THE FIRST LETTER
朝、ポストを開けるとそこに真っ白な封筒があった。
でも新聞がなかった。
なんだろうと思った。新聞がないのに何で手紙が入っているのか。
封筒は普通の封筒で差出人の名前はおろか送り先の名前も入っていない。
こういうのは、ロクなことない。
私は読まずにゴミ箱に捨てようとした。
ゴミ箱に入れようとすると厚みが気になった。
確かな手ごたえ。もしかして。
私は家に入りお湯を沸かしている間に封筒を開けてみた。
封筒に入っていたのは、札束でもなんでもなかった。
入っていたのは、真っ白の紙だった。
それも9枚あった。
9枚の白紙を封筒に入れ、私の家のポストに入れたのか。
私は少し笑った。お気に入りのハーブをポットに入れお湯を注ぐ。
いづれにせよ、これはイタズラだな。
9枚の白紙が気になった。
光りに透かしてみたりした。
なんだろうかコレ。なんで9枚なんだろう。
1枚でいいのに。いや、用紙を入れる必要があったのか?
一切の文章がないのに。それに差出人も書いていない。
本当の所私宛てではないかもしれない。
お隣の人かもしれないし。
待てよ。仮にお隣の人だとして、
「差出人のない手紙が来たんですけど、お宅のですか?」
なんて聞けない。
うーーん。
私はハーブをポットから出しカップに注いだ。
まぁ、いいや。
でも、とりあえず、とっておくか。
私はテーブルに置いてある1冊の小説に挟んだ。
小説の名前は『ナイン・ストーリーズ』サリンジャーの本だ。
時々読み返したくなる本だ。
ナイン・ストーリーズか。
この手紙も9枚の用紙が入っていた。
もしかして、9つのストーリが詰まっているのかな?
私は軽く笑い、出勤準備をはじめた。