ワッフルと新たな同居人
先日の珍客は比較的?高位の人外、らしい。
と、いうのも低位の人外はヒトの目には見えないのだ。
私はおばあちゃんからの「血筋」と火室さんの「加護」にあるから低位の人外でも見えるのだけれども
普通のヒトには彼ら彼女らは「意図しない」状態ではヒトに見えないようになっている。
猫娘…寿々ちゃんというらしい、は高位の人外なので本人が意図した姿で意図した様に「普通のヒトには」見えるようになる。
本人が「無銭飲食は罷り成らぬ」としつこい為、久々にアルバイト向けのお仕着せを引っ張り出し手伝いをしてもらうことになった。
ランチタイムはソコソコの忙しさ、ではあるがひふみの掻き入れ時は実はティータイムだ。
パンを焼いた後の高すぎない温度で焼いた手作りクッキーと珈琲、紅茶のセット
焼き立てワッフルと珈琲、紅茶のセット
この2種が日によって驚くほど売れる。
今日は偶々、そんな日に当たりそうな日だったので手伝いは猫娘でも大歓迎だった。
もちろん、火室さんも「好青年接客モード」でこういう日はお手伝い頂いている。
曰く、「皐月の供物に対してオーブンの加護だけでは与え無さすぎなのだが毎日手伝うと此方が与え過ぎになる」らしいので
繁忙が予想される日だけ、手伝ってもらうということで折り合いがついている。
珈琲もブレンドの淹れ置きが間に合わないほどの忙しさがすぎて日も暮れる頃
忙しさにくたびれている二体の人外さんにおやつでも、と作り始める。
ワッフル生地を型に流し入れ焼き始めると反応が俄然良くなる。
「片付けまで頑張ってくださったらオヤツにしましょうね?」
と声を掛けると火室さんが張り切って寿々ちゃんに指示を出す。
さてさて、トッピングは…と悩むとお向かいの豆屋さんから「今後扱おうかと思って」と試供品で渡された農家さん特製のジャムを思い出す。
それと、クリームチーズを皿の隅に盛り付けたところで香ばしい香りが立ち上がる。
端がカリッとでも中はふんわり焼きあがったら完成だ。
完成したと同時に清掃は終わったようで今か今かと待ち構えてる二人に皿を渡す。
子供のように火室さんの指定席へ二人で座り「いただきます」と仲良く食べ始める。
さくり、とナイフを落としたワッフルにジャムをつけて頬張る。
んーっと喜びの声を上げながら頰が染まる寿々ちゃんを見てると作ってよかったなぁと思う。
火室さんには珈琲を、寿々ちゃんにはアイスミルクを供するとおもむろに火室さんからお願い、をされる。
寿々ちゃんの住まいが無くなってしまったらしい。
人の世にはよくあること、で幽霊屋敷と近所で呼ばれてた古い旧家が売りに出され取り壊しになったようだ。
寿々ちゃんはそこの「飼い猫」だったもの、らしい。
当時の飼い主が娘のように可愛がるあまりに人に化けられるようになってしまった。
その飼い主も世を去り化ける術を得てしまった猫は人外、という存在になり永遠ではないけれど人よりは長い生を生きることになってしまった。
家の中でひっそり生きてきたが取り壊しになってしまっては致し方がない。
住まいがないところを火室さんが見かねたらしい。
「うちにはタダ飯喰らいは置きませんよ?今日のような手伝いを毎日していただけるのであれば寝食くらいならお世話します」
呆れたように言い放つ私に火室さんは安堵し寿々ちゃんは喜びながら頭を下げるのであった。
〜 今日のひふみのお供え〜
ワッフル(ジャム、クリームチーズ添え)