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栄倉亜美のジャムらない話  作者: 明良 啓介
第四章 エネミー・オブ・ライン
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唐草、ミリオタ感を出す

 勇人が唐草の視線を追うと、木々の奥に軍服姿の男が目に入った。軍人が着るという意味では系統は同じだが、部員達の着ている迷彩服とは明らかに違う、野戦用のジャケットを着ていた。男は拳銃を構えていた。勇人の脳裏に発砲された時の記憶が甦る。

 瞬間――唐草の左の大木に弾丸が当たり木片が弾け飛んだ。

 直後に銃声が鳴り響く。

 唐草が左の大木にできた穴を見て、驚いたように声を上げた。


「弾痕だ!」


 その場にいた全員が一斉に勇人の股間に注目した。


「そっちじゃねえよ!」


 唐草が叫ぶように突っ込んだ。

 部員たちは皆一様にキョトンとしていたが、ミリーとニコールの対応は素早かった。


「全員下がって。木の後ろに隠れて! 勇人君も早く!」


 言うや否やニコールはしゃがみ込んで、ズボンの裾を上げ足首に巻いたホルスターから拳銃を取り出した。それを見た唐草が歓喜の声を上げた。


「おおっ、ワルサーPPS!」


 ミリーもニコールと同じようにしゃがみ込んで小型の拳銃を取り出した。それを見て、またもや唐草が声を上げた。


「うおおおっ! べレッタM21ボブキャット!」


 部員達は状況が飲み込めず戸惑っていたが、


「アンタ達、死にたいの!」


 ミリーが叫ぶと、ただならぬ雰囲気を感じて、一人盛り上がる唐草を梶が抱え込んで部員達と共に後ろに下がった。勇人も同じく慌てて後ろに下がり木に隠れた。

 ミリーとニコールはお互いの位置が確認できるように横並びの少し離れた木に隠れた。

 ニコールが木の陰から顔を出すと、拳銃を持った男を先頭にフランを含めた四人が後方からこちらに向かって来ていた。ニコールがミリーに向かって片手を広げて、相手が『五人』だということを伝える。

 そんな二人の様子を感心して眺めていた勇人の横に梶がやって来た。


「勇人、これを使え」


 と小声で言いながら梶が二枚のタオルを勇人に手渡した。勇人が頷いてタオルで股間を隠そうとすると、


「馬鹿、そうじゃねえ。足に巻くんだよ」


 指を回しながら梶が指示をする。納得した勇人は足にタオルを巻いた。これで多少は小枝などを踏んでも大丈夫そうだ。


「というか、股間を隠す分はないのかよ」


 勇人が訴えると梶は「無い」と微笑んであっさり言った。

 反乱軍の兵士達はジリジリと銃の射程距離まで近付いてきている。

 ニコールは木を背にして勇人達が隠れている方に振り返った。


「私達があいつらを引き止めておくから、部室まで走って逃げて」


 ニコールが木から半身を出して拳銃を発砲した。

 いきなりの銃撃に反乱軍の兵士達は素早く散開して木に隠れた。


「今よ!」


 ニコールが叫ぶと、サバゲー部の一同は大学の方向へと走り出した。勇人も飛び出して走ろうとするが一旦立ち止まって、ミリーとニコールに向かって叫んだ。


「ミリー、ニコールさん! 絶対に死なないで下さい!」


 そして走り出した勇人の背中を見つめ、ミリーとニコールは微笑んだ。


「あったり前でしょ」

「もちろんよ」


 その瞬間、反乱軍の兵士達が一斉に銃弾を打ち込んできた。ミリーとニコールが隠れている木の木片が辺りに飛び散る。その場にあった旗が一瞬にして穴だらけになり、柄の部分が粉々に砕けて真ん中からへし折れた。

 山中に響き渡る銃声を背に勇人は走り続けた。

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