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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第四章 教えるのも試すのも楽じゃない
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透と初音の甘々デート②

キーンコーンカーンコーン……──



 ……ようやく終わったな。



 今なったのはテスト終了のチャイム。



 そして今日はテスト最終日であり、さっき終わったのが本日最後のテスト。



 つまり期末テスト、完全終了のお知らせだ。



「それでは後ろの人から答案を前に渡してください」



 担任の巽先生の指示通りに答案を前の人に渡す。



 そして全員の答案が戻って来たのを確認した巽先生は、



「皆さん、お疲れ様でした」



「「「「わああああああああ!!」」」」



 今まで溜め込んできた何かが、クラスメイトから噴出した。



 無理もない。膨大な試験範囲を勉強し、夏休みを賭けた大一番。色々と我慢してきたのだろう。



「それでは、今日はこれで帰宅していいですよ。月曜日にお会いしましょう」



 今日は金曜日で、テストの結果が発表されるのは来週の金曜日。それまで結果がどうであれ、今は溜め込んだものを吐き出す時期だ。



 ──帰るか。



 パパっと荷物をまとめてひっそりと、そして素早く教室を出る。



 誰にも気づかれずに校舎を出て、敷地内からも出る。



 なんてことのない、いつも通りの帰路。



 やっぱりいつも通りが最高だ。何にも起きない、何も変わらない日々が俺にとっての癒し。何が起きてもおかしくない立場なので、こういった平和はとても貴重だ。



「なんだ透、今日はやけに早いな」



 と、思っていたのだが。



「そっちこそ早いじゃないか」



 背後からの声に応えるため、振り向き返事をする。



 視界に映った声の主は、俺の友達正彦だった。



「まあな。これからバイトなんだ」



 こういう時でもバイトはする。それが正彦だ。正彦の日常は学校とバイト先なんだろう。



 高校生という短い期間で、その二つしかやっていないのは人生の先輩として思うところがある。



「他にやることないのか?」



 せっかくなんだから、色んなことに挑戦して欲しい。働くようになってみろ、挑戦する時間も気力もなくなるぞ?



「バイトっつっても短期バイトだからな。結構色々やってるぜ」



 そういうことじゃないんだけど。もっと遊べって言ってんの。



「今日のバイトは警備員のバイトでさ。人手が足りないって言われて」



「誰に?」



「前バイトしてた店長の友達。紹介して貰った」



「そうやって人脈増やしてんのか……」



「結構いいバイト教えてもらえるぜ?」



 秘蔵の求人ってことか。よく見つけたなそんなルート。



「透もどうだ?」



「俺はいいや」



 バイトする時間無いしな。これ以上のプライベート時間の削減は嫌だ。



「そうか? まあやる気になったら言ってくれよ」



「そうさせてもらう。……てかこんなことで時間使っていいのか? バイトあるんだろ?」



「大丈夫、まだ時間あるから。……そうだ、これから昼飯行かないか?」



「悪いがパス。先約がいるんだ」



「先約? もしかして彼女か!?」



「違う。家族とだ」



「あっ、それならしょうがないな」



「これに懲りずに誘ってくれ」



「そうさせてもらうわ。じゃあな!」



「ああ、またな」



 走ってバイト先に向かう正彦。



 さて、俺も帰るか……と思った矢先、電話の着信音が鳴る。



 液晶に映る表示。掛けてきたのは山岸だ。



「もしもし」



 一体何の用だ。面倒事じゃないだろうな……と思いながら電話に出る。



『あ、先輩。今時間大丈夫ですか?』



「問題ないぞ」



 時間を聞いたってことは、長くなる話なのか? それとも気遣いなのか?



『あのですね、この前ケーキバイキング行く約束したじゃないですか』



「あー、そうだな」



 神遊祭の時の約束か。



『その約束を果たしてもらいたいんですよ』



「急にどうした。いやこっちは構わないけどさ」



 元よりこちらが言い出したことだ。約束を果たすのに異存はない。



『それがですね! 今世界のケーキフェアやってるんですけど中々仕事で行ける機会がなくて、ようやく明日休みが取れた上その日しかフェア期間内で行けないんですよ!』



「お、おう」



 余りの気迫に気圧(けお)される。



「意気込みとか必要性は分かった。待ち合わせはどこにする?」



『そうですねぇ……先輩の家はどうです?』



「却下」



『即答ですか』



 当たり前だ。夜鶴に見られたらどうする。



 いや、夜鶴だけではない。山岸は雷夢以外の式神とは無縁。もし式神達、特に女性陣に二人でいることろを見られたら、根掘り葉掘りと関係を問い詰められかねない。それは非常に面倒だ。



「会場の最寄り駅でいいんじゃないか?」



 これが妥当だと思う。



『そうですね、そうしましょうか。じゃあ会場の場所送りますね』



「頼む」



『はーい。それじゃ、明日十時に東口でお願いします。──楽しみにしてますね。先輩?』



 通話が切れた。



 突然のことだったが、明日の予定は決まったな。





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