八話 強いひと
昨日の疲れや酔いを朝の鍛錬で吹っ飛ばし、今日も迷宮に潜る。
最短ルートを通り8階層に到着。通路が7階層の部屋の様に凸凹している。通路であっても5メートル先が見えない所が出来ている。
足元にある石ころ等にも気を付けながらゆっくりと進んでいく。
暫く道なりに進むと変形5差路に着き、どの道へ行こうか考えていると、
――バサッ
微かな羽ばたきが聞こえた。
その音は斜め後方の上部から聞こえたが、俺はその事を考えるより早く立っていた場所から横へ身を投げ出した。
視界の隅から前方へ、かなりの速さで漆黒の物体が横切った。その時に風切り音が聞こえ、横を通るその物体から発せられる風が俺の頬と髪を撫でていく。当たれば相当危険だった。
その物体は60センチの、大きな矢尻かと思ったが、それが翼を広げたので正体が分かった。そいつはコウモリだったのだ。
巨大ネズミを1~2階層でみたが、コイツも大きい。
コイツの事は昨日オイゲンが話してくれたのを憶えていた。名前はバラコウモリと言って、体は40~50センチだが、翼を広げると1.2メートルにもなる。
牙が二重になっていて一度咬むと中々外れないし、先程の矢の様に飛んで行き相手に突き刺さる攻撃などをおこなってくる。
バラコウモリが上空で旋回しながらこちらを窺っているので、投げナイフを投擲する。
ガキィ ザシュッ
動きが素早くて1本目は外したが2本目は翼に刺さった。
「キィー! キキィー!」
何とかナイフを外そうと、地面を転がりながらナイフに足を引っ掛けているが外れそうにないようだ。それどころか、動く所為で翼の皮膜をナイフが傷つけている。
ナイフをもう1本投げ、倒す。
バラコウモリは、余り放って置くと仲間を呼ぶので最初に倒した方がいい魔物であるらしい。
素材として現れたのがバラコウモリの翼である皮膜だ。
これを調べて面白い事が分かった。この皮膜、弾力があり、撥水性があり、保温効果まであるのだ。これでマントを作れば旅人は大喜びだろう。
ちょっと集めてみようかな。
5差路の内1つの通路を適当に選んで進む。
この階層は、飛べる魔物には有利にはこぶ。足場になる高い障害物、ある程度自由に動ける空間、そして魔物は体が黒く目立ち難いコウモリだ。なんともやり辛い事だ。
しかも、ここではコボルトも出るみたいだからな。スピード重視の魔物は面倒だ。
次に遭遇したのはコボルト2体にバラコウモリ1匹の混成部隊。
やっぱり面倒だ……。
「キュィー!」
こちらの気も知らないでバラコウモリが叫びだした(多分仲間を呼んでいる)ので、慌てて投げナイフで倒す。
コボルトは最初は気が付いていなかった様だが、バラコウモリが叫びだした事でこちらを見つけた。
だが、ここで思わぬ事を体験した。なんとコボルトが逃げ出したのだ。
コボルトの後を追いかけ、何度か攻撃をしようとしたが、最初の初動が早かった所為か上手く捉えきれない。
コボルトが部屋に入ったので俺も続くと、そこには更に3匹のバラコウモリが待っていた。
どうやら俺は誘い込まれた様だが、そんな事は関係なかった。
3匹のバラコウモリが一斉に体を尖らせ襲い掛かるが、俺はその下を掻い潜りコボルトに接近する。コボルトはこちらへ来ると思っていなかったのか、構えてはいたが殆ど棒立ちだったので簡単に詰め寄れたのだ。
両手でカンティーとノールを前に交差した状態で突っ込み、同時に振ってコボルトの首を刎ねる。
バラコウモリは、突っ込んだ体を停止させるために翼を広げたので無防備な体をさらしている。
上空に逃げられたら面倒なので速攻でしとめる。
3匹の内2匹が右に寄っていたので、振り返りながら遠心力を利用して2匹とも左手のノールで斬り付ける。
もう1匹は少し離れていたので届かなかった。しかし、上に逃げるバラコウモリに、切っ先を相手に向け真っ直ぐ引いたカンティーを投げ飛ばす。勢い良く進んだカンティーは狙い違わずに体の中心へ刺さる。
バラコウモリが一斉に襲ってきても数匹なら避ける事もたやすい。それなら時間差で襲ってきた方が危険だ。
8階層を突破し、続けて9階層も突破する。
9階層の内部構造と魔物の種類は変わらなかった。ただ、気持ち程度出てくる魔物の数が多いくらいかな? 挟み打ちを食らう事があるくらいだ。
比較的直ぐに階段も見付かったので、楽なものだった。
テレポーターがある部屋で休憩と食事を取る事にした。
下手な場所で腹が減ってもどうしようもないからな。魔物が襲ってこないここで食事をするのが一番だ。
魔石式コンロや調理器具、食材を取り出す。
鍋に水、ブイヨンもどき、野菜、兎肉、香草を入れ煮る。野菜はニンジン、タマネギ、キャベツ、ジャガイモなどを薄切りに、肉は兎の肉を取っといたのでこれを小さく一口サイズに切る。
ブイヨンは500ミリリットルサイズの壷入りが売られていたのでそれを買ったのだ。ついでにケチャップもどきも購入済み。
全ての具材に火が通ると、ケチャップと塩コショウで味を調えて一煮立ち。
全工程30分で、ミネストローネの出来上がり。これにパンを付ければ少々質素だがちゃんとした昼食だ。
昨日までは保存食などを昼食に食べていたが、折角コンロや調理器具を用意したので使わないのはもったいない。
ミネストローネにパンを浸し、ハフハフと食べればあっという間に、ごちそうさまだ。
人間、美味しい物を食べると幸せになるんだよね。こんなお手軽料理でも。
10階層では、また迷宮の内部構造がガラリと変わる。魔物も新たなのが出るらしい。
酒場で聞いた情報だが、白の迷宮は様々な種類の構造や魔物が出てくる迷宮になっていて、探索者がこれからも迷宮に挑み続ける為の訓練場と思える造りらしい。より深く潜ると、迷宮内に溶岩が流れる階層や、凍える様な寒さの階層まであるらしい。
これは、青の迷宮や赤の迷宮でも出てくるが、白の迷宮はその規模が小さいので訓練場と言われるみたいだ。
そして、この10階層から15階層までは『草原』エリアと呼ばれる、通路が極端に少なく部屋が拡大した階層になる。数100メートルの部屋が幾つも連なり、丈の短い草が床一面に敷き詰められている。高さも10~20メートルもあるらしい。迷宮内の地下だとは思えないほど明るい階層で、端から端まで良く見える。
迷宮内も幾つかの分類がされていて、最初の方の階層が『迷路』と呼ばれ、コボルトやバラコウモリが出た階層が『洞窟』なんて呼ばれている。
階段の高さは5メートル程だが、それぞれの階層に下りると階層と階段の高さは関係なくなるようだ。
この『草原』エリアには、見た限り獣系の魔物と飛行系の魔物がいる。空にはワシの様な魔物が飛んでいて、地表には幾つかの魔物の姿が見える。
『草原』に足を踏み入れ、最初の獲物の下へ近づく。
その魔物はバッファローに近い姿形で体格も良い。
頭から生える2本の角は太く長い。根元の方から広がり途中で狭くなり前方の敵に突き刺す感じで生えている。体は短い体毛と分厚いだろう皮膚と脂肪が外敵の攻撃を防ぐのだろう。足は筋肉の脈動が窺える様な太さだ。
しかし、バッファローとは確実に違うと言える部分がある。それは、しっぽの先端が棘付きのボールの様になっているのだ。
その、見るからに当たったら痛そうなしっぽを左右にブンブンと振っているのだ。
これがこの世界に生息している普通の生物と言われても俺は絶対に信じない。
まぁ、コイツの事も聞いているので分かっていたのだが。コイツはブラッシュと言う魔物だ。
ブラッシュは俺に気付きこちらに振り向く。『草原』だと迷宮内が明るくて遠くからでも双方とも発見されやすい。
ブラッシュがその重たそうな角が付いている頭を振りながら、前足で地面を何回も蹴っている。
その姿から予測できる事は突進だ。
「ヴォー!」
雄たけびを上げ、その威圧感ある巨体で突っ込んでくる。
ここから本格的な出番になるネージュを両手でシッカリと握る。
角が邪魔なので、機動力をそぐ為に外側へ体を逃がし前足を斬りつけようとした。が、ブラッシュは頭をこちらに向けしっぽでバランスを取り、進行方向を急速に変えた。
あまりにも急激な方向転換に、攻撃を止め体を更に外へ、倒れる様に避ける。
ブラッシュはその動きについてこれなくて、俺の体に後1歩届かない。しかし、凶悪なしっぽを俺にぶつける為に振る事はできたようだ。
俺は足を前後に大きく開き、姿勢を低くする事で攻撃を避ける。その動作は俺の攻撃の動作にも繋がっている。前足で踏ん張り、ブラッシュの後ろ足を一閃。足を切断されたブラッシュは、悲鳴を上げてその巨体を地面に横たわらせた。
素早く首に斬り付けたが、流石重量級。剣は食い込むが、引き締まった肉体が振り切る時に抵抗して、頚動脈を裂き脊椎を傷つけるに留まった。これは、斬るよりも突く事で倒すのを狙った方が良さそうだ。
素材を回収しようとしたが、争っているのに気が付いたのか魔物が近寄って来た。
白くねじれた鋭い角が額から1本生えた狼で、濃い茶色の体毛に白く輝く角が映える。名前は、その角の見栄えからシャープウルフと付けられていた。
2匹のシャープウルフがじりじりと距離を詰めるその後方で、空からワシに似た魔物も近づいている。
クチバシがオウムに似て丸みをおびている、ハスターと言う飛行型の魔物だ。
両方から襲われるのは避けたいので、シャープウルフを先に倒す。
2匹とも突進して来るが、角の攻撃は刺す事を基本としているようで、俺が動くと常に角が正面を向くように体勢を整えている。いくら硬そうな角でも長さの割りに少し細く見えるので、薙ぐにはそぐわないのだろう。
その代わり、刺さればそのまま根元まで食い込みそうな鋭さを窺わせる。
角を避けネージュを振り下ろし首を斬り、剣を止める事無く円を書くように回し、次に来たシャープウルフの角を下から弾く。その時に角を斬らない様に調整し、その衝撃に体を上へ仰け反る様な感じに持っていく。無防備な腹をこちらへ晒すシャープウルフに止めの一撃を加える。
上空からはハスターがクチバシを大きく開けて下降してくる。
シャープウルフを倒し、体制を整える事は出来ているので対応は万全だ。
ハスターはそこまで速くは無いので、その動きをシッカリと見据え、口にネージュを突き刺す。
口内から尾羽の方まで真っ直ぐに貫通した所で横に引き裂く。
少し血が掛かりはしたが、完璧な戦闘だった。
この階層、『平原』エリアでは1体の魔物に見付かると、戦闘に気付いた他の魔物もやって来る。だから戦闘しながらでも確実に、少しづつ前進する。
奥ではアルマジロに似た魔物も出てきた。丸まると1メートルを超える大きさで、外殻も硬いときてる。転がるスピードも上がっていき剣が弾かれてしまう。
草を薙ぎ倒し転がっている所を、横から蹴たくり、横の平らな部分で回転を緩める。出来ればその時踏みつけてやれば、なお良しだ。
鱗の繋ぎ目にある隙間を正確に斬りつけるか、内側の腹の部分を斬りつける。又は、鈍器や衝撃を浸透させる攻撃が適切だろう。
今まで出会った魔物の中ではこのアルマジロもどきが一番の強敵だ。
こうして魔物と戦いながらも、『草原』エリア特有の素材収集にも精を出す。
様々なエリアには、それに合った素材が落ちていたり、採掘したり、採取できたりする。
『草原』では低位階級の魔法薬の材料が多く手に入る。それは、回復薬だったり、解毒薬、体力増強薬といった物の材料だ。
他にも触媒用の材料にもなるので、採取はこまめにおこなっておく。
こういった採取は、人が多いと楽なのだが……1人なのでしょうがない。
11階層までの探索を終え、疲れた体を労わりながら帰路につく。
酒場のヒチェンバーに寄ると、蹂躙パーティーのレオンと視線が合った。
「よぉ、アンタも来たのか! こっちで一緒に飲もうぜ!」
既に少々酔っているのか、陽気にこちらに声を掛けてくる。
一緒の席にオイゲンもいたがドルズの姿は見えず、服装もラフなもので申し訳程度に武装しているぐらいだ。今日はオフの日なのかもしれない。
「お邪魔します。
今日は探索が休みなんですか?」
ウェイトレスに注文とどこに座るか教え、レオンに差し出されたイスに座りながら問いかける。
「そりゃー、毎日潜る訳じゃねーからよ。
オレらは基本5日潜って2日休むを繰り返してんだよ」
レオンが肩を竦め片手をナイナイと顔の前で振る。
「そうですね。私達はそうやって休みを挟んでいますが、慣れていない方は1日交代で探索と休息を入れていますね。慣れれば2日潜り1日休みとかにされる方もいらっしゃいますが、これは個人で変わるものです。
疲れが溜まらないなら潜り続けてもいいですが、折角の人生です。休息を取って自由を満喫するのも良いものですよ」
「そうそう! 人生楽しんだもん勝ちだ!」
修行中タイトなスケジュールを組まされていたので、疲れは直ぐに癒えるようになっていて実感が湧かなかったが、休みを入れるのは色々とメリットがあるな。
迷宮探索の速度を調節できるし、物作りに精を出せる。お金もあるので生活費には事欠かない。
迷宮以外でこの世界を満喫するのも良いだろう。
しかし、オイゲンと違って、レオンの物言いは酔っ払いの戯言に聞こえるぞ。良い事を言っているのに今一説得力が無い。
……そういうキャラ付けにしておこう。
「探索が休みの時は何をしてるんです?」
俺の質問に、2人がそれぞれ顔を見合わせ首を傾げてから、こちらへ向き直る。
「オレはナンパしたり、賭博場に行ったり、女を買ったりで1日が潰れるな。両方の意味で酒で潰れる事もあるがな」
「もう少し誠実に暮らせないのですか?」
「オレはオレに誠実でいるんだよ」
あなたはそんな事だろうと思っていました……が、のけ者にする訳にはいきませんから。
「私は大抵本を読んでいますね。
それから、普段は中々交流の出来ない友人を呼んで、ティーパーティーを開いてますね」
「げっ、お前そんな事してたのかよ。
もっと探索者らしい1日の使い方はできねーのかよ」
「これが私の心休まる休日の過ごし方ですので……。意外と楽しいものですよ」
「そういうもんかねー」
オイゲンの休日は、オイゲンらしい過ごし方をしているようだ。
しかし、2人とも互いの休日に何をしているか知らなかったようで、レオンは疑惑の、オイゲンは困惑の表情を互いに向けている。
……ドルズは何をしているんだろう?
「ドルズですか?
彼なら『戦場支配』旅団の拠点で書類整理や会議などに出ていますね。
彼は幹部の一員でもありますから、忙しいらしいですよ」
「確かになー。休みは取れるだろうが、それでも他の奴よりも少ないな。
オレならそっこーで辞めてるぜ」
今度は2人とも同情の視線を交わしている。
まぁ、皆が休んでいる時に1人仕事をするのは悲しいものがあるだろうな。
「セージさんは休日に何をなさるんですか?」
「俺はまだ休みを取っていないから、何をするか決めてないんです。
でも、街中を見て回ったり、本を読んだりしたいですね。他にも物を作ったりする事も出来ますから、色々挑戦しようかと」
俺の話を聞き、オイゲンが頷いている。俺の行動予定が自分と重なる部分があるからだろう。
反対に、レオンは微妙な顔をしている。
「本でしたら、図書館がありますから一度行ってみては如何ですか? かなりの種類があるので楽しめますよ」
「まぁ、アンタがそれで良いなら構わねーがな」
「なんだと! てめぇー!」
3人で食事をしながら雑談をしていたら、怒声が聞こえてきた。
声がする方を見れば、ガラの悪そうな男性数人が綺麗な女性にがなり声を立てている。
「私は本当の事を言っているのだ。
私は、お前達の旅団に入る事はない。他の仲間もそう言うだろう。
お前達の普段の素行などもシッカリと聞いているぞ」
どうやら女性の引き込みに失敗して、男達が文句を言っているようだ。
「あぁ、アイツらか」
レオンは訳知り顔で頷いている。経緯を知っているようだ。
「レオン。どうなってるんだ?」
「あの女とパーティーは青の迷宮で中位の実力者なんだが、あの女と仲間のバランスが良くて注目されてんだ。
しかもどの旅団にも所属してないから、声をしょっちゅう掛けられてるらしいぞ」
「そうですね。私達も声を掛けましたが、今の所、旅団に入る気は無いと素っ気無く断られました」
「だよな。
しかも声を掛けている方は、色々と犯罪スレスレの行為を繰り返してる奴らだもんな。
所属旅団に女の探索者が居ない事から分かるだろ」
つまり、女性の探索者が強いので引き入れたい。男性達の旅団は犯罪行為? 何それ美味しいの? 状態で入りたくない。
それで、そうこうしている内に男性達が痺れを切らして喧嘩腰になったという事だな。
続く言い争いに、改めて注目していると女性の方に見覚えがあるのに気が付いた。
鎧を脱ぎ身奇麗な格好をしているので、もう少し年上に見えて最初は分からなかったが、声を聞いていて思い出した。
彼女は、初めてこの世界に来た時に入国審査の前で仲間と色々会話をしていて、俺に情報を与えてくれた(一方的にだが)背の高い剣士風の女の子だ。
彼女は、白から鮮やかな赤にグラデーションする、肩だし膝丈のワンピースを着ている。金糸で、刺繍を縁取りに施していて、裾や肩などの見栄えも良い。
ポニーテールにしていた金色の長髪は、三つ編みにして左の肩越しに前に垂らしている。
あの時は後ろ姿しか見えなかったが今は横顔だが良く見える。澄んだ緑の瞳は鮮やかで木々の穏やかさの様子を醸し出しているが、今は男達に険悪の瞳を向けている。
鼻立ちはスッキリしていて、全体的に小顔に纏められていて中々の美貌だ。
そんな彼女が、目や仕草、雰囲気からも「不機嫌だ」と発しているが、男達はそれ以上に理不尽な怒りを彼女に向けている。
「もうこれ以上お前達に話す事は無い。
友人と待ち合わせをしているので、これで失礼させてもらう」
彼女は、もうまともに相手をする気が無くなったのか、店を出ようと出口に向かう。
「ふざけやがって! こうなりゃ力尽くでも来てもらうぞ!」
しかし、そんな事を許さなかった男達が彼女に襲い掛かった。
俺は彼女に手助けしようと立ち上がろうとしたが、彼女の動きを見て心配ないと悟った。
彼女は流れる様な動きで男達の攻撃を避け、逸らし、防いでいる。明らかに実力に差があるのが窺えた。注目のパーティーと言われるのも納得の立ち振る舞いだ。
そんな事を思っていたら、彼女に弾かれた男が俺に突っ込んできた。
どうやら神様は何もしない俺に罰を与えたいようだ。勘弁してくれ……。
背中から俺にぶつかってきた男と一緒にイスごと倒れた。
流石に何もしないのは気が引けるので、誰にも分からない様に素早く首筋に打撃を与え気絶させる。レオンとオイゲン程の実力者なら分かったかもしれないが、運良くテーブルの影になっていて見えなかった様だ。
ふと視線を感じてそちらの方に目をやれば、僅かに戦っていた彼女と視線が合った気がした。
彼女は直ぐに他の相手の方に対応していたので、気の所為かもしれない。
「くそっ!」
彼女の死角にいた男の内1人が、腰に差していたダガーに手を伸ばすのが見えた。
流石に刃物はやり過ぎだ。床に落ちていた木製のスプーンを、不安定な姿勢のうえ、更に俺に圧し掛かっている男の影から手首の振りと捻りだけで投擲する。
「って!」
上手く当たって、男が持っていたダガーとスプーンが同時に床に落ちる。
それに気が付いた彼女も、その男に惚れ惚れする様な回し蹴りを決め、意識を刈り取る。
「おいおい、アンタ大丈夫か。
探索者同士のケンカなんかしょっちゅう起こるんだから、気ぃぬいてっと怪我するぜ」
「気を付けて下さいね。
探索者は皆、自分の力を信じている者ばかりですから、残念ながらこういった事はよく有るのです。
――どうやら怪我は無い様ですね。安心しました」
これも探索者の醍醐味といった所か。海外を巡っていた時の様にいきなり銃撃されないだけまだ安心だ。
その代わり、大抵の人物が武器を装備しているし、魔法を使う者まで居るがな。
「そちらの方は大丈夫でしたか?」
2人の手を借り、男を横へ移動させ起き上がった時に声が掛かった。
声の主は大立ち回りを繰り広げた彼女だった。
「えぇ、大丈夫です。ただ単に倒れただけですから」
そう笑いかけたが、彼女の目は何かを探るように俺を見つめていた。更には、彼女の手にスプーンが握られている始末。
「――そうか。
私の名前はエルマ。そう呼んで欲しい。
今回の事はすまなかった。そしてありがとう」
そう言って持っていたスプーンを隠すように握り込むエルマは、俺が揉め事を望まないのが分かったみたいだ。"ありがとう"も俺の行動に対してだろう。、
綺麗で、強くて、芯が通っている上に気まで利くなんてどんな完璧超人だろうか。
「そんな。気にしなくて良いよ。困った時はお互い様だ。
俺はセージ。また会うかもね」
そう笑い掛けると、エルマも微かに微笑み今度こそ店を出て行く。
女の子が出てきましたが、付き合ったりはしないかなー?
俺は描写の投影が苦手なのが良く分かった。
他の人の作品を見て色々考えるが、俺の思っている様に表現が出来ない。
その所為で安定はしないけど、頑張ります。




