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雨の日の新商品

雨の続く週の半ばは暇を弄ぶことが多い。

混み合いまではしないけれど、人手が多く必要なわけではない。

寿々ちゃんはそんな時は柏原さんのところへ行ってるし

九十九神も濡れるのはお好みではないようで火室さんも珍しく店にいる。


カランコロンと鳴るドアベルに顔を上げて

「いらっしゃいませ」

と声をかけるとお向かいの向かいの豆屋の健太兄さんだった。

豆は昨日補充したし…と考えあぐねてると健太兄さんから

「実は新商品なんだけどさ」

と声をかけられる。

先日、お客様に出すボリュームではない試食用にもらったジャムをよかったら扱って欲しいらしいのだ。

確かに、ジャムが美味しければウチのワッフルもさらに売れ行きは良くなるだろう。

実際、果肉がゴロリと入ってて美味しかったのだけど

業務用、として扱うには少々採算に不安がある値段なのだ。

そこをお勉強してもらえるか、がネックであることを素直に告げると

健太兄さんの店を経由せず直に農場とやり取りしてもいいとのこと。

それじゃあ健太兄さんが儲からない、と詰め寄ると紹介の理由を告げられた。

従姉妹の農場がはじめた新規の商品らしいのだけれども豆屋にジャムがあっても売れないのが正直なところらしい。

別のなにかわかりやすくジャムを食べることができて気に入ったら買ってもらえるところに鞍替えをしたいらしい。


確かにうちで使用してるジャムは量産品の中では高級ラインにあたる価格にはなる。

大手ホテルでも扱ってる安心の品質で量産品のお値段のものだ。

その値段まで仕入値を落とせるのかがうちの店舗でジャムを使う条件で

仕入値が安い代わりに委託販売という形で置くけれど委託料をうちではもらわないで置くようにするのはどうかを提案しておく。

値段を変えず美味しいジャムが手に入ればうちは重畳。

向こうは卸値は安くても場所代をかけず小売の商品代金は全額回収できるようになる

あまり悪い話ではないと思うのだ。

健太兄さんは従姉妹の農場に提案をしてくると店を出て行った。


さて、ジャムがよくなるなら新商品でも出しますかと私は小麦粉を用意する。

生地にバターとミルクをあくまでさっくりと練り込む。

混ぜすぎ禁止、混ぜすぎ禁止

子供の頃におばあちゃんに教わったコツを唱えながら生地を作り軽く伸ばして暑さを均一にしたら

丸型で適宜抜いてからオーブンで焼いてできあがり。

この前のジャムの残りに流石にクロテッドクリームは今日はないのでホイップバターで我慢だ。

焼き上がりと同じくしてから柏原さんと一緒に寿々ちゃんが帰ってきた。

丁度いい、柏原さんにも食べて行ってもらおうと柏原さんのお皿も用意する。

「丁度よかったです!焼きたてですしみんなで食べましょう!」


さあ、みんなでおやつの時間だ。

焼き立てで湯気の上がるスコーンに果肉の残ったジャムをのせてかぶりつく。

寿々ちゃんの耳がピクリと動き火室さんは成る程なと頷く。

柏原さんもアールグレイを飲みながら食べるスコーンに大変ご満悦の様子だ。


この調子でお値段の折り合いさえつけば

ひふみには新商品がお目見えとなりそうだ。


〜本日のひふみのお供え〜

焼き立てスコーン

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