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某石焼き芋さん

作者: 国吉勇持


 久しぶりに平日の休みを貰えた俺は、

することもなくだらだらと最近ハマっている動画を見ている。

 一人パソコンとにらめっこしていると、トラックの走る音が聞こえる。

俺の住んでいるところはあまり自動車が通らず、

さらに騒音対策の新築物件なので通常なら、あまり大きな音は聞こえないが

今は騒音が聞こえる。


 理由は単純、スピーカー搭載宣伝カーだからだ。

それも、某石焼き芋さんやゴミ回収さんの類。

商売のためにやっているんだ、うるさくないわけはない。

 いつもの俺なら、うるさいなで済むのだが今回そうはいかなかった。

俺は、昔のことを思い出した。

あれは確かまだ俺が小学校中学年の時だった。






 いつものように学校を終えた俺は、毎日のように弟と一緒に下校をした。

二つ年上の兄は、委員会が有ったのでその日は二人で帰った。

学校から家まで、小学生の足で確か二十数分かかる距離だった。

 がしかし、やはりまだ小学生だった俺と弟は寄り道や道草食って帰っていた。

親は両方とも働きで、家にはいつもだれもいない。

 時刻は14:30。真面目ではなかった俺と弟は、宿題をすることなく家の庭だ遊んでいた。


 少々田舎だった為、庭でかるくサッカーをする程度の広さはあったため、

兄が帰ってくるまでサッカーをしていた。

 庭には倉庫や塀があり、塀をゴールがわりにして遊んでいたため、

近所迷惑だったなと、今は思う。

 10分程遊んでいたら、兄が兄の友達と一緒に帰っていた。

兄の友達とは自分も弟の仲が良く、

家が近いのでよく近くの公園で遊んだ。



 友達がいったん帰宅し、すぐに家にきて一緒に遊んだ。

秋だったので、17時ぐらいに空が赤くなる。

夕暮れの時間になると、小学生の多くは夕食の時間でしかも暗くなるという理由で、

家に帰るらしいが、まだ親は帰ってこないし、家も近いという理由で、

俺たちはまだ遊び続けた。

空がうす暗くなると、いつもこれで遊びは終わり、また明日となるが、

その時は違った。

 

 その時、丁度小腹が空いていた弟は、たまたま通りかかった

『某石焼き芋』さんトラックに向かって、「芋くれえぇぇぇ!」と、

大きな声で叫んだ。

突然の叫びに驚いた俺と兄と友達は、一瞬なにがあったのかわからなかったが、

数秒後、俺たちは爆笑した。

小学生だったから、些細なことで大笑いするからしょうがない。

けど、ただ単に弟が叫んだのも面白かったが、なんと『某石焼き芋さん』は、

停車をした。本当に止まるとは思っていなかった俺たちは、困惑したが俺達は運転手のところに行った。

 

 運転手は荷台の焼き芋のところに立ち商売を始めた。

兄が、家から自分の財布を持ってきて、一ついくらと聞くと、運転手はグラムによって値段は違うと返した。

兄が、一番小さいものを頼むと運転手は芋の重さを測った。

芋の大きさは小さく、小学生でも何口かで食べ終わる程度のものだったが、

想像を超える値段だった。

聞かされた値段は200円。小学生の買い物にしてはやや高い。


 とりあえずそれを買い、商売を終えた『某石焼き芋さん』はどこかに行った。

兄は、「あとで俺の金返せよ」と言い、弟は焼き芋を食べた。

二口ぐらい食べた時、弟は不愉快そうに焼き芋を口から吐き捨てる。

どうやら、焦げの部分を食べたらしい。

少しの焦げくらい我慢しろと思ったが、どうやら残りは殆ど焦げていてとても食えたものではなかった。

 焦げががあり、小さくて高いのなら、さぞ上手いのだろうと思ったが、

どうやら、全く上手くないそうだ。半分以上残ったが食えないと知り、弟はゴミ箱に捨てた。

後日、弟は衝動買いをするのをやめようと決めた。






 今思い返すと、あの運転手はあくどい商売をしていたなと、自分にとっては

人ごとなので、鼻で笑う。

久しぶりに兄弟に会ってみようかなと思った俺は、実家にを訪れ家族と談笑しながら酒を飲んだ。

この話しのことを言うと、弟は思い出し笑いをし、とても懐かしんだ。

 とても有意義に過ごした一日を、今日はした。

明日はまた仕事があるので奥さんに迎えに来てもらい、子供とじゃれてから俺は眠りについた、



 朝、目が覚める。

今の季節は丁度あの時と同じ秋。妻作ったみそ汁の匂いに目を覚ます。

カーテンを開き、外を見る。

子供のために買ったコスモスが、著しく植えている。

 水やり担当は俺なので日課の朝一での水やりを行う。子供のためにと買ったが、

世話をしているうちに花が好きになり、最近新しい花を植えようと考えている。

 そんなことを考えている間に水やりを終えた俺は、リビングへと向かう。

朝のあいさつを交わし、朝食をとる。

テレビのニュースを見ながら、仕上げのコーヒーを飲み干し、仕事の準備をする。


 準備を終え、玄関まで送りにきた妻の唇にキスをし、ドアを開ける。

今日もいつもと同じように、家族を養い、そして子供の未来のために、俺は働く。


あれ?ハッピーエンドじゃないよね?

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