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日替わりスープと迷子の猫

ひふみはモーニング営業を行わない代わりにランチサービスを行う。

そして閉店は少し遅め、夕飯時まで賄える時間帯で設定している。

これは先代の「あ、アタシ朝弱いのよ」の一言で決まった時間だ。


と、いってもランチはサンドウィッチ各種と日替わりスープのセット

これに日替わりのサラダに食後のドリンクがついて1000円はお得感があると思う。

頂きすぎず、安すぎず、は先代からもキッチリ仕込まれてる。


ランチ用のイギリスパンも焼き上がり火室さんの今日の出番は落ち着いたのでお出かけになられたようだ。

オーブンからは人の気配というか「何か居る」感は感じられない。

中には鋭いお客様が居て騒ぎになると面倒なのでお仕事が終わると火室さんは自主的にお散歩やら九十九神仲間との会合やらに出かけられる。

どうやら私の記憶にないくらいの頃に何かあったらしい。


カランコロン、とドアベルが鳴る。

今日のランチのお客様かしらん?と頭をあげると珍しく火室さんが表玄関から帰ってきた。

何か、こりゃ「訳あり」をお連れになったようだ。


「皐月よ、すまぬ。この子供に何ぞ見繕って食べさせてやってくれぬかの。」


よくよく見るとカウンターより低い高さにおかっぱ頭がある。

そしてそこにはぴょこりと「人間の」頭にはあるはずのない「動く猫耳」

どうやら迷子の猫娘を拾ってらっしゃったのだ。


猫、ネコ…

とりあえずネギ系は禁止のはず…って人外には関係あるのかしら

と頭を働かせると今日の日替わりスープならと思い当たる。

それに火室さんオーブンで美味しく焼けてるパンを添えて

「お連れになったのは火室さんですから火室さんがお持ちしてくださいまし」

と運ばせる。


「人の世の食べ物は口に合わぬものが多いが皐月が拵えたものは比較的マシじゃ。ささ、試してみるが良い。」

そう、猫娘に進めると恐る恐るとパンから口に運ぶ。

ぱくり、と口に運ぶと耳がピクリ、と動きその後に俯きがちだった顔があげられる。

キラリ、と光る猫目に篭るのは歓喜。

九十九神加護付きのオーブン製のパンだ。

魔のものならまだしも人に害をなさない人外には美味しいはず。

湯気を立てる今日の日替わりスープは早なりのそら豆のポタージュ。

今日は幸いにも玉ねぎを使わずミルクとそら豆だけで作っているので猫でも大丈夫なものだ。

ふう、ふう、とやはり猫舌なのかきちんと冷ましてから口に運ぶと頬が桜色に染まる。

猫耳と尻尾さえ無ければ単なる愛らしい童女に見える彼女は

火室さんに世話を焼かれながらきっちりと完食をしたのだった。



〜ひふみの本日のお供え〜

焼き立てイギリスパン

そら豆のポタージュ

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