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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第五章 校外学習行ってきます!
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登校日っているの?③

全く、居心地が悪い。



 とは言え、不満があるわけでもなく、嫌ということでもない。



 純粋に、ここにいていいのかという疑問が、頭を駆け巡っているのだ。



「やっぱこれじゃん?」



「ふむ、些か派手ではないか?」



「私も、ちょっと……」



「えーいいじゃん! とおるんもそう思うでしょ!?」



「……話を振られても」



 女子三人が、机で雑誌を見ながらあーでもないこーでもないと議論していた。



 その邪魔にならないよう、ひっそりと本の整理をしていたのだ。



 《術式》は使っていない。仲間には失礼だから。



 雑誌を持っているのは梅森さん。その左側から雑誌を覗き込んでいるのは、やたらとテンションが高い桜木さん。



 そして桜木さんの提案に疑問を示していたのは東雲さん。梅森さんの左側にいる、ちょっと古風な人だ。



「ノリが悪いぞ~? もっとアゲてけ?」



「図書館ではお静かに」



 距離があるので声が大きくなるのは分かるんだけどね。



「……しゃーなし、おりゃ!」



「うわっ!?」



 身体が一瞬だけ動き、強制的に三人の方へ向けられた。



「ほらとおるんもこっち来て!」



「……分かったよ」



 渋々、三人の元へ行く。



 桜木さんの異能は……というより、桜木さんはこういう時頑ななので素直に従った方が良いのだ。



「それで、何の話を……」



 と言いかけたところで、危機察知センサーに引っかかり身体が止まる。



 それは、視界に入った水着雑誌っぽいのが原因だ。



「うちら臨海学校に行くんだけど、水着選んでてさー。とおるんはどれ好き?」



 雑誌に載っている、水着モデルの写真を見せられる。



「……正直、良く分からん」



「いやいや、なんかあるっしょ? ほれほれ~」



「押し付けられても見えないだけなんだけど……」



 視界が塞がるだけなんだよなあ。



「佳苗、ちょっと落ち着いて」



「そうだよ佳苗ちゃん。鳴神君困っちゃうよ」



 二人が止めに入ってくれた。助かる。俺からは言い出しにくかったところだ。



「ありがとう二人とも。桜木さん。水着は自分が着たいのでいいんじゃないか? おしゃれって、そういうもんだと思うけど」



 うちの式神達(女性陣)見てて思うことです。



「だけどさあ、やっぱターゲットに合わせるって重要じゃん?」



「ターゲット?」



「そう。うちは絶対彼氏を作る!」



「すまない鳴神君。佳苗の勝手に巻き込んでしまって」



「いや良いよ? 何で俺……というより、男性の意見を聞きたかったかが分かったから」



 確かに、調査は大事だ。目的を果たすという点で、一番手を抜いてはいけない要素だし。



 見た目はふわふわ系ギャルだが、頭は回るのが桜木さんだ。



「でも、桜木さんなら何でも似合うと思うけど」



 見た目もさることながら、性格も良いのでモテるとは思う。俺も成人してなかったら好きになってたかもしれん。



「!?」



「とおるんサンキュー。でもそのセリフはちーちゃんに言って欲しかったなー?」



 そう言われて梅森さんを見ると、何やらショックを受けているような表情だった。



「えっと、梅森さん、大丈夫?」



「あっ、うん……」



 見るからに大丈夫ではない。しかし、その原因が分からない。



 俺の発言で梅森さんがショックを受けたのは確かなのだが、何で今のでショックを受けたんだ?



「……佳苗」



「……オッケー、あれやっちゃいますか。──ねえとおるん」



「何?」



「明日暇?」



「予定はないけど」



「じゃあ買い物付き合ってよ。こうして雑誌見てたって、着ないとやっぱ具体的にならないしさー」



「無論、荷物持ちにはさせないし、昼ご飯も奢ろう。どうだ?」



「それは構わないけど」



 それよりも、梅森さんをどう立ち直らせるかってことを優先したい。



「じゃあ決まり! 場所はショッピングモールで十時待ち合わせでヨロ!」



「ああ、うん」



 やはり、桜木さんに何でも似合うと言ったところだろうか。でも、それでショックを受けるのは違くないか? 事実だし、多分梅森さんもそう思ってるだろうし……。



「こんにちは。鳴神くんいるかしら?」



 理事長が来た。ってことは、何とかなったか。



「貴方に電話が来たから返すわね」



「ありがとうございます」



 スマホを受け取り図書館を出る。



(綾乃、適当に流してくれ。本当の事は言うなよ?)



(生徒の前で言う訳ないでしょう)



 三人に事情を訊かれることは、綾乃も勘付いていたようだ。念話をする必要なかったかな。



 とにかく、仕事の事を知られることは防げたので良しとしよう。



 ってか、誰からの着し──



「もしもし」



 画面を見て即座に出た。



『神林です』



 俺達現人神の補佐官、神林さん。



 皇宮庁特務課に在籍する、ただ一人のまともな人間だ。



「珍しいですね。神林さんの方からなんて」



 普段神林さんはこちらに干渉することはない。



 逆を言えば、神林さんがこうして直接連絡を寄こすのは、厄ネタ案件ということだ。



 神林さんには法律関連でお世話になっている人なので、あんまり態度に出さないようにしている。



『勅命が下りました』



 抑揚無く告げられた。



 ほらやっぱり。現人神としての仕事だ。



『明後日、第三修練場に集合してください』



「何するかは……教えてくれませんよね」



『はい』



 通信傍受の恐れがあるので、明確なことは言えない。



 こっちとしては準備も何もできないので非常に困るのだけど……まあ、仕方ない。先ほど言った第三訓練場なんて俺にもどこか分からないし。こういう時は大抵迎えが来るんだけどね。そこで内容が分かる。



「了解です」



『では』



 と言って電話が切れた。



「……やりたくねえなあ」



 とは言え、現人神として勅命には逆らえないし、神林さんには俺が目立ちたくないという意思は伝えてある。



 だからそういう事態にはならないと思うんだけど……。



「……やりたくねえなあ」



 スマホの画面を見ながら再度呟く。



いつもの資材卸じゃないことは確か。そんなものに勅命は出ないし。



「……やりたくねえなあ」



 スマホをポケットに入れ再度呟く。



 スケジュール被りがないから現実的に可能なのが、本当に嫌。多分こっちのスケジュール把握してるよね?



「戻りました」



 何食わぬ顔で図書館に戻る。



「お帰りとおるん。……何か嫌なことあった?」



 やっべ、顔に出てたか? 桜木さん、良く見抜いたなあ。



「ちょっとね。あ、明日の事じゃないから気にしないで」



 だからと言って本当のことは話せんけど。



「そうなん? なら良し!」



 グッ! と親指を向ける桜木さん。



 ……気遣い上手いのに、何でこの人モテないんだ?


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