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その青い世界で第一歩  作者: nono
青の迷宮
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二十四話 掘り出し物


 今日は49階層を攻略してから2日目。

 昨日は疲れを癒す為に1日使って休養した。だから今日は勉強でもしようかな。



 今までも図書館で魔道書や魔術書、基礎魔法辞典を読んでアスカラドの魔法を勉強していた。でもそれは、どの様な魔法が在るかの確認だったから、この際俺が学んだ魔法とアスカラドの魔法を融合させる為に勉強しなおす事にした。


 たまたまアスカラドの魔法がトォーラ達に教えてもらった魔法に近いから、研究を続けていけば魔法の融合も夢ではない。


 全てをアスカラド式の魔法に変える事も考えたが、確かに応用は利く魔法が数多くあるけど威力を考えるとどうも……。

 今は切羽詰っていないから両方を融合する計画を立てて、気長にやって行こうと思っている。



 さて、前回の戦闘後に詠唱の話をしたが、今回はもう少し突っ込んだ説明をしよう。


 俺の魔法は詠唱や術式が古い。だが、ただ古いのではなく、神々が争っていた時代の魔法や、全盛期の魔女が居た頃の魔法なので古くても威力がある。新しいのが悪いのではない。新しい魔法も効率を重視したり扱いやすさを重視したりで使い勝手が良い。



 魔法は魔力と詠唱、術式――この場では魔法陣の事――の3つで構成されている。


 魔力は魔法の効果を現実に反映させるエネルギーだ。術式の規模によって多少変化するが、魔力を籠めれば籠めるほど威力や密度が増す。


 詠唱は発現させたい効果の選択。詠唱を唱える事でどんな魔法を使いたいか選び、そこに魔力を乗せ術式に転写して魔法発動の道しるべにする。


 術式は実際に世界を改変するツール。あらかじめ術式には世界を騙す方程式の様な物が描き込んであり、そこに詠唱を図式化したり魔法用の文字にしたりして術式と繋げる。そうすれば魔法が発動出来る。


 アスカラドの魔法も大体似た様な物だ。


 魔法のプロセスはこの様な成り立ちで構成されている。



 さて、ここからはある意味魔法だが、正確には違うモノの話に移行しよう。


 それは、神官魔法、信仰魔法、神聖魔法などの神に力を借りる魔法だ。

 メリンダが使う神官魔法がこれに当たる。


 まず魔力だが、これは神とのチャンネルを開く事に使われる。魔力で神が存在する場所へ穴を空ける、または拡散させていくと言った使用方法になる。つまり、神へ声を聞いてもらう準備をするのだ。


 そして、詠唱とは世界を改変する為の物ではなく、願い事の様な物なのだ。詠唱で発動させたい魔法を教え、自身の願いを叶えてもらう。こうして神官魔法などが発動する。


 術式は無く、その2つが有ればよくて、発動した時はどこからともなく現れるのだ。


 魔力の量と、願いに籠める想いが強ければ強いほど神も力を与えてくれる。だからレベルや職業に依存しなくても、信仰心が高いと自然に効果も上昇する。


 そして、精霊魔法も神官魔法などと似ているが、こちらは神ではなくて精霊に語り掛けるのだ。精霊はこの世界に居るが、普通は目に見えない。だから魔力で精霊とのチャンネルを繋げる事で、精霊に力を貸してもらう。



 この様に魔法の種類1つ取っても発動手順が色々あるのだ。




 さて、今1番興味があるのは短縮詠唱だ。


 詠唱と言うのはただ変えれば良いと言う物ではない。その詠唱になった背景や理念、詠唱を図式化とかにした場合の形、術式に転写する行程、そもそも術式を新しい詠唱に適合するよう変更もしなければいけない。


 やらなければならない事は沢山あるのだ。コツコツ進めるしかない。



 紙に基礎の魔法陣をペンで描き、それを別の紙にそれぞれ分解して描く。分解された魔法陣は計算式や文字に置き換えられ、内容が明確化される。

 それに新しい詠唱がかみ合う様に、アスカラド式の基礎魔法陣を元にして弄っていく。


 鑑定や解析系のスキルが有るので調べ事には向いている。詠唱や術式を弄くっては繋げて解析していく。トライ&エラーで調べたりもするのだ。


 繊細な作業だから神経を使うし目も疲れる。更には頭も使わなければならない。


 分かっていた事だが、これは時間が掛かるだろうな~。




 昼過ぎになったところで勉強を中断する。やはりそれ程進まなかったが、暇が出来た時に少しずつやって行けばいいだろう。


 服を私服に着替えて借りていた書籍を図書館に返却しに行く。

 今まで読んでいた物は大体憶えたし、暫くは基礎だけで応用編が必要になったらその時にまた借りれば良いだろう。




 書籍を返した帰りに適当な食堂に寄ったら偶然キャメルに出会った。


「あれ? おーい、セージ。こっちこっち!」


「ああ、今行く」


 先に気が付いたキャメルが2人用のテーブルから身を乗り出し、大きく手を振り呼び込む。

 周囲の客を気にしない、その大げさなリアクションを取れるのはある意味美徳だな。


「偶然だね、セージ。よくここには食べに来るの?」


「初めてだよ。図書館に行った帰りでね。

 たまたま寄ったんだ」


「いい目利きだね。

 ここの魚介類料理は絶品なんだ。絶対美味しいから食べて」


「はいはい。分かりましたよ」


 キャメルに勧められるまま、スズキのムニエルと、付け合せのアスパラガスとニンジンのソテー、魚介類を使った海鮮スープを注文した。



 キャメルが自信を持って進めるだけの事はあり、凄く美味しかった。


 スズキはアッサリしていたのに舌に残る味わいで次を口に入れたくなる。新鮮なアスパラガスとニンジンは瑞々しさを閉じ込めていて噛めば噛むほど甘みが出てくる。海鮮スープは様々な魚のツミレやエビに貝柱と色々入っていて、しかも全てがプリプリとした食感を醸し出している。スープの方も魚介類のダシがしみ込み、まろやかでいて爽やかな味わいを出している。 

 これならまた食べに来たくなる味だ。



 キャメルも料理を一口放り込む度に、至福で顔をだらしなくしている。


 嬉しく楽しい食事で気分が良くなったところでキャメルに話し掛けた。


「キャメルは何していたんだ? 買い物か?」


「そうなの。まあ買い物はこれからなんだけどね。さっきまではメリンダと劇を観に行ってたんだ。

 メリンダは用事があったらしくて劇が終わったら直ぐに別れちゃったんだ。だから1人で服でも買いに行こうとしてたんだ――」


 確か有名な劇団が来ているのだったな。内容は全然知らないけどエレーヌちゃんが行きたいと言っていたな。


「――そうだ! ねえ、買い物に付き合ってよ。1人の買い物は寂しいと思ってたんだ」


「……買い物か。……良いよ、どうせ今日はする事ないし。

 さっきまで魔法の勉強をしていたから疲れてね。いい気分転換になりそうだ」


「やったー! そうと決まれば急ごう!

 いろいろ見て回りたかったんだ~」


 キャメルは残り少なくなった料理をかき込むと急いで会計を済ませ、俺の手を取って走り出した。


「ちょ、そんなに急がなくても……!」


「何言ってんの!? 時間はお金に変えられない大切な物なのよ! つまり、時間が経てば良い物から無くなるのよ!!」


 時は金なりですか。しかし、微妙に使い方がおかしいですよキャメルさん……。良い物が無くなるって……。




 キャメルに連れて来られたのは女性服の専門店だ。しかも少々値段が高めの物が地球のブティックに近い店内構造だ。服やズボン、スカートなどがたたまれていたりハンガーらしき物に掛けられていたりしているし、店内の奥には更衣室らしき物まで在る。

 店内の広さも今まで見て来た服屋と違い、奥行き10メートル×横幅5メートル程はありそうな広さだ。しかも2階建て。


 さすが女性服専門店なだけの事はある。どこの世界でも女性の服好きは変わらないな。

 それにしても、この店には1つ弱点がある。それは――店内に女性しか居ない事だ。


 この店に男性が来る事が珍しいのか、好奇の視線があちらこちらから寄せられる。その目に嫌悪が籠められていないのが不思議でならない。



 いくらこの世界の男女がオープン気味でも、必要な場所(風呂など)以外で肌を晒す事は殆どない。それぐらいの情操教育は行われている。店に在る更衣室でその辺の事は分かるだろう。

 それに下着類を売っている店ではないので気にしすぎかもしれない。


 それでも、女物の服類しか扱っていない店に、男が来る事は気にならないのだろうか?

 俺は肩身が狭い思いに苛まれているのに……。



「俺は外で待っていた方が……」


 一応キャメルに提案してみたのだが、不思議そうな顔を浮かべるだけで俺の意図が通じていない様だ。


「どうして? セージが外に行ったらわたし1人になっちゃうじゃない。

 そうならない様に一緒に来たんだから、選ぶのも付き合ってよ」


 そうですね。気にならないのですね。…………はぁ~。


 思考が諦めの境地に至ったところで俺も気にしない事にした。付き添いで来ているのだ。しかも女性同伴でだ。後は一緒に歩いて会話を続けるだけでいいはずだ。



「これなんかどうかな? ちょっと派手かな?」

「……かなり派手だと思うよ」


「じゃあ、これは? シックでいい感じ」

「それは落ち着きすぎじゃない? と言うか、それはシスター服だと思うなだが……。

 キャメルならもっと活発っぽいのでもいけるよ」


「なら、これならどうさ!」

「ああ、それなr――ちょっと待て! 背中から尻まで丸見えじゃないか!? 活発と露出は別物だ!」


「もう……じゃあ、これならどう?」

「――――もう、何が普通かそうじゃないか分からなくなって来た」


「役に立たないな~。じゃあ……あれでいっか。あれの試着してくるね」

「……いってらっしゃい」



 なんだこの店は。ネタ服しか置いてないのか?


 よく見ればそんなネタ服は一部しかないのだが、キャメルはそんなネタ服ばかりを狙った様に選んでいた。


 あの子は大丈夫なのか?

 その……色々と……。



「どうかな?」


 試着室から出て来てその場で1回転。Tシャツみたいな物にショートパンツといたって普通の物を着て来た。……最初からそういった物を選んでよ。


 最近綿の生産が増えてきたと言っていたので(九話の雑貨屋店主から)、様々な服などが作られているみたいだな。

 一部では俺の世界でも着られる様な物を販売している。


「うん。良く似合っているよ」


「えへへへ、良かった! じゃあ、次行ってみよー!」


……そうだよね。直ぐに終わるはずがないよね。



 それから10数着の試着を終えると次の店に向かう事になった。


 2軒、3軒とはしごして合計40着ぐらいの服を試着しただろうか? 3軒目でようやく終了した。服は2着しか買わなかった様だが……。


「あ~、楽しかった! 次は――」


「ちょ、まだ行くの?」


 さっきこれで終わりと言っていたじゃないか……。


「あっ、服じゃないよ。次は防具を買いたくて」


「防具? 新しいのを買うつもりか?」


「うん。せっかくセージに強化してもらったけど、元の防御力が低いから新調しようと思って。

 それで、セージには悪いけど新しいのにも金属の糸で強化してもらえる?」


「お安い御用だ。

 買いたい物は決まっているのか?」


「うんん、まだなの。こっちもセージの意見を聞きたいな」


「了解。

 店はキャメルに任せるぞ」



 キャメルの防具――服は青の迷宮20階層で祝福品として獲得した物らしい。浅い階層の祝福品でよく50階層まで行ったものだ。

 キャメルに聞いたところ、良さそうな防具が見付からないし俺に強化してもらったからまだ行けると思ったらしい。だが、先日のキラービーから攻撃と毒を貰った所為で考えを改めたらしい。


 改めるのが遅い気がするも、おっちょこちょいの気があるキャメルだからと諦める。必要だったらその都度皆で指摘すればいいだろう。




 キャメルに連れられ訪れた防具屋は新しい感じの店だ。ここ数年で出来た様だ。


――カラン~……コロン~……


「いらっしゃいませ~」


 店内も小奇麗で、所狭しと布や皮の防具が陳列されている。どうやら比金属製の防具を扱う店の様だ。

 奥のカウンターにはそこそこ歳のいった男性が座っている。


「どうする? 俺達で探す? それとも店主に聞いてみる?」


「う~ん、沢山有って分からないから聞いてみよ。その方が早いっぽいし」


 値札には適正職業や妥当だと思われるレベル、付与されている魔法効果などが記載されている。

 例えば手じかに有った服は『孤独な闘着:格闘スキルを獲得出来る職業:青の迷宮60階層に到達している者:付与されている魔法は、気配遮断、回避時素早さ1.6倍:値段9万ソル』と、結構細かく書かれている。


 しかし、陳列されている防具の数が多くて大変そうだ。キャメルの言う通り聞いた方が早いだろう。


「すみません」


「はい、本日はどのような御用でしょうか?」


「魔法使い系の防具、主に服系を選んでもらえないでしょうか。

 防御力などは青の迷宮50階層を越えたぐらいの物で」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」


 俺のチョイスを聞いて店主は防具を取りに行った。


 魔法使い、魔道士、精霊使いなどの職業は装備が似通った物が多い所為で、魔法使い系などと言えば、適正装備を選んでくれる。

 こう言った細かい事も自身の情報を隠すのに役立つ。



 さほど時間を掛けずに店主は最初に3つ、次に2つと防具を持って来た。


「お客様のご希望にそう品ですと、こちらの商品になります。

 詳細がお知りなりたいのでしたらお呼び下さい」


 俺が3つでキャメルが2つ持ち、カウンター横に在る机に移動した。


 そこで値札の詳細を見ながらも、合成して出来た鑑定スキル『一目瞭然』を発動させ詳しく調べる。



――結果はあまりおもわしくなかった。


「――どれもそこそこの品みたいだけど、"これ"と言った物はないね」


 せっかく出してもらったが、この店で扱っている防具はキャメルには合わない。


「他の店に行こ?」


「そうだな。

 すみません、俺達には合わなかったです」


「――そうですか……。またのおこしをお待ちしております」


 店主に防具を返し、次の店を探しに行く。




 何軒か同じ様な店に顔を出したが、どれも今一ピンと来ない。


 そこで、キャメルに指針となりそうな物がないか聞いてみた。


「――う~んっと、……防御力の高い物かな?

 ほら、わたしが軽い装備を身に着けても攻撃を避けられないでしょ。だから攻撃に耐える方向性で行こうかな~って」


 ふむ。それも一理あるな。

 だったら――


「鎧系の防具も探してみる? 確か数は少ないけど魔道士用の物もあったはず」


 俺がアトレス用の合成素材()を探している時に見掛けた事がある。それならキャメルの希望に適う物だろう。


「それ良さそう! それを探しに行こうよ!」


 こうして一路、服系防具を諦めて鎧系の防具を探す事となる。





――――2時間掛けて探し回ったが、やはり数が少ない事が災いし、適切な物が見付からない。

 高性能過ぎてお金が足りないとか、貧弱過ぎて今装備している物の方が良かったなんて物まであった。


「見付からないね……」


「そうだな。この際、服系の防具でもあれば気が楽なんだけどな」


「そうだね……」


 困ったな……。あまりにも見付からないからキャメルが落ち込んじゃっているよ。


 暫く2人で並び無言で歩いていると、『魔法の品取扱店』の看板がひっそりと立っている店を見付けた。


「キャメル、あの店に行ってみない? 魔法の品だから防具も有るかもよ?」


 俺は店へ指差しながらキャメルに問い掛けた。


「……うん。あそこに無かったら最初に行った店の防具を買いに行こ」


 キャメルに元気は戻らなかった。ここに無かったら本当に最初ので妥協しかければならないな。



 ドアベルすら無い扉を開けて中に入る。


「いらっしゃ~い! さあさ、そんなところに立ってないでこっちに来てよ~!」


 店内に入ると薄暗く、大量の品が雑多に散らばっている店とは思えないほど陽気で、場違いな声がを掛けられた。


 声に釣られ、散らばっている物をかき分け声の方へ進んで行くと、えらく可愛らしい少女が店番をしてた。


 その少女の顔立ちからして15歳ぐらいだろうか? しかし"見た目"はもっと幼く見える。それは少女が、ピンクでフリルが過剰に付けられたスイートドレス――所謂ロリータドレスを着ているからだ。

 更に幼く、12歳? ぐらいに見えてしまう。


 しかし、どこかで見た顔の様だが……。



「『お客さんいらっしゃい』店にようこそ! なんでも揃えちゃうよ~!」


…………すっげー名前。センスが輝きすぎて理解不能だ。


 隣に居るキャメルも目が点になっている。

 まぁ、しかたない事だが……。


「え~と……お嬢さんに聞いても分かるかな?」


「やだ~、お嬢さんだなんて~。そんな嬉しい事言ってくれる子にはサービスしなくちゃね!」


……いや、質問に答えて欲しいのだが……。


「ああ、質問ね? 大丈夫よ。だってピネットがここの店長さんなんだから~、なんでも聞いて!」


 少女は自分を指差し「ピネット」と言ったからには、この少女が店主――店長なのだろう。

 どうやらピネットも探索者、あるいは元探索者だった様だ。


「それなら、青の迷宮50階層以降で使える防具は有りますか? 物は、魔法使い系の職業で装備出来る鎧だと嬉しいけど……」


「まかせなさ~い! 直ぐに持って来るよ!」


……あれ? 有るのかな?


「キャメル、どうやら有るみたいだよ」


――――? どうしたんだ?


 返事がないのでキャメルの方に振り返ると、ピネットのテンションにやられたのか唖然としているキャメルが居た。


 でもな、キャメル。お前もたまにピネットに近いテンションを振り撒いている時があるんだぞ。


「おーい、シッカリしろ」


「――っは! あっ、だ、大丈夫」


 今一大丈夫に見えないが、まぁ良いだろう。


「どんな物か見るまで分からないが、とりあえず置いてはある様だ」


「うん、良かったよ」



 そんな感じで話していると、店の入り口から扉の開く音が聞こえた。


 客でも来たのかと振り返れば、なんとそこにはフィービーが立っていた。


「あれ? フィービーじゃない。

 2日ぶり~。元気してた?」


「元気だった。

 2人はワタシに用がある?」


「いや、キャメルの買い物に付き添っているんだ。キャメルが新しい防具を買いたいらしくてね。

 フィービーもここに買い物に来たのか?」


 ここは魔法の品取扱店だから、それ系の物が色々ありそうだもんな。


「違う。ここはワタシの祖母が経営している店。

 ワタシは手伝いに来た」


――――はい? え? 祖母の店? それってピネット? え?


 いやいやいや、そうだよな。元探索者なら見た目の年齢が当てにならない事は分かりきった事だ。スイートドレスだってこの世界のお嬢様なら普通に着ていそうな物だしな。名前のセンスは、神だって不思議な名称を付けているんだから気にする事ないし。フィービーと似ても似つかない言葉遣いも、それこそ個人の自由だしな。


「一応聞いておくけど、ピネットがフィービーの祖母で、赤の迷宮300階層に行った『賢者』なんだよね」


 再確認の意味を籠めて尋ねれば――


「うん。その人が祖母」


――間違い様のない回答が出てしまった。



「お待たせ~! どうどう、これなんか良いんじゃない!?」


 そして、"元凶"が現れた。


「あら? フィーちゃんが居る~。いらっしゃ~い」


 ピネットは尽きぬテンションでフィービーにも話し掛けている。


「掃除に来た。

 それと、この2人は新しく入ったワタシの仲間」


 フィービーは俺とキャメルの間に入って、俺の左手とキャメルの右手をそれぞれの手で抱え込み、ピネットに紹介してくれた。


「ここに来たのは偶然でしたが、丁度良かったです。

 フィービーと一緒に迷宮を探索しているセージです。よろしくお願いします」


「あわわ、わたしはキャメルです! フィービーにはいつもお世話になっています!」


 2人で自己紹介すると、ピネットはさっきまで浮かべていた笑顔をより破顔させた。


「あらあら、セーくんとキャルちゃんは、フィーちゃんのお友達なのね!」


「いえ……、仲間――パーティを組んでいるのですが……」


「……? だからお友達でしょ?」


 ダメだ。この人の思考回路が分からん。

……もう、それでもいいや。


「フィーちゃんをこれからもよろしくね!」


「はい」


「はい! 大切な仲間ですから!」



 さて、ピネットと軽く話してからメインの防具を見せてもらった。


 色は全体的に黒で、服の上に軽く金属板で補強している鎧だ。金属板は胸の位置と腰周り、肩に当てられている。雰囲気からして前衛などが身に着ける物より貧弱にみえる。

 魔法使い系の職業でも職業用補正が付く鎧なだけはあって、魔道士のキャメルが着ても違和感がなさそうだ。


 付与されている魔法も面白い物で、足を動かさい間は障壁(弱)が張られるのだ。


 壁役の前衛でも使えそうなモノだが、足を使って避ける事を除外した者なら中々使えるな。キャメルは補助魔法や魔物へ妨害――弱体化させる魔法を遠距離から使えるので、動かなくても良い。

 後は手甲か小さめの盾を装備すれば十分だろう。


 ちなみに、魔道士の職業補正に手甲や盾は入らない。扱いやすくはならないので自力で動かし方を学ばなければならない。

 ちなみにちなみに、職業と装備する場所で補正内容が少々変わったりする。グローブや手甲だと器用さが上がる。魔道士場合は、服や鎧を着ると魔力が底上げされる。



「これってキャルちゃんが着るんでしょ? ピネットがサイズ合わせしようか?」


「大丈夫です。セージがやってくれますから。セージってなんでも出来るんですよ」


「いいな~。モッくんは料理も作れないんだよ~」


 モッくんとはピネットの旦那さんで、本名はモーリスと言う……蛇足ですね。


「そろそろ帰ろうか。

 フィービーの掃除を邪魔しちゃいそうだし」


 途中からフィービーは散らばった品を掃除していた。しかし、それはどちらかというと建前で、先程からキャメルとピネットの会話が止まりそうにないのだ。

 いつまでも話しているのに付き合うのは流石に勘弁して欲しい。早々に立ち去るのが吉だ。


「そうだね、お仕事の邪魔にもなりそうだし、おいとまさせていただきます。

 今日はありがとうございました。楽しかったです」


「あ~ん、寂しいけど我慢する。

 また来てね~……」


「ありがとうございました。また来ます。

 フィービーもまた明後日ギルドで」


「うん。またね」


 悲しそうなピネットと、埃にまみれた格好の無表情なフィービーの2人に見送られ『お客さんいらっしゃい』店を後にした。




 一度俺の泊まっているトイボックスに来てもらい、鎧のサイズ合わせをさせてもらった。


 色々調整したり、強化したりでこの日の残りを使ったが、翌日には出来上がった。


 これから暫くはキャメルも装備に頭を使わなくても良いだろう。



この話を書いている時デジャブった。しかも内容が、投稿して感想が来たのだけど、ある致命的な矛盾が発覚して大幅に話の練り直しをしなくてはならなくなった、と言う物だ。

マジで愕然としたね。何回も矛盾がないか調べたけど見付からなかった。だからと言って無いとは限らないのが恐ろしい。

どうかそんな事になりませんように。


読んでくれてありがとう。次回もお楽しみに!

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