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墜ちたヒーロー

 

 登場人物紹介  笠松カサマツ ユウ


身長:172cm / 体重:74kg

身長こそ低めだが、体格は筋肉質でガッチリとしているので、サイズの低さを感じさせない。


右投左打 / 捕手

2年生にして嶺王大付属の正捕手を務める。

その最大の特長は、豊富な知識と天才的な閃きに裏付けされた、ピッチャーをリードする能力である。


苦労に苦労を重ねて今の地位を手に入れた為、同じような境遇の人間を見ると放っておけないところがある。



―――――――――――――――――――――



試合後、一高の控え室は静まりかえっていた。



負けという結果以上に、徹底的に叩きのめされたというその内容に対するショックが大きかったのだろう。



  こんなハズじゃなかった


  これまでの練習は一体なんだったのか



誰もがそんな感情に支配され、言葉を発する事すら出来なかった。



  …………………



暫くして、


「…今日はこのまま解散にしよう。引き継ぎなど今後の事については週明けに話す事にするよ。とりあえず今日、明日はゆっくり休んでくれ」


沈黙を破ったのは主将の吉田だった。


キャプテンは手短にそう話すと、そのまま静かに部屋を出ていった。


その姿からはショックな様子がありありと見て取れた。



それからは早かった。堰を切ったかのように、皆次々と部屋を後にしていく。


一刻も早くこの場から立ち去りたい、と思ったのかも知れない。



そんな中、金縛りにかかったかのようにその場から動かない者がいた。




―――大河だった




見かねたレンが声を掛けようとしたが、



?:「…やめとけ…」



レンの行く手を阻んだのはケンであった。



「…でも…」


「今は何を言っても無駄だ…行こう」


バタン



大河は一人立ち上がる事すら出来ないでいた。




――――――



「…確かにこれだけの大敗だ。試合に出てない俺だって正直かなりへこんでるよ。ましてやこの試合が引退試合になっちまったセンパイたちは言わずもがなって感じだよな?」



吐き捨てるように言ったケンの言葉に、レンは黙ってうなずいた。



「でも―――大河の受けたショックはそんなもんじゃないと俺は思う」


 ???


どういう事なのか、分からない。


引退を余儀なくされる三年生より辛い事などあるのだろうか?


「なぜ?」と尋ねようとした瞬間、それを遮るように言葉が紡がれた。



「…この事は他の連中には伏せておいてほしいんだが―――



アイツ、大河は嶺王大付属のセレクションに落ちてるんだ」



「…え!?」



「…アイツから直接聞いたわけじゃないけどな。―――ただ



そこでケンは一息おいて、フ~と息を吐き空を見上げ



「あの頃のアイツは見てられなかったな…」



「…そうだったんだ…」



…知らなかった。水城君にそんな過去があったなんて


確かに、彼はウチの学校には不自然ほど野球が上手かった。


一方で、彼は何処か冷めた所があった。



今の話を聞いて、その理由がなんとなく分かった気がした。





――――――




「…アイツ…大河はさ、ガキの頃から何処と無く周りの人を引きつける妙な力があった。」


普段は全然話の輪に入って来ない癖に、たまに口を開くと妙に的を得た事を吐くとこ


なんやかんや言っても、困っている人間を放っておけないところ


―――野球でも


チームが窮地に立たされたとき、突破口を開くのは決まって大河だった。



「とにかく、『ここ!!』ってところでの集中力は凄まじかったな。

―――で、そういう時は必ずと言っていいほど結果を残すんだ」



あの時も、…あの時も、……あの時もそうだ……



「…気が付くとチームの中心にアイツがいるんだ。不思議なもんだろ?…アイツにそんな気は全然ないんだろうけどな」


 …………………


レンはケンの話を黙って聞きいっていた。


付き合いこそ短いが、自分も大河が他とは違う雰囲気を纏っている事は直ぐに分かった。


だからだろうか?


何かにつけて彼に意見を求めたり、頼りたくなってしまうのは。



そして、感じた


「…水城君は幸せだね。ケン君みたいな親友がいてさ。僕は親の仕事柄、転校が多かったから、いないんだ―――そういうヒトがさ…」


―――羨ましい、と。


自分の事を良く理解してくれる存在がいる事が



「…そんなもんかね?」


ケンはハハッっと小さく笑った。


 ………………………


「一つ聞いていい?」


「…ん」


「ケン君は水城君の事どう思ってるの?…一野球選手として」


…聞かなくても分かってるけど


「…アイツは本当に凄いヤツだよ。俺が今まで出会った誰よりもな」


発した言葉に、嘘や偽りは感じられない。



  信じているんだ



水城君ならどんな挫折や逆境に陥っても絶対に立ち上がるって


 ……………



 自分も信じてみたくなった



彼がそこまで信頼する『水城 大河』という男を





「あっ」


不意にケンが声をあげた。


「どうしたの?」


「…そういやもう一人いたっけ…」


「は?」


「…オレ以上に大河と古い付き合いのヤツさ」


(今日の試合見てどう思ったんだろうね?、『彼女』はさ)





――――――



?(…アイツのあんな情けない姿なんてみたくなかった…)


―――大体、なんなのよ、ウチの野球部は!?


試合中なのにどいつもこいつも、「早く終わってくれ~」みたいな顔しちゃてさ


勝てないまでも、一矢報いてやろうって気さえ無いわけ?


…ああ、イライラする~~





「―――維………結……維―――結維ってば!!」




耳元で自分の名前を大声で連呼され、結維はようやく現実の世界に戻ってきた。


『水沢 結維』


大河の幼馴染みである。


色々あって(※過去の話参照)現在は、大河とは疎遠になっているが、付き合いの長さは最も長いと言えるだろう。


?:「結維ってば試合終わってからずっとだんまりなんだもん…

―――確かに残念な結果だったけど……そんなショックだった?」


一緒にいた友人の川嶋カワシマ 有紀ユキが心配そうに話しかける。


「大丈夫!ダイジョーブ!!野球部があんまり情けないもんだから、ちょっとイライラしてただけだって」


両手をブンブン振って答えるが―――



 

 …大河…こんなトコでなにやってんのよ…


 …野球だけは誰にも負けないんじゃなかったの!?…


 …それとも、アンタにとって野球はその程度のものだったの?…



「………答えなさいよ、大河!」




「えっ!?何一人でブツブツ言ってんのよ!?やっぱ何か変よ、今日のユイ」


どうやら口に出てしまっていたようだ。




「そういえば、水城君って、1年生で唯一のレギュラーなんて結構凄くない?私、同じクラスなのに全然知らなかったよ」


「……別に…ウチのレベル考えたら、大した事ないでしょ?凄いっていうのは、嶺王の1年生ピッチャーみたいな事を言うのよ」


(あれが噂の『青山 龍』か~。雑誌とかでは見たあるけど…確かに騒がれるだけはあるわね。…加えてルックスも爽やかイケメンだし…)


―――でも、何かムカつく




「青山君でしょ!カッコ良かった~♪私、ファンになっちゃおうかな?」


…また始まったよ、このコは…はあ…


「…ユキ、あんた頼りになる年上がタイプじゃなかったの?」


「それはそれ、コレはコレよ!」


興味の対象が次から次へと変わる。


目移りしやすいというか、飽きっぽいというか…


でも、そういう性格が故なのか、いつも笑顔で楽しそうに見える


―――そして


…ユキの…こういうところが、私には少し羨ましかった。


…私は未だに、大河の事を吹っ切れないでいる…






私がセカンドで大河がショート


リトルリーグ時代、私と大河はチームメートだった。


正直それほど強いチームじゃなかったけど、それでも、大河は何度もチームに奇跡を起こしてくれた。



私にとっての最も身近なヒーロー



『大切な思い出』




―――でも、今は…………



「…………………」



 もう、終わりにしよう



大河には、ずっと私の中でヒーローでいてほしいから



だから



もう大河を追いかけるのはやめよう


…これ以上辛い思いをしたくないから…


美しい思い出のまま閉まっておこう








       大河のバカ







久しぶりの更新!


イヤー、難産でした(笑)

文章書くってムズカシイ!!


仕事も忙しいし……


これからもスローペースになるかも……



でも、絶対に完走致しますんで、応援ヨロシク♪



最後に一言


…ホントに文章書くって難しい…

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