は教えてくれなかったが、反社会組織に関する依頼が多いと聞いた。そりゃ教えてくれんよな。
故に楓は公儀隠密、現代の忍者みたいな感じなので、あまり普通の異能戦を経験したことが無い。それは教える側としてはとても我慢できる状況ではない。やはり最低限のことは教えなければ。
「もし二人が俺を連携で追い詰めたときには、迷わず《正純》を抜くつもりだよ」
「ということは、今回は僕の出番は無し、お留守番だね」
「一応観察と分析はしてほしいから店には戻るなよ?」
「委細承知」
あっけらかんとした態度で言って観戦席に向かっていった。
さて、そろそろ五分が過ぎる頃だ。気合いれなきゃな。




