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その青い世界で第一歩  作者: nono
第二異世界―アスカラド― 白の迷宮
16/25

十五話 白の迷宮の後始末


 転職は終わったが、体の違和感が拭えない。


 体が作り変わったのが分かる。力が充実しているのも分かる。5感が鋭敏になったのも分かる。気や魔力、霊力なども増加したのが分かる。

 しかし、あまりにも変わり過ぎた感覚に意識が追いつかず、全身を動かすのも辛い。体の痛みも歩くと電気の如く全身に走る。


 違和感と痛みが感じる内は歩かない方がいいな。

 祭壇に腰掛、痛みが引くのを待つ。


 神様達の声は既に聞こえない。そのおかげで、静寂が支配するこの部屋は落ち着くのに役立っている。

 こういった時の為に転職は予約制になっているのだ。予約は1時間なので、ここに時間一杯居る事にする。



 休んでいる間に1つ思い浮かんだ事がある。新たに増えた"職業"の事だ。


 現在把握されている転職数は82種。これは第1次職から第3次職までの数だが、ギルドは全てを網羅している訳ではない。

 今回の様に、俺が転職した『全てに至る道』は知られていない。しかも、他にも50階層を攻略した時の状況で増える様な事も言っていたので、まだまだ増えるだろう。


 この事をギルドに報告しようと思っている。

 新しい"職業"の事は言わなくても、どんな状況で入手出来たかは教えても良いと思っているのだ。ついさっき話したばかりだが、何か有ったら話すとも言ったのでレナさんから伝えてもらおう。



 雑嚢(ざつのう)から紙とペンを取り出し、先程聞いた事を要点を掻い摘んで書いていく。



 三つ折にした手紙が出来上がった頃には、体調が良くなってきた。

 屈伸したり体をひねったりしても痛みは落ち着いている。もう、帰っても良さそうだ。



 俺は、ランプの光が支配する"転職の祭壇"から静かに立ち去った。





 部屋と通路を出ると、迷宮出口の方へ進む。


 ギルド内の通路は、円を描き一周していた。今まで通らなかったから分からなかったよ。



 迷宮出口の横を通りギルドの入り口まで戻ってきた。


 受付に居るレナさんは、俺を見付けて安堵のため息と共に、今まで見てきた中でも1番の笑みを浮かべた。


「お帰りなさい。

 無事済んだのですね」


「言ったでしょ。成功させるって」


「ふふ、そうですね。

 それでは、転職の終了を受け付けました」


「はい。

 それで、食事の方は今日で良いかな?」


 そう聞くと、レナさんは目を見開いて驚いた。


「えっ、その話は本当だったのですか?

 それに、体の方も万全ではないと思うのですが?」


「約束したんだからシッカリ果たさないと。

 体も少し違和感があるだけだし、問題ないよ」


「でも……」


「俺に約束を破させる気?

 遠慮なんかしなくてもいいんだよ」


 考え込んでいるが、素直に了承してくれればいいのに。俺は引く気が全くないのだから。


「……はぁ~。セージ様の顔を見て悟りました。何を言っても無駄だと」


 その通り。こう言う時は諦めが肝心だよ。


「……何を考えているかは分かりませんが、少しムッとしますが……まぁ良いです。

 それでは、折角なのでご同伴致しますね」


――ギク


 鋭い。

 『嘘感知』スキルでは思考を察する事が出来ないから、女の勘で察知したのかな?


 こわい おんなのかん こわい


「私の仕事が終わるのは6時ですから、7時に待ち合わせでよろしいですか?」


 店を決め、身支度を整えるのに……間に合うな。


「そうしよう。

 待ち合わせは、北区画入り口に7時で」


「はい。分かりました」


「それと……」


 話が終わったので、例の手紙を出す。


「これをギルド長に渡してくれる?

「追加です」と伝えてもらえば分かると思うから」


 その言い回しで、レナさんは手紙が何なのか分かった様だ。

 両手でシッカリと受け取り、表に書いてあるウォーレンさんあての名前を確認している。


「承りました。

 確実にギルド長へお渡しいたします」


 レナさんは、綺麗なお辞儀と共に預かってくれた。





 高級料理店を探し、北区画まで足を運んだ。


 北区画は高級住宅地のある場所だが、それは奥の方だ。

 中央区に隣接している場所には、行政区や図書館などの公共施設も並んでいる。更に進むと、貴族や豪族、裕福な探索者や商人が通える店もある。



 そこに建ち並んでいる店は、どれもが装飾などの外装に気を使っていて、絢爛豪華の中に落ち着きを窺わせる店構えだ。


 その中から1つの店を選んだ。

 豪華さはそこまで見られないが、店構えの統一感は中々のものだ。



 扉を開け中に入れば、ビシッと決めた服装のウェイター立っていた。


 ウェイターは俺の格好を見た瞬間眉をひそめたが、直ぐに元のアルカイックスマイルを浮かべる。


 確かに俺の服装はラフだ。迷宮に潜る訳ではないので鎧は着ていないが、その姿でこんな高級店に入れば冷やかしだと思われるだろう。


「ようこそいらっしゃいました。

 "カナトウム"には、どの様なご用件でいらしたのでしょうか」


 一応用件は聞いてもらえたな。まぁ、こっちは客だから行き成り追い出される事は無いだろうが。


「7時過ぎにこの店で食事をしたいんですけど、席は空いていますか?

 人数は2人ですけど」


「ご予約ですね。その時間は空いております。

 ご予算の方はいかほどで?」


 予算か……どれ位だろう?


 俺は、財布を開け中身を確認した。


 お金自体は結構稼いでいるし、武器や防具にお金を使わない。道具類も高価な物は最初の頃に買った、魔具や魔術用の触媒ぐらいだ。


 だから、かなりの金額を稼いでいて、銀行にもたまに預けているぐらいだ。


 財布の隙間から見える金貨や銀貨の群れは、ウェイターの「お前は金を持っているのか?」といった疑惑の視線を正した。



 俺もお金を数えて、かなり高くても大丈夫なのを確認した。


「え~と。ここの一般的な料理の値段はどのくらいですか?」


 ぶっちゃけて聞いてみた。


「標準コース2人分で2万ソルになります」


 小金貨2枚、20万円相当か……少し高い気もするが妥当な所かな?


 でも、引くくらい高い料理を出すと言ったからには、もっと上乗せしよう。


「じゃあ、2人分で4万ソル分のコースをお願いします。

 あ、ドレスコードはありますか?」


「畏まりました。

 服装の方はフォーマルな格好をして頂ければ助かりますが、場違いでなければどの様な格好でも宜しいです」


「分かりました。

 それじゃあ、7時過ぎに」


「お待ちしております」




 それからは大急ぎだった。


 なんせ、良く考えれば高級料理店に行ける様な服を持っていないのだ。

 直ぐ服屋に寄り、仕立ての良くそれなりに見栄えのある服を購入した。


 俺は気にしないが、レナさんの顔に泥を塗るような事はしないようにしなければ。

 レナさんに服の事は言っていないが、この世界で生き、町に住んでいるならその事も分かっているだろう。



 裾合わせが完了する間に宿へ戻り、転職時にかいた汗を洗い落とす。


 適当な服を選び、不必要な物は全て置き、再度服屋へ直行。


 服屋で購入した服に着替え、着て来た服をトイボックスに届けるよう頼む。



 時間前に何とか約束の場所へ着く事が出来た。


 多少身奇麗に出来たので、この区画に居ても変な注目を浴びる事はなさそうだ。



 しばらく待つと、俺が泊まっている宿のある東通りから、綺麗に着飾ったレナさんが歩いて来た。

 艶やかな蒼の彩色が浮き立つドレスを着た姿は、歩いている人達の足を止め、目を釘付けにさせている。


「お待たせしました」


 レナさんは周りからの注目に、少々恥ずかしがっている様だ。微かに頬が赤みを帯びている。


「いいえ、時間ピッタリですよ。

 それにしてもドレスが良く似合っていて綺麗ですね」


「そんな……。

 セージ様も……服に着られている感じ?」


 うっ。貴方も直球で来ますか……。


「は、ははは。

 ドレスコードの事を忘れていて、急遽買ったものですから……」


「あ、すみません……」


「いいですよ。

 実際こんな服は着慣れてませんから、そう見えても仕方ないですよ。こんな服着ているだけで体がむず痒くなりますよ。

 それと、ここはギルドでは無いんですから、(さま)はなしで、口調も軽いものにしません?」


 少し沈んだ表情も、俺の苦笑い交じりの軽口で修正させる。

 ついでに、口調の修正も。間違っても店内で(さま)付けされでもしたら、確実に変な目で見られるか、ご主人様と使用人なのかと勘違いされそうだ。


「はい、出来るだけ頑張ってみます」


 いや、頑張るほどの事も無いけど……まあ良いか。


「それで、これから行くお店は何と言う料理屋ですか?」


「通りを少し進んだ場所にある、カナトウムって料理屋だね」


「えっ! あ、あのお店ですか!?

 む、無理ですよ! 絶対行けませんよ!」


 おおぅ。ギルドで見た驚きより更に凄い。しかも、口調が乱れるほどだ。


 まぁ、一般人からすればあの料金は法外だよな。



 しかし――


「引くほど料金の高い店に連れて行くって言ったでしょ。

 それを果たすだけだよ」


――約束した事を引っ張り出して押さえ込む。



 言われた事を思い出したのか、表情をコロコロ変えて戸惑っている。


「…………はぁ~。本当にセージさm……さんは強引ですね。

 今日は連敗しましたが、次はこちらからやり返しますからね。

 それでは、エスコートをお願いします」


 口では諦めたと言っているが、表情は別だと言っている。

 これが、顔は口ほど物を言う、か。……あれ? 目だっけ?


 今日1日で、レナさんの様々な顔を見させてもらった。これだけで少し満足だが、メインイベントはこれからだ。


「それじゃあ、行きますか」


「はい」




 この日の夕食は大変有意義な、心落ち着くものとなった。


 え? ここまで引っ張っておいてそれは無い? 詳細が知りたい?


 女性との語らいを聞きたいだなんて、それは野暮ってもんでしょう。


 ただ、楽しい夕食会だったとは言っておきましょう。





 次の日起きて武具を見てみると、ソコソコ修復されていた。

 このまま置いといても明日には完全修復されているだろう。もしくは、吸収素材があれば更に早く、今日中に直るだろう。



 この日は、朝食時間ギリギリまで鍛錬に性を出した。


 いくら俺がどんな状況でも戦えるように修行を積んだとしても、骨の髄まで体を作り変えられたら、体の"慣らし"が必要だ。

 横着したら、俺の命が危険に晒される。だから基礎が大事なのだ。


 一つ一つの動作を確認し、大げさに動いたと思えば慎重に、細やかに動いたと思えば大胆に、と言った具合に常に緩急を付けて鍛錬にはげむ。


 体を動かして分かったのだが、身体能力はそこまで上昇していない。


 やはり、転職した職業が職業なので、転職ボーナス補正は余り無い。

 神様達も言っていたが、全ての職業を得た事になるが、極める事は難しいだろう。職業に付いていない者よりかは高いが、職業に付いている者よりは低いのだ。全てに対してが。


 しかし、スキルによる能力補正率は少しだが上昇している。その他にも『全てに至る道』特有のスキルや、職業能力が得られるかもしれない。




 朝食後は、休憩を挟んでから本日1番の大仕事になるだろう作業に取り掛かる。


 それは、回復薬の調合だ。


 回復薬には幾つも種類が存在していて、一般的に流通しているのは時間を掛けて傷や怪我を治す物だ。その中には、体力を消耗し自己治癒力を高めて治す物と、体力を消耗しないで自己治癒力を高めて治す物がある。

 体力を消耗しない物はやはり高価になるが、探索者や戦闘時に使うにはこちらの方が人気だ。


 他にも高位回復薬があり、これは使用した瞬間に怪我が癒え、腕を切断されようと生えてきたりもする。

 死んだ者は生き返らせられないが、腹に大きな穴をあけられても、即死でなければ完治させる程の威力をもった物まで存在する。1瓶1回分で10万ソルもしていたが。


 名称的に、効果の低い回復薬は治療薬と言ってもいいし、効果の高い物は再生薬と言ってもいいが、今ではどちらとも回復薬と統一されている。

 回復効果の低い物は透明に近くなり、効果が高くなるにつれ回復薬の色は濃い緑になる。体力を消耗しない物には瓶に紐が巻かれ回復薬の差別化が施されている。


 他には回復軟膏もあり、これは紐の巻かれて無い透明な回復薬と大体一緒だ。

 軟膏の方が回復に時間を食うが、昨日の事で分かる様に俺の自己治癒力は格別に高いので、効果時間が長く何回分も使える軟膏を今回作ろうとしている。

 ついでに紐付き緑回復薬も作る予定だ。


 費用対効果は微妙そうだが、白の迷宮で手に入れた素材と買った素材を使って、治癒効果の高い回復軟膏などを作る。



 用意するのは、釜、ビーカー、天秤、漏斗、濾す紙、乳鉢、大理石の台、切ったり潰したりする道具、純水、聖水、薬草、様々な魔物の肉体、出来上がった物を入れる容器。


……魔物の肉体や体液を使った回復薬など、一体誰が始めに考えたのだろうか? 絶対最初に作った奴は飲まなかっただろう。



 部屋で火は使えないので、魔術で水を温めたり冷やしたりする。物を乾燥させるのも魔術だ。


……こうやって物を作る事が多いので、工房でも借りようかな?



 作業は、それぞれの素材から適切な量をはかり、別々に薬となる成分を純水へ抽出する。出来上がった触媒を、薬の成分が拡散したり変質しない様に気を付けて濃縮させる。

 濃縮限界まで行ったら、適切な順番で濾しながら1つに混ぜ合わせる。


 出来上がった物を軟膏になるよう手を加えたら殆ど完成だ。


 このままなら、多少良く効く"薬"止まりだ。魔具(マジックアイテム)としての"回復薬"にするには、ここでもう一手間加える。


 魔術で"増幅"を付与するのだ。市場に出回っている回復薬もこうして作られている。

 ここまでやって本当の完成だ。


 変質を避ける為に缶の密封容器に保存すれば、怪我にもよるが約40回分の回復軟膏になる。

 しかも、高品質な素材を使ったので、市販の物よりか効き目は良いだろう。



 次は紐付き緑回復薬を作るが、作業は軟膏の時とそれ程変わらないのに、素材は一気に高価な物に代わった。


 回復軟膏作成に使った器具を洗浄して、回復薬作成の準備をする。


 保存する時は詰め替え用として大きな瓶に入れるが、今回のは直ぐに使える様に1回分を1瓶に詰める。


 回復薬は液体だが、傷口に振り掛けても回復効果が発揮する。しかし、基本は飲む物なので、飲む方が良く効く。

 だから、振り掛けても飲んでも大丈夫な量を1回分とする。


 瓶は割れ物だし軟膏より量が多くて嵩張るが、効きが早いし掛けても飲んでもいいのは魅力的だ。瓶にする理由は、缶だと変質しやすくなるのだ。


 軟膏より時間を掛けて6瓶の回復薬を作った。



 最後に、解毒薬などの状態異常解除薬を作る。


 今の俺には魔具のおかげで必要無いが、青の迷宮では特殊な攻撃を行う魔物も多く出てくるので、万が一の為に作っておいて損は無い。


 解毒薬等は、回復薬より更に複雑だし、繊細な作業工程になる。


 解毒薬は、効果が高くなればなるほど強力な毒に対抗する事が出来る。だから、種類の方は何でも解毒出来る。毒の威力が高くても、効果が低い解毒薬で毒の進行を低下させられる。


 色々材料を変え、手順を変えて解毒薬等を作っていく。



 7時間掛けて、回復軟膏1つ、紐付き緑回復薬6瓶、解毒薬2瓶、麻痺解除薬2瓶、幻術解除薬2瓶を作り上げた。




「う~ん。疲れた~」


 長時間の作業に神経を使い、心も体も疲労した。しかも、部屋中が素材や薬の臭いに汚染されてしまったよ。


――コンコンコン


「セージさ~ん。洗濯物と水差しを持ってきました~。

 外に置いときましょうか~」


「ちょっと待って。今開けるから」


 扉の外には、エレーヌちゃんがカゴ一杯の洗濯物を台車に乗せて立っていた。水差しも台車のすみに置かれている。


「うわっ。何ですかこの臭い」


「あぁ、ごめんね。

 さっきまで薬を作っていたから、その臭いがこもっちゃって。

 今窓を開けるから」


 刺激臭とまではいかないが、嗅ぎ慣れない臭いにエレーヌちゃんは鼻を摘まんで顔をしかめている。


 俺は直ぐに洗濯物を受け取ると、窓を全開にした。


 エレーヌちゃんは、俺が窓を開けに行こうとした時には扉の影に退避していた。


「う~、くちゃい」


「ホントにごめんね。

 俺はずっと作業してたから、臭いに慣れちゃってたみたいだ。気が付かなかったよ」


「うん、良いよもう。

 えっとね、ギルドから荷物も届いたんだけど、今取りに行く?」


「ギルドから?(……もう集めたのかな?)

 分かった。今から行くよ」


「はーい。じゃあねー」


 エレーヌちゃんは台車を押して足早に去っていった。


…………そんなに臭かったのかな?




 アンナさんから荷物を受け取り部屋に帰る。


 荷物は木箱で、大小2箱の簡素な作りだ。


 最初に小さい方から開けてみたら、中には3つの魔具が間仕切りで区切られて入っていた。


 まず、1番大きな魔具から取り出す。

 魔具には説明書らしき紙が添えられていた。読んでみると、この大きな魔具は"封鎖結界魔具"の効果を内蔵した、より高性能な"城壁結界"魔具と書いてあった。


 形状は、魔石を中心に1つと、周囲を囲むように4つ置くようになっている。燭台みたいな作りだ。


 機能は、中心の魔石が全体を統括するのと、魔力供給を司っている。

 周囲の1つ目が、魔法やスキルから室内を隠す"封鎖結界"。2つ目が、魔法やスキルを使わないで、物理的に室内を探る者から守る"五感遮断結界"。3つ目が、外敵から室内への攻撃を防ぐ"防御結界"。4つ目が、室内の空気を清め、精神を沈静化させる"浄化"。

 これらが、全て1つに纏められている。


 全機能をオンにしても耐えられ、20日は魔力がもつほどの魔石を使っている。

 俺が今持っている魔石は合わないだろうな。魔石の魔力密度を濃縮しても2、3日保てば良い方だろう。しかも同時に機能を開放すると、石の密度が足りず確実に魔石は砕ける。


 凄い物をくれたもんだよ。"城壁"は言いすぎかもしれないが、的を得た呼称だ。


 直ぐに浄化魔具のスイッチを入れておいた。丁度良いタイミングの物だったな。



 次のも魔石式魔具だ。

 説明書には"警報"魔具と書いてある。


 小ぶりな魔具で、魔石の周りを覆う程度しかない正立方体の形状をしている。

 スイッチはこの魔具をどこかに置くと入る。魔石の燃費は良く、スイッチが入っていても1ヶ月は保つ。スイッチを切りたい時は魔石を抜くしかないようだ。


 この魔具に俺を登録すると、半径10メートル以内に何かが近づくと音が鳴り、接近される毎に音が大きく鳴る。


 名前通り"警報(・・)"魔具だな。


 これは登録だけしておいて、雑嚢に入れておく。面白い魔具だが、寝ている時以外は使い道が無いかな? 10メートル以上に俺の探知範囲が広がっているからな。警報が鳴るより早く気が付くよ。



 最後は魔石式ランプに似た形状の、健康状態を調べる魔具だ。

 名称は"異常探知"魔具。


 身体に何か異常があるなら、この魔具が光って教えてくれるようだ。ただ光るだけなので、治療の為には医師に診てもらわなければいけないらしい。


……これは、役に立つのか?……まぁ異常が分かるだけでも、早期発見で治療がしやすいかもしれないが……。



 全体的に見れば、良い物だと思う。特に城壁結界魔具は、転職の追加情報が効いたのか、より高性能な物だ。



 次は、大きな木箱を開ける。

 中には武器や防具が詰められていた。


 さっそく武具に吸収させてみようと思う。


 武具達は体を振動させて催促している。どうやら、吸収には乗り気の様だ。


 やはり、ハルバートは高性能過ぎてお気にめさなかったみたいだ。

 主に俺の力量不足で……。


 大剣(ネージュ)には、『攻撃力増加』が付与された剣を吸収させる。

 これは、持ち手には違和感を感じさせないが、剣自体の重量を増加させている。剣の重みで攻撃力を上昇させているのだ。


 双剣(カンティー・ノール)にも『攻撃力増加』の短槍を吸収させる。

 ただし、この『攻撃力増加』はネージュに吸収させた物と違い、"鋭さ"で攻撃力を上昇させている。

 同じ付与名称で、攻撃結果も同じになるのに、過程が違う場合もある。


 最後の(アトレス)には、『幻惑』の付与された鎧と、『ブレス遮断』が付与された手甲を吸収させた。

 幻惑は、敵の目を欺き、位置を誤認させる効果を持つ。範囲は1、2歩分でしか効かないので、接近してきた敵の直接攻撃を空振りさせる程度だ。

 ブレス遮断は、龍種の『火炎の息』や『吹雪の息』などの口から吐く攻撃性の息を、体表面に纏った障壁で防ぐ効果を持つ。


 吸収させた武具に関してだが、最初の頃は威力も効果も低くて機能全てを吸収出来た。しかし、今回の様な付与効果を持つ武具は、丸ごと吸収出来なくなってきた。

 今回の場合は良くて5割、悪くて3割だろう。


 それは、俺がジャミスを倒した時に魂を吸収し切れなかった様な感じだ。



 それでも新しい能力を手に入れて強くなり、傷も癒えたのだからコイツらも喜んでいるだろう。


 これで明日からまた探索が出来る。


……俺もデートしたいなー……


さて、異世界で良い思いをしているセージ君への罵倒は、心の中でお願いします。


今回で、白の迷宮編が終わった事になりますね。かなり駆け足気味なのに、設定が散りばめられていたり、くどかったりしたかもしれません。

青の迷宮編ではもっと迷宮らしさを出せるように、頑張りたいと思います。


青の迷宮編を始める前にインターミッション? が入ります。

お楽しみに。

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