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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第四章 教えるのも試すのも楽じゃない
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勉強会と言ったらお泊り会だよなあ!③

「何か賑やかだな」



 自室で本を読んでいたら、楽し気な声が聞こえてきた。下で音がしたから風呂に上がったんだろうけど。



 そしてその声は恐らく客間から発せられたものだ。あれか、女子会でも開いたのか?



 コンコン。



「はーい」



「透さん、私先にお風呂頂いてもいいかしら?」



 来客は翡翠だった。



「良いよ」



「ありがとう。疲れてるのにごめんなさいね」



「いやいや、翡翠の方が疲れてるだろ。ゆっくりしてくれ」



「うふふ、そうさせてもらうわね」



 と、翡翠は風呂に入るわけで……最後は俺か。



 指で挟んで栞代わりにしていた本を開けて、再び目を落とす。



「おーい。透」



「……どうした銀華」



 いつの間にか、銀髪狐耳の美少女銀華さんが俺の部屋に入っていた。しかも俺のベッドでゴロゴロしている。



「銀華、あんまりゴロゴロするなよ。毛がすごいから」



 この前、銀華の狐尻尾がベッドに滅茶苦茶ついていた。粘着テープでどうにかして取ったが、凄い大変だったんだぞ。



「大丈夫。呪力でコーティングしてるから」



「そんなことできるなら早くやってくれよ」



 呪力によるコーティングは結界の一種だ。まあこの場合は単純に呪力で膜を張る程度で、何らかの追加効果が付随されている術式のものではなく、一般的な内と外を分けるものと考えていい。



「で、何しに来たんだ。秋奈の護衛は?」



 銀華は普段、《潜影》で秋奈の影に入って護衛兼異能の暴走対策の仕事を任せている。有事の際には出てくるように言ってあるが、今は有事ではない。



「たまにはいいじゃん。秋奈も今はみんなと一緒だし、あの面子なら暴走することもないし」



「そりゃそうか」



 俺自身分かっていたことではあるが、こういった確認は大事だ。常に俺の予想通りのことが起きる訳でもないし。認識のズレから問題発生、なんてことはあり得る。



 そうなると、俺の部屋に来た事も納得できる。



「みんなには内緒だからな」



 銀華の仕事は式神達と秋奈には秘密にしてある。秋奈には余計な心配をかけたくないし、式神達から露見するのを危惧した当時の俺の判断だ。



 ……正直、秋奈に心配かけたくないなら銀華の事は言うべきだと後になってから思うようになった。



 しかし、今更それを言うのも怖くなって、そのままズルズルと先延ばしにしているのが現状だ。



 銀華にも負担をかけているし、打ち明けたい気持ちがあるのだが、どうにも言い出せない。



「そういうこと、じゃ遠慮なく」



 俺の掛け布団に包まりゴロゴロする銀華。



 それでリフレッシュ出来てるなら良いんだけどさ。



「銀華、それ楽しい?」



「めっちゃ楽しい」



 ポンッ、と布団から顔を出した銀華の狐耳はピコピコと動いていた。その耳動かせるのか。



 それにしても可愛いな、布団から頭だけ出してるの。



 何となく俺は机から立ち上がり、丁度銀華の頭の隣に腰掛ける。



「ん、どうしたの」



「ちょっとごめん」



「え……わっ」



 俺は簀巻き銀華を抱えて、その頭を膝の上に乗せた。これもアニマルセラピーに入るのだろうか。



 つまり、膝枕である。



「何するの」



 ジト目でこちらを見つめてくる。



「こうする」



 俺はそっと銀華の頭を撫でた。



「うにゅ」



 可愛らしい声と、目を細めて気持ちよさそうな銀華の様子に手が動きまわる。



「みゅ~」



 もう止め時が分からない。堪能したい。



 IQが下がるのを自覚しつつも、手は止まらない。



 もうこれは麻薬ではないだろうか。



「ひゃうっ」



 手は止まらず、頭から耳へと移動。



「そこは……ひゃ、だめぇ……」



 銀華の紅潮した頬。そして妖艶な声が脳に響き渡る。



 ──っ!



 手は布団の中へと差し込まれる。



「ん……っ!」



 首元に手が触れると、銀華はビクッと身体を震わせる。



 さらに奥へ手を差し込んで……。



「とお、るぅ……」



 銀華が何か言ったようだが、よく分からない。そのまま奥へ、丁度胸元辺りに──



「ちょっと待ったーっ!」



 ドガッ! とドアが蹴破られ、俺は正気に戻った。



 え、あれ、今何を?



「透様、それは駄目です! やるなら私にしてください!」



 来訪者が夜鶴であることを確認すると、一気に冷静になり状況を理解する。



「す、すまん銀華!」



 布団から手を勢いよく引っこ抜き、銀華の無事を確認する。



「んっ、だ、大丈夫……」



 火照った銀華を見るに、とても大丈夫とは思えないのだが。何かモジモジしてるし。



「とりあえず、銀華さんは布団から出てください!」



「そ、そうだな。銀華、今出すからな」



 とても自力で脱出できそうな状態じゃないので、簀巻きになった銀華を立たせ、くるくると回転させ

布団から出させる。



「銀華さんはこちらで預かります。良いですね?」



「あ、うん」



 やたら凄む夜鶴に押し負け、銀華は何処かへ連れていかれた。多分客間だと思うけど。



 ──やっちまった……っ!



 あんなのセクハラ案件だろう!? ちくしょう、どうしてあんなことした俺!?



 死ね! 俺死ね! 地獄に堕ちろよこのクズ野郎! 



 ……これからどう銀華と関わればいいんだ。



 あんなことをしたんだ。嫌われて当然だ。……どうすればいいんだ。



……ダメだ。思考を切り替えろ。今は後悔に浸っている場合ではない。



 まず大前提として、銀華に謝らねばならない。あんな軽い謝罪ではなく、誠心誠意に。



銀華の言う事は何でも聞くのは当然の報いとして、土下座をして、何なら首でも撥ねようか。



いや、そんなことをしても無意味か。俺そんなんじゃ死なないし、掃除が大変だ。逆に銀華を不快にさ


せてしまう。勿論銀華がしろと言うならするが。



あ、そもそも銀華が俺と会いたくないという可能性は……?



あるな。こちらは加害者、向こうは被害者だ。



なら夜鶴に仲介役を頼むか? 巻き込むのは可哀そうだとは思うが、事情を知っているであろう夜鶴な



らスムーズに事が運びそうだし……何より他の人に知られたくないし。いや、銀華が客間に連れていかれたなら皆もう知っているか。



……社会的に死んだな。俺。



 いや、そんなことはどうでもいい。銀華の方が俺より大事だ。



……考えが纏まらない。



仕方ない、今は落ち着こう。



ということで、一旦寝るのであった。





次の日、勉強会はその後何事もなく終わった。 それが不思議でならない気もするが……。



本人達も満足げで、これなら大丈夫と自信がついたようだ。今から結果が楽しみだ。



そして後日、夜鶴に仲介役をしてもらい、銀華に土下座で謝ったら、『怒ってないからいつも通りに……って言っても納得してくれないのは知ってる。……だから、また今度撫でて欲しい。気持ち良かったから』と言われた。



 良いのかとも思ったのだが、他でもない銀華が言うのだ。素直に受け止めよう。



 とまあ、許してもらった訳だ。……その様子を見ていた夜鶴がうすげー羨ましそうだったけど。

 


でも、銀華から「惜しかったなー」と聞こえたのは気のせいだろうか……? 何で俺を社会的に抹殺しようとしたんですか……?

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