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入学

 人物紹介 No.1 水城 大河(高校一年次)


身長:156cm 体重:48kg


遂に成長期が来たのか、この半年で5cmほど身長が伸びた。顔立ちも徐々に精悍さを帯びて来ている。


本作の主人公。野球が好きで人知れずプロを志すも、名門『嶺王大付属』のセレクションに落選。それを期に野球とは距離をおく。

しかし、それが結果的に自分がどれだけ野球が好きだったのかを思い出させる事となった。


【選手評】

嶺王大付属のセレクションには落選したが、強豪校から推薦を受けるなど、その実力は本物。

特に守備能力の高さは折り紙つき。

打撃に関しても、バットコントロールはまずまずで、選球眼も良い。が、やはりパワー不足が目立つ。


【人物評】

周囲の意見に惑わされず、自分の考えを貫く意志の強さ、頑固さを持つ。良くも悪くもマイペース。

寡黙、口べた。お人好し。若干ヘタレ要素もあり…





―――――――――――――――――――――



港南市の外れにある小高い丘。その頂上に港南第一高校がある。


港南第一高校、通称一高は創立100年余りの歴史を持つ伝統校だ。地域随一の進学校という学業面もさることながら、スポーツも盛んという、正に文武両道を地でいく学校である。


―――今日から俺はこの学校に入学する。



4月



丘一面に咲き乱れる桜の花が、心地よい春風に乗せられてヒラヒラと舞い踊る


―そんな幻想的な光景に迎えられ、今日、新入生は入学の日を迎えた。


―新たな出会いと未知の世界に、大きな期待と小さな不安を抱えて



……………



大河:(…俺の名前は――っと、あった!…8組ね…)


大河はクラス分けが貼られた掲示板の前に来ていた。人だかりを掻き分けて、今ようやく自分のクラスを確認したところだ。


(オイオイ、知り合いが誰一人いねぇじゃねえか…参ったな)


ケンは3組、結維は1組―こっちは同じクラスにならんでよかったが―、その他にも中学で仲の良かった連中はみんな別クラスになってしまった。


…それどころか、同じ中学のヤツすら一人もいない…



(…確かウチの中学から30人くらいは行ってるはずだよな…それが8組はオレ一人だけとか…どう考えてもおかしいだろ)


大河は小さく溜め息をついた。



―――


「おい、大河~」


あのやけに良く響く声は――ケンだな


ケン:「お前、来るのおせーよ!もうすぐ入学式始まっちまうじゃねえか。俺なんて一時間前には来てたぞ!」


そんな大声で捲し立てんでも聞こえてるっての…


「まあ、間に合ったんだからいいだろ」


「…どこまでもマイペースなヤツだよ…お前は」


大河のあまりにも普段通りの調子に、ケンはすっかり力が抜けてしまった。



「―そうだ!お前何組になったんだよ?おれは――


「3組だろ。さっき掲示板で見たわ」


「んだ、知ってたのか。

――で、3組なんだけどよ、なんかやたら知り合いが多くてよ、別の学校に来たって感じがしないんだよなぁ」


そう言うケンはどことなく残念そうに見える――が


「…そうか、お前のクラスが原因だったのか…」


「ん?何の話だよ?」


「お前のクラスにみんな行っちまったから、俺のクラスには知り合いが誰一人いないって話だよ」


――オレからすればうらやましい話だ。

…ただでさえ、初対面のヤツと話すのは苦手だっつうのに


「マジか。知ってるヤツばっかってのもアレだけど、誰も知り合いがいないってのはきついな。――で、結局お前何組なん?」


「…8組だけど」


「…よりにもよって8組か。ツイてねえな、お前」


そう言ってケンは俺の肩に手を置いた。


…何だ?8組ってなんかヤバイのか


…ケンは何か知ってそうだし聞いてみるか


「いや、別にそういうことじゃないんだけどよぉ、担任の教師もまだ発表されてねぇし」


「じゃあ、なんだっつうんだよ」


「ほれ、あそこ見てみ」


そう言ってケンは掲示板を指差した。そこには―


「『校内案内』?」


「そこから8組の教室どこにあるか探してみ?」


…ああ、そういや教室どこなのか見てなかったわ、…どれどれ――


んー


あれ?一年の教室は二階のはずなのに8組だけねえぞ。7組までしかねえ。


8組はどこに行ったんだ?


「…4階見てみ」


自分のクラスの教室を見つけられない大河にケンのフォローが入る


(四階って確か3年のクラスがある階じゃねえか、…まさか――)


半信半疑で見てみると、四階の一番端の教室に【1-8】の文字が!



\(^o^)/



ケン:「ま、そういうコトだ。ご愁傷さま」


大河:「っておかしいだろ(苦笑)。なんで一クラスだけ《陸の孤島》みたいになってんだよ!」


「そんなのオレに聞かれても分かんねーよ。空いてる教室がなかったとかじゃねーの?…実際、二階は教室埋まってんだし」


「…まあ、そんなトコだろうな…」


…無人島に一人ぼっち、ってのはこんな気分なんだろうか…


さすがに期待より不安が先行してしまう大河だったが――


(…まあ、なるようになるか)


どうやら、開き直りの境地に達したようだ。



【1-8】、果たしてどんなクラスなんだろうか





――――――


キョロキョロ


(…やっぱり、知ってるヤツはいねぇなあ…)


入学式が終わり、8組の教室に入った大河。


どうやらやはり知り合いはだれもいないようだ。…ただ、それは他の連中も同じのようで―――


『…………………………………』


どんよりとした重い空気が教室に流れていた。


これはキツイ、そう思ってたところに思わぬ救世主?が現れた。


『ん、今年の新入生は随分と大人しいな』


30代後半か40の前半くらいの腹の突き出た絵に描いたようなおっさんが入ってきた。


どうやら、担任の登場のようである。


『諸君、今日は入学おめでとう!今日から一年お前たちの担任を務める事になった、大和田だ。ヨロシクな!』


さすがに教師。実に通りの良い声である。が


『…………………』


…反応がない


『ん、お前たち、もしかして緊張してんのか?そんな固くならんでいいぞ。別に捕って食おう訳じゃないんだから。……まあ、とにかく一年間はこのクラスでやってく訳だから、楽しく!やっていこう』


どうやら、なかなかイイ感じの先生のようだな…とりあえず一安心。


『色々やるのは明日からだ。今日のところは解散!って言いたいトコだが、最後に一人づつ簡単に自己紹介でもしてもらおうかな』


自己紹介か。…そういうのあんま得意じゃないけど…まあ知らないヤツばかりだしちょうどいいか



――――――



「…………趣味はショッピングです。よろしくお願いします」


『おう、ヨロシクな』


……………


テンプレ通りのあいさつばっかで、眠くなってきた


なんかこう、話の合いそうなヤツはいないのかね


『じゃあ、次』


?:「中西なかにし れんです。中学まで静岡に住んでいましたが、親の仕事の都合でこっちにやって来ました。中学まで野球をやってたので高校でも野球部に入ろうと思ってます。よろしくお願いします。」


…お、アイツ野球部入るのか。 ジッ


…身長は170ないくらいか。――しかし


細いな~(苦笑)


まあ、とりあえず仲良くなれそうなヤツがいてよかったわ



その後、自己紹介が淡々と進み――大河は出身校と名前のみという実に簡潔なものだった

――そして終わった。


『よーし!じゃあ今日はこれでおしまいだ。

…最後に、まあお前たちも他のクラスと離ればなれのクラスになって文句の一つでもあるだろうが、逆にクラスの仲を深めるいい機会だとも俺は思う』


…まあ、物は言い様だよな…


『…とにかく!一年間楽しくやっていこう!じゃ解散!』



大河の、長く波乱に満ちた高校生活が始まろうとしていた…




























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