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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第一章 ようこそ風魔の里へ
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報告が終わるまでが仕事です①

《三千世界》で家に帰ったが、依頼を達成すると報告義務が発生するので今俺は二人を置いて保障局にいる。オムライスはお預けだよちくしょう。



「──ということです」



 七瀬さんに風魔の里の事を話した。勿論、風祭と謎の老人のことも。



「……そうですか、わかりました。風祭のことは異能庁と協力して身柄を確保するように打診してみます。仲間と思われる老人のことも。朱雀院さん、連絡をお願いできますか?」



「直ちに」



 朱雀院さんが退室する。これで、あいつらのことは放っておいても保障局と異能庁が何とかしてくれる。引継ぎ完了だ。



「……さて、お疲れ様でした」



「いえ、これぐらいなら大丈夫ですよ」



「それならいいんですが。ちょっとお話があるのですが、お時間はよろしいでしょうか?」



「ええ、問題ないですよ」



 何の話だ? もしかして追加の依頼の話か? ちょっと勘弁してくださいよー。依頼で疲れてるんですから。



「そうですか。話というのは今度の大会のことです」



 今度の大会──《神遊(しんゆう)(さい)》のことか。神と人が競い合ったという歴史書になぞらえた、異能者の競技大会。



依頼の話ではなくて一安心だけど、これはまた面倒なことになりそうだ。



「種目決めですか? それとも施設の設営でしょうか」



 種目決めが良いなー。会議出るだけだもん。発言はしなくちゃいけないけど。



「種目は決まりましたよ」



 と言って、書類を一枚渡された。あ、やっぱり決まってんのね。なら俺は設営の方に回るか。



 だが書類を渡された以上、目を通さない訳にはいかない。えーと、なになに?



 今回の大会の種目は五つ。例年通りのトーナメント。今年初めての試みとして、個人だけでなく五人一組での団体参加も可能。へー、面白いことやるな。戦略性が増しそうだ。



さらに今年で三回目になる朱雀院さんの異能を使ったバトルロイヤル脱出ゲーム。迷宮の中で残り一人になるまで戦う精神力がゴリゴリ削られていく鬼畜ゲームだ。やたら観客に人気だよなこれ。



朱雀院さんこれの運営に局長秘書の仕事までやるんだぜ? バケモンですかね。



他にも、疑似的な魔物を斃すサバイバルクエスト。やりすぎなぐらいの障害物を突破する障害物レース。



そして、最後の種目は式神トーナメント。



……おいおい、一体どういうことこれ? 



「七瀬さん、最後のコレは今年初めての枠のやつですよね。何ですこれ」



「お偉いさん達からの強い要望がありましてね」



お偉いさん。その人達がどういう人間かは知らないが、七瀬さんに要望を通させられるレベルの人間であることは間違いない。となると、政治家か業界団体幹部か。



これ毎年候補に挙がってたやつだな。毎年七瀬さんがあの手この手で落としてきたけど、遂に通ってしまったか。



「強い要望、ねぇ……。どうせ自慢したいだけでしょう?」



「その通りだと思います」



 七瀬さんと一緒に呆れる。



 どうだわしの式神は強いだろう=わしはすごいだろう、って考えてるんだろうな。



まるで子どものようだ。お偉いさんの考えることは俺にはよくわからん。どうして自慢したがるんだ? 式神はペットでも玩具でもないのに。



これやってることは奴隷を戦わせるのとほぼ同じみたいな側面あるんだけど、人権団体は動いてないのか? 何でこういう時は動かないの?



「巻き込まれる式神も大変だな……」



「そうですね、ですので優勝してください」



「……え?」



 なんか今とんでもないこと言わなかったかこの人。



「ちょっと待ってください。なんで俺が?」



「だって、私が知る限り式神術師最強は鳴神君、貴方ですから」



「そう言って頂けるのは有難いですけど、本職じゃないんですよ」



 俺は式神術師じゃなくて、本業は呪具職人だ。



ちなみに式神術師というのは、式神と契約し操る異能者の職業だ。一応国家資格いるぞ。俺は持ってる。



「透君が圧倒的に優勝すれば、今後このようなことが行われることはないでしょう」



 うちの式神は精霊と神霊だから、そんじょそこらの式神とは格が違う。戦闘が苦手な紫苑や翡翠で

も、普通の式神になら簡単に勝てるだろう。



「そりゃそうかもしれませんが……」



 何よりもメンツを気にするのがお偉いさんの習性だ。勝てないと分かればそもそも勝負をしてこな

いだろう。



七瀬さんの主張も分からなくはないんだけど、自分の式神を自慢するような大会に出たくない。見世物にしたくないというのもあるが、うちの式神全員人型なので、目立つったらありゃしない。しかも美男美女ときたもんだ。



そんな式神がいたとなれば、あらぬ想像をしてしまうのは人の性だ。それで騒ぎ立てられるのも非常に面倒。何せ人間は想像と現実を無意識に混同させやすい。



それを防ぐには、想像と現実の線引きをしっかり引くことだが、それが出来るようになるには、線引きをしないといけないことが分かってないといけない。果たして、そこに至った人がどれくらいいるのか。



俺のためにも式神たちのためにも、丁重にお断りしようと思った矢先。



「という訳で、頼みましたよ。もうエントリーしましたので」



 退路は無かった。というか職権乱用じゃねえのコレ? ここはブラック企業だったか……。



「有無を言わさないこのやり方……七瀬さんらしいですね」



「だってこうでもしないと関わってくれないでしょう?」



「まあそうですけど」



十二神将メンバーは大会に何らかの形で参加することが義務付けられている。局長直属の部署だからかな。誰だこんな制度作ったのハイ局長ですねすいませんでした。



俺は例年通りに設営の方でお茶を濁すつもりだったのに……。



俺は式神自慢なんてするつもりはないしな。だって自慢するまでもなくすごいから。神霊と精霊だぞ。



「というか予選はどうなってるんです」



 普通なら予選でふるいにかけれるるのだが、俺はそんなのやった覚えはない。



「予選は参加者が少なかったので無しです」



「そうですか」



 まあ式神持ってる人ってめっちゃ少ないしな。それこそ金持ちの道楽レベルだし。



 いや俺は大金持ちってわけじゃないけどね? 貯金なんて三十万しかないよ。



 総資産換算だと億超えるけど。呪具って結構高いんですわ。



「ところで、《決闘遊戯》の設営は誰がするんです?」



「そりゃ勿論、鳴神君主導で」



 仕事量増えたーーーーーっ!



「じゃ、そういうことで。お偉いさんのプライドをへし折ってくださいね」



 あーもうしゃーない。そもそも、七瀬さんにはさっきこっちから無理難題を押し付けたばっかりだ。断れるはずもない。



 最初から、決まっていたことだったんだ。



 そう自分に言い聞かせ、無理やり納得させる。



「……いいですよ。優勝してみせようじゃないですか」



式神を自分が自慢したいがためにこんなことをする奴らに対して呆れを覚えるのも事実だ。本来の式神の扱い学べ。陰陽道からやり直せ。



「それじゃ、他に用事あるんでそろそろ」



 風祭が学校を襲撃した事実を報告しないといけない人がいる。



 それにここに留まっていたら更なる仕事を押し付けられる気がする。趣味の時間が無くなるのは嫌だ。



「彼女とデートですか?」



「何言ってんですか、仕事ですよ仕事。それに彼女とかいませんし」



俺の立場上、彼女なんていたらその人が危険に晒されるだろ。そういう人がいたらなー、とは思うけど。現実的に考えれば、俺は一生未婚だろうな。



「その歳で彼女いないというのもどうなんでしょうねえ……」



うっせーやい。



千鶴(ちづる)さんから預かってる身としては心配ですよ」



 七瀬さんが言った《千鶴さん》とは、俺の義母である。七瀬さんは義父と共に学生時代からの親友だそうだ。



「心配しないでくださいよ。大丈夫ですから」



「ということは気になる相手がいるんですか? もしかして朱雀院くんでしょうか?」



「何でそうなるんですか。あり得ませんよ。なんか敵意持たれてますし」



 天地がひっくり返ってもそれだけはない。断言できる。



「そんなことはないと思うのですがね……」



「そうですか?」



「そうですよ」



 七瀬さんが親戚の集まりでやたら絡んでくるおじさんになりつつある。



このまま話を続けていたら終わらないので、早々に切り上げるとするか。仕事を押し付けられないうちに。



「もういいでしょう。それじゃ」



《三千世界》を顕現して扉を開ける。七瀬さんが「ちょっと」と呼び止めてきたが無視する。こちと

ら出向してるだけの非正規だ。これ以上は職務の範囲外です。



そして行き先は、夏原学園理事長室前。


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