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栄倉亜美のジャムらない話  作者: 明良 啓介
第五章 私情最大の作戦
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奇襲

 ガジェットの予想は的中していた。自分達をおびき出し、足止めしている隙にミリーとニコールを助け出す。そこは合っていた。しかし、電話した時すでに勇人と亜美が小屋の近くにいたことまでは予想できていなかった。電話を切った後に勇人達は迂回して小屋の方へ向かったのだと思い込んでいた。もし直進してきたのなら、途中で鉢合わせしているはずだ、とガジェットは考えたからだ。急いで引き返せばモフセンという見張りも立てていることだし、時間的に間に合うと思っていた。


 ――それが誤算だった。


 ガジェット達は一斉に山中の木々をすり抜けるように駆けていた。急いでいるためか、注意も散漫になっていた。

 ガジェット達と二十メートルほど離れた大木に身を潜めていた亜美が口を開いた。


「まずはサブマシンガンを持った兵士を狙うぞ」


 二本の大木と、その間の地面の三点で同時に火花が散った。

 ――刹那。

 銃声と共に一番前を走っていたジャバードが肩と右足から鮮血をほとばしらせて倒れ込んだ。


「ぐあぁああああぁあああぁああぁ!」


 倒れた拍子にジャバードがサブマシンガンを落として悲鳴を上げた。


『敵襲ぅぅぅぅぅぅ――ッ!』


 ガジェットが叫び、ジャバード以外の兵士達は銃を乱射しながら散開した。

 亜美とニコールはすぐさま大木に身を隠し、地面にうつ伏せで拳銃を構えていたミリーも素早く右に横転してニコールの隠れる大木の後ろに移動した。一瞬にして大木の一部の木片が辺りを飛び散り、ミリーがいた地面が土煙を上げた。


『ジャバード!』


 ガジェットがジャバードに駆け寄ろうとするが、それを見た亜美が大木から半身を出し発砲した。足元で土煙が舞い上がり、ガジェットは下がるように付近の木に身を隠した。

 ジャバードは悲痛な声を上げながら地面に横たわり腕をダランとさせている。右足も思うように動かず遮蔽物のない地面に晒されていた。


『フラン! アクバル! 左側面から回り込め』


 ガジェットが振り返りフランとアクバルに指示を出す。フランとアクバルは亜美達の射線上を避けながら左斜め前に移動する。


『ナーデル! 私に続け』


 ガジェットは木から離れると同時に拳銃を亜美に向けて撃ちながら右に走った。出る瞬間を狙っていた亜美はたまらず身を隠して唇を噛んだ。


「敵が二手に分かれた。ミリーとニコールは右側面を頼む。私は左側面の敵を迎え撃つ」


 亜美が言うと、ミリーとニコールは大木から飛び出して、途中で二手に別れて木の後ろに隠れた。フランとアクバルも同じく二手に分かれた。

 相手が二手に分かれたところを目視したミリーが拳銃の弾倉を抜いた。


「狙い通り。あの小柄女は私がやるわ」


 ニコールに向かって言いながら、ミリーが弾倉を新しい物と入れ替えた。抜いた弾倉には弾丸が数発残っていたが、念のため撃てる弾数を増やすためだ。

 ニコールはミリーの発言にはあえて突っ込まずに苦笑を浮かべて頷いた。

 ミリーが素早く木から木へと移動する。フランも徐々にミリーとの距離をつめながら拳銃を連射する。アクバルが木の影からそれを援護しようとサブマシンガンを構えるが、ニコールがそれに気付いて拳銃で応戦した。アクバルはやむなく標的をニコールに移し変える。アクバルの持つサブマシンガンの銃口から凄まじい勢いで弾丸が発射され、ニコールの前の大木が木片を散らしながら、ドングリほどの大きさの穴が上書きされるように大木をえぐっていく。

 間隙を縫ってニコールが撃ち返そうとするが、引き鉄を引いても弾が出ない。


「くっ……ジャムったわ」


 ニコールが下唇を噛んで拳銃を捨てた。つまり拳銃が『ジャム=弾詰まり』を起こしたのだ。

 ニコールは大木を背にして目を閉じた。


「…………」


 耳を澄まして神経を研ぎ澄ませる。そして銃声が止んだ瞬間、大木から飛び出してアクバルの方へ一気に駆け出した。

 アクバルが弾切れになったサブマシンガンの弾倉を外す。ニコールが全力で走ってくる様を見て、アクバルは素早くポケットから新しい弾倉を取り出し、サブマシンガンに装填した。

 サブマシンガンを構えるアクバル――が、すでにニコールは十歩ほどの距離まで詰めて来ていた。アクバルが引き鉄を引いた瞬間、ニコールは左足を前に出してスライディングをした。サブマシンガンの銃口から火花が散り、弾丸がニコールの頭をかすめて地面の土を散らした。ニコールは土の表面を削って滑りながら右足のホルスターの拳銃に手を添え、そのままアクバルに向かって発砲した。

 ニコールが撃った弾丸はアクバルの右脚に二発命中し、アクバルの体勢が崩れる。ニコールは右足のホルスターから拳銃を抜きながら立ち上がり、悲痛な叫びを上げて膝をつくアクバルのサブマシンガンを勢いのままに蹴り飛ばした。アクバルが脚の痛みに顔を歪めながら後ろのナイフに手を伸ばそうとするが、ニコールが拳銃を頭に向けてそれを制した。

 まさに電光石火の攻防だった。

 アクバルが忌々しげに奥歯を噛んでニコールを見上げる。ニコールが拳銃を構えながら微笑んだ。


「ペナルティ」


 ニコールが拳銃の横腹で思いっきりアクバルの頭を殴って昏倒させた。

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