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栄倉亜美のジャムらない話  作者: 明良 啓介
第五章 私情最大の作戦
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騙し撃ち

 ガジェットはサブマシンガンを拾って、ジャバードを小脇の陰まで引きずった。


『大丈夫か?』

『ええ、体は動かせませんが……致命傷は避けられたみたいです』


 ガジェットの問いにジャバードが苦悶の表情を浮かべながら答える。ガジェットがしゃがみ込んで、


『ふむ、どうやら弾丸は体を貫通して抜けていったようだな。運がいいな』


 ジャバードに簡単な手当てを施して、口の端を上げて言った。

 ガジェットは立ち上がるとサブマシンガンのコッキングレバーを引いて薬室に一発目の弾丸を送り込んだ。



 亜美はナーデルと銃撃戦を繰り広げていた。

 亜美が隠れている大木は無数にできた弾痕で無残な形になっている。亜美が大木から体を出し拳銃を発砲する。しかし、数発撃ったところですぐに弾切れになった。そこを見計らってナーデルが撃ち返してきた。亜美がすぐさま身を隠すが、右肩を弾丸がかすめた。肩口の布が裂け、その奥の皮膚が切れて血が滲む。


「くっ……どうする」


 呼吸を荒くしながら亜美が呟く。肩の傷の痛みはそれほどないが、このままだとジリ貧だ。なぜなら亜美の弾薬は残り僅かになっていたからだ。亜美は拳銃から弾倉を外し、最後の弾倉を入れた。亜実が覗き込むように少しだけ顔を出して見ると、


「あれは……」


 地面の一部に違和感があることに気付いた。よく見ると、亜実とナーデルの位置との中間に落ち葉の多い場所がある。一見するとわからないが、亜美にはそれが何なのかピンときた。

 亜美がおもむろに拳銃をナーデルから見える位置に放り投げた。

 ナーデルが反応して拳銃を構えるが、亜美は大木に隠れたままだ。猜疑心に苛まれながらもナーデルは拳銃を構えたまま前進した。亜美の方に気を配りながらも、ナーデルは拳銃を一瞥する。

 そして、ナーデルが落ち葉の多い場所に足を踏み入れた瞬間、亜美は拳銃の方へと飛び出した。ズボッとナーデルの足が地面深くに沈んで、バランスを崩した。


「ふっ!」


 亜美は前に飛んで、拳銃を拾うと同時に前転して、太腿まで窪みに片足を突っ込んだナーデルに向かって構えた。ナーデルがそのままの状態で拳銃を亜美の方へ向けようと手を動かすが、亜美は素早くその手を撃ち抜いた。弾丸はナーデルの手の甲を貫き、さらにその手に持った拳銃のグリップを破壊した。


「ぐあぁぁぁぁぁっ!」


 亜美は力強く地面を蹴って、悲鳴を上げながら土に手をついたナーデルに走りより、低い位置に下がった顔面をサッカーボールのように蹴り上げた。ナーデルの顔が反り返り、血液で流線型の軌道を描きながら体ごと後ろに倒れた。亜美が警戒するように拳銃を構えるが、ナーデルは白目を剥いて体を痙攣させていた。

 亜美が安堵のため息をついて、


「サバゲー部の人達のおかげで助かった」


 ナーデルが落ちた地面の窪みに目をやった。その窪みは細い枝を張って、その上に落ち葉を敷き詰めて巧妙に隠した天然の落とし穴だった。部員達が仕掛けた罠が役に立ったのだ。


 ――不意に亜美の背筋に悪寒が走った。


 危険を察知した亜美は脱兎の如く駆け出した。凄まじい銃撃音と共に亜美が横切った奥の木々の表面が弾け飛ぶ。亜美の目の端にサブマシンガンを乱射するガジェットの姿が見えた。亜美は全力で走り、付近の大木の陰に飛び込んだ。亜美を追うように撃ちながら銃口を動かしていたガジェットの手が止まる。足元には無数の薬莢が散乱し、ガジェットを包むように硝煙が立ち込める。

 亜美が肩で息をしながら大木にもたれかかる。亜美の顔には焦りの色が出ていた。あまり芳しくない状況だ。

 ガジェットがサブマシンガンの弾倉を入れ替えようとする。

 カサカサ。

 ガジェットの背後で草が動いていた。そしてガジェットがサブマシンガンの弾倉を抜いた瞬間――地面が盛り上がり唐草が飛び出した。唐草はギリースーツを着て、地面と同化してずっと息を潜めていたのだ。唐草の役目はガジェット達の位置を勇人や部員達にメールで報告する役目だった。しかしガジェット達を発見するも、逃げるはずだった亜美達が現れて銃撃戦が始まり、どうすることもできなかったのだ。

 だが、亜美の窮地に唐草は自分を奮い立たせ、隙を見せたガジェットに襲い掛かった。

 唐草はガジェットからサブマシンガンを奪い取り、


「そおいっ!」


 と遠くへ放り投げた。


「てめえっ!」


 ガジェットは思わぬ伏兵に油断したものの、すぐに反応して唐草の腹部に膝蹴りを入れた。そして、悶絶しながら腰をくの字に曲げる唐草の後頭部に肘鉄を叩き込んだ。うつ伏せに倒れる唐草の背中を踏んでガジェットは腰から拳銃を抜いた。


「ド素人がっ! 舐めたマネしやがって――」


 ガジェットが唐草の頭に銃口を向けた。

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