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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第四章 教えるのも試すのも楽じゃない
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暗闇にて……──

「ただいまー……って、誰もいないようだね」



「儂は戻る」



 老人は消えた。



「──まあいいか。私は私のやることをするだけだし」



 女がポケットから取り出したのは、一般的に売られているUSB。



 しかし、その中身は一般的とは程遠い。



「由妃のやり残しは、清算したいしね」



 パソコンにUSBを差し込み、データを見る。



「うんうん。ちゃんとコピーできたみたいだね」



 そのデータは、神遊祭の被害者ファイル。女が注目しているのは、その中でも法で裁かれなかった者達の個人情報だ。



 彼らは《人を呪わば穴二つ(リィンチング)》で悪事を裁かれたものの、死亡せず、なおかつ法で断裁できなかった……彼女が裁きたかった生き残り(悪人)ある



 彼らが法にて裁かれなかった理由は多岐に渡る。



 証拠不十分、時効、揉み消しなど……。



 推定無罪の原則によって、罪と見なされなかった悪人。



「さてと、どう使おうかな……」



 女に彼らを裁く力はない。だが……彼らを裁きたいと思う人たちはいる。



「ま、今は様子見かな。やるとしても小出しにしてかないと」



 どうせ異能庁には情報を抜かれたことが露呈している。あの馬鹿みたいに高性能なロボット? サイボーグ……いや、もっと変な人に掛かれば、すぐバレる。



 それを前提に、あの人はネットを監視しているのだろう。情報を出せば、簡単に見つかってしまう。

 悔しくはないが、そっちの技術では完敗するほどの差がある。



 だが、異能なら勝てる。だから手に入れられたのだ。



「気長にやっていきましょー」











「はー……やってらんねーよホント」



 男が暗い廊下を歩きながらぼやく。



「仕事なんだから仕方ないじゃないですか」



その隣に歩く女が窘める。



「でもよー。本当は情報吐かせるために生け捕りする手筈なのに、精神ぶっ壊れてて情報抜けないから殺せってとんでもなくね?」



「戦力を削ぐのは大事ですよ?」



「でも俺殺すために仕事してねーのよ」



「《特務公務員》ですから」



「そりゃそうだけどよ……俺は程々に、気分良く働きたいね」



「じゃあなんでなったんですか?」



「そりゃ師匠に推薦されてあっという間にこの位置よ。……まあ、今回メリットが無かったわけじゃねーけどな」



「あったんですか。こんなに不満垂れ流してるのに」



「師匠の師匠に会えたのは良かったと思ってるぜ」



「あの人ですか。弱そうでしたが?」



「いやいや、あの人確かに呪力は一般量だと思うが……まだ何かとんでもないもの隠してるぜ。何してくるかさっぱり分からん。いつの間にか死んでてもおかしくねーなあれ」



「へーそうなんですか」



「ちょっとは興味持てや」



「気が向いたらそうします。それよりも今回の仕事を報告しますよ」



「へいへい。……お前ひとりで良くない?」



「二人で仕事したんですから二人で報告しないとダメでしょう。私の視点だけでは全体は見えないですし」



「久世部長なら全体像ぐらい分かってるだろーに……はあ、ホント無駄な時間だよ」




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