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九十九神とフレンチトースト

「あーさーごーはーんー!我に朝餉を!皐月!早う!」


子供のような、というか見た目は好青年なのに中身は全くもって…な残念青年に

朝食を「お供え」するのがひふみの看板を出すのと同時にする仕事だ。

この、青年のご機嫌次第でうちのお手製食パンの味が変わってしまうのだからこっちも真剣だ。

「火室さん、ちょっとまっててね!」

と食料庫を漁る。


彼はうちの薪オーブンの「神様」だ。

99年、一つ物を大切に扱うと神様が宿る、とは言うけれど

本物の「神様憑きオーブン」なんて扱ってるのは八百万の神がいる日本の中でもうちくらいだろう。

内装やキッチンは少しづつリフォームしていたのに先代のおばあちゃんが

「使い勝手がいいしこの子はお気に入りなの」

と手入れをして使い続けたオーブン

私もこのオーブンでおばあちゃんが焼いてくれたパンやパイが楽しみだったので

文句はなかったけれど…神様憑きなんて継ぐまで知らなかったのが本音だ。


今使えるお客様に出せない食材は…と見ると昨日焼いた残りのイギリス風食パンが見当たった。

よし、と玉子と牛乳をまぜ始めると途端に目をキラキラと輝かせ必要な食器を揃え始める。

神様、としては若輩者らしい彼は見た目によらず精神年齢は小学生くらいに感じることが多々ある。

神様にお手伝いをさせるなんて大概不遜なのだろうけれど、本人?曰く

「おまえのおばあちゃんの頃からこれが当たり前」

と言うので手もない我が店では使われてもらっている。

と、いっても普通のお客様に火室さんは見えないのでこの光景はちょっとホラーかも?とは思う。


バターの香るフライパンに卵液に浸したイギリス風食パンを投入する。

ジュッ、という音に火室さんもニコニコと笑いながら

「ハチミツとメイプルシロップは何方が美味かのう」

とトッピングの検討に入っている。

仕込みの終わっている日替わりのポテトサラダとオニオンスープを皿に用意して

「火室さーん、そろそろ焼けるから運んでくださいな。因みにメイプルシロップはカナダ産でハチミツはミカンの花のハチミツですよ〜」

と声をかけるとメイプルシロップに決めたらしくボトルをテーブルに置いてからキッチンへやって来た。


キッチンから見えるけれど客席からはすこーし死角の席が火室さんの指定席。

そこに腰を掛けてワクワクという視線の中で皿を目の前に並べる。


「いただきます!」

と笑顔でナイフをフレンチトーストへ

フルフルとしたフレンチトーストにたっぷりのカナダ産メイプルシロップを掛けたものを

とろけそうな顔で食べているのを見ると

今日も美味しいパンを焼かせてくれそうだ、と安堵したのだった。


〜本日のひふみのお供え〜

イギリス風食パンのフレンチトースト

ツナ入りポテトサラダ

オニオンスープ



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