ガダルカナル沖海戦2
中野参謀長が言った、上戸司令官には向いていない作戦。それは綾瀬司令長官が立案した『無人島作戦』である。サモア・フィジー・エスピリッサント・サンタクルーズ・ガダルカナルのいずれかにアメリカ軍が攻めてくれば、その島を敢えて占領させる。ブーゲンビル・ラバウル・ニューギニア各地に来た場合は撃退するが、それ以外なら占領させるのである。既に大英帝国軍とオーストラリア軍、そして現地駐留の大日本帝國空軍はブーゲンビル以西に待避しており、残っているのは若干名の国防情報捜査庁の諜報員だけである。その諜報員達もアメリカ軍が上陸作戦を開始したと知らせると、島の反対側から魚雷挺で脱出し、潜水艦に移乗する。その為の潜水艦も既に配備していた。
大森司令官の第2艦隊は敵艦隊が上陸作戦を終えた後に、殴り込みを行う事になっている。だがその前に攻撃隊を出し、敵に艦隊がいる事を知らせようと考えたのである。そうなれば敵に気付かれたと判断したアメリカ軍は慌てて上陸作戦を行うだろうとの判断であった。上陸させたアメリカ軍はその島で完全に孤立する事になる。上陸を支援した艦隊は大森司令官の第2艦隊が叩き出し、ラバウルやブーゲンビルから空軍が爆撃を開始する。そして潜水艦がその島を囲むように配備される。クェゼリンの第7艦隊から2個潜水戦隊がラバウルに派遣され諜報員救出と封鎖作戦に従事する事になっている。
「航空隊が敵艦隊に攻撃を開始しました。」
「了解。」
通信員の言葉に、大森司令官は頷いた。戦闘指揮室は俄に忙しくなった。
第15任務部隊旗艦戦艦アイオワ艦橋
サリーナ司令官とイニス参謀長は敵編隊の攻撃を艦橋から見ていた。日本軍の偵察機と接触した事で、空襲を覚悟していたがここまで早く空襲を受けるとは思っていなかった。
「参謀長、敵の目的は何だと思う?」
「とにかく牽制する事が目的では無いでしょうか?」
イニス参謀長は首を捻りながら答えた。
「敵にしても島を守るのが大事ですからね。」
「私はこの敵機に対しても疑問を持つわ。」
サリーナ司令官は敵機の種類に対して疑問を呈した。大日本帝國空軍がこのような海軍の航空機を配備しているとの情報は無い。と言うことは可能性はただ一つ。
「連合艦隊が来ているわ。」
サリーナ司令官の言葉に、艦橋から会話が消えた。誰もが『連合艦隊』との言葉に、反応を示した。
「まさかそんな事が……」
「可能性は無きにしもあらず。連合艦隊が来ている可能性も考えて行動しないといけないわ。とにかく上陸作戦を強硬するわよ。第16任務部隊に連絡を。私達は敵艦隊への警戒に徹するわよ。」
少し連合艦隊の作戦とは違いを見せたが、概ねアメリカ海軍は罠にはまろうとしていた。
第2艦隊旗艦超弩級戦艦山城戦闘指揮室
「敵艦隊、進路に変化ありません。」
通信員が七式艦上偵察機からの報告を受け、報告した。塚本1等曹長の偵察機は帰艦したが、新たに偵察機が出され実況中継をさせていた。
「司令官、どうやら敵艦隊は罠にかかりましたね。」
「確かに。」
「それでは作戦の第二段階への移行を開始します。司令官、御命令を。」
「第二段階への移行を許可する。」
大森司令官の命令により作戦は第二段階へ移行した。
『アメリカ海軍第15及び第16任務部隊は第2艦隊の空襲により、ガダルカナル上陸作戦を強硬した。第2艦隊は空襲を終えると、艦隊を第15及び第16任務部隊の反対側に回り込ませた。ガダルカナル島を目指すアメリカ海軍の反対進路に行き、ガダルカナル占領まで待機するのである。アメリカ海軍は第15任務部隊は連合艦隊の空襲に警戒を強めたが、それ以後空襲が無い為に警戒を徐々に弱めた。それによりガダルカナル上陸作戦を計画通り行った。計画通りガダルカナル島に海兵隊2個師団が上陸を開始。第15及び第16任務部隊の艦砲射撃と空襲はガダルカナル島に対して全面的に行われた。大日本帝國が空軍駐留の対価として大英帝国とオーストラリアに提示したのは、その基地の要塞化と飛行場のコンクリート・アスファルト整備であった。これにより南太平洋各基地は強固に整備されたのである。だがこの整備された基地を見捨てて引き揚げろ、との要請が連合艦隊総司令部から下された。その後国防総省と大本営からも同様の要請が下された、大英帝国とオーストラリアは困惑した。困惑する両国に大日本帝國は基地が破壊された後の修復費用の全面負担を申し入れたのである。これにより両国はブーゲンビル以西に撤退し、大日本帝國空軍も撤退した。綾瀬司令長官は海軍設営部隊をラバウルに空軍輸送機を使い輸送した。海軍設営部隊は通称[働き蜂部隊]と呼ばれ、民間土建会社からも人員装備を配備していた。大量の貨物自動車に排土車・掘削車を配備し、飛行場なら数日で整備する能力を有していた。そして第7艦隊から2個潜水戦隊を配備し、ガダルカナル島へ上陸した2個海兵師団を孤立させる計画は整ったのである。
そして上陸を果たした海兵隊2個師団は銃弾1発も撃たれる事の無い、上陸に疑念を抱きながらもアイオワに上陸成功を報告した。報告を受けた任務部隊は更に海兵隊の侵攻支援の攻撃を継続。それを受けて海兵隊は侵攻を開始。敵司令部に向かった。司令部なら反撃があると思った海兵隊であったが、司令部制圧に際しても反撃は皆無であった。海兵隊が司令部を占領し建物内部に突入すると、そこには[撤退]と書かれた紙がそこらしらの壁に貼られていた。これにより事態を把握した海兵隊司令部はアイオワに再度、それを報告。サリーナ司令官は再び疑問に思ったが、占領出来た事に変わりは無かったので輸送船からの物資陸揚げを開始した。そして5時間後、物資を全て陸揚げした両任務部隊はハワイへの帰路に着いた。
だがその帰路に第2艦隊は待ち受けていたのである。』
望月恵著
『太平洋戦争記録』より抜粋
次は海戦になります。




