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殺人鬼の日常  作者: 小石 汐
ふたたびがくえんにて
27/30

振り出しに戻る

 日が昇ると引き潮のように闇が去ってゆく。影はいくらもあったが、どこか肩身が狭そうで、存在そのものが消えてそうなほど薄くなっていった。

 まだ人の気はない。まだ人の活動する時間ではなかった。遠くから希に車のエンジン音が聞こえてくる程度だった。

 助かったと冬夜は自らの身なりを見下ろして思う。服は破け、露出した肌は出血の痕が生々しく残っている。擦過傷、打撲は数え切れないほど、また左肩から肘にかけての骨が軋む。折れるほどではなくともヒビぐらいは入っているかもしれない。

 無事な右手で、そろそろ出てくるであろう鼻血に備えながら、冬夜は足を進める。一体どこに行けばいいと言うのだろうか――自問しても答えは出ない。それでも足は勝手に進む。それに身を任せた。

 やがて辿り着いたのは、あまりにも当然な答えだった。自宅を見上げ、冬夜は僅かに苦笑を漏らす。凡庸な答えに自嘲しながらも、冬夜は玄関をくぐった。右手は鼻、左手は動かないため、額から流れてくる血を拭うこともできない。シャワーを浴びて、血を流すべきだと思いつつも、足は自室へと向かっていた。今すぐベッドに倒れこみ、身体を休めたかった。

 冬夜は自室の前に立ち、ノブに手を伸ばす。しかし、その手は途中で止まった。人の気配があったのだ。一体誰がと考えながらも開けてみなければ分からない。冬夜の手がノブに触れると、そのまま一気に開いた。

「やあ、おかえり」

 見知らぬ男と夕夏が冬夜を迎えた。青白い肌の男は夕夏を膝に乗せて、まるで人形を扱うように頭を撫でている。光の無い夕夏の瞳を見て、冬夜はため息をついた。昨晩、冬夜に襲いかかった女たちと同じ目だった。

「お前か」

 首謀と対面しているにも関わらず、冬夜は両腕をだらりと下げていた。戦意の無い冬夜に、男は僅かに眉をひそめる。

「西浦くんを殺したんだね」

 男は顔色一つ変えずに言った。それに冬夜は頷く。もはや声を出すことですら億劫に感じていた。目の前に敵がいなければ、即座に眠りに落ちることができただろう。

「よくも僕の血族を殺してくれたね」

「用件は」

 虚ろな瞳で冬夜は尋ねる。蔑ろな扱いをされても、男は気にする様子も無かった。

「簡単な話さ、君にお仕置きしにきた」

「なら、さっさと済ませろよ」

 冬夜は床に腰を下ろして目を閉じる。もはや目の前の男に対抗しうる手段は無かった。西浦との壊し合いで既にボロボロになっていた冬夜は死を覚悟する。

「ふむ、潔いのだね」

 男の言葉に冬夜は答えない。ただ静かに最後の瞬間を待った。しかし、いつまで経っても男は動く気配を見せない。冬夜は僅かに目を開いて、男を見つめる。微笑をたたえた男の青白い顔が映り、冬夜は身震いした。

「我々の目的は君たち脱走者の回収であって、殺すことではない。やむを得ない場合は殺しも可と言われているだけで、抵抗の無い相手を殺してしまっては私が罰を受けかねない」

「なら抵抗すれば殺してくれるのか?」

「その程度によると答えるべきなのだろうね」

 冬夜は俯き、しばし考えてみるが、それすらも面倒くさくなり放り出す。どれだけ考えて答えを導き出しても、事態が好転するとは到底思えなかった。

「勝手にしろよ」

「そうさせてもらうよ」

 男が立ち上がり、ベッドのスプリングが軋んだ。

「一つだけ訊いてもいいか?」

 冬夜が俯いたまま口を開くと、男の足が止まった。

「何だね?」

「最初に向けてきた雑兵……あれは何だ、血族ではないだろう」

「ああ、妹君を心配しているのかね」

「……別に」

「強がる必要はない。妹のことが気になるのだろう?」

「どうでもいい」

「なら何故尋ねた?」

 冬夜は黙る。相手の見透かしたような言動が癪に障った。しかし認めざるを得ない。それらが事実だったからだ。冬夜は目を合わせずに口を開く。

「……ああ、その通り。お前の言う通りだよ」

「ふむ、素直でよろしい。そして心配する必要はない。時間が経てば催眠は解ける。それに西浦くんが亡くなってしまったから、既に男性にかかった催眠は解けているよ」

 そうか、と冬夜は小さく呟く。

「もう質問はいいのかい?」

 男は気前よく質問を促すも、冬夜は答えない。男は冬夜の顔を覗き込んで、ため息をつく。冬夜は既に意識を失っていた。


*


 長机の傍に三つの人影があった。部屋に窓はなく、蛍光灯だけが静かに鳴っていた。

 その三人の中に、冬夜と対面した青白い肌の男もいた。髪をオールバックにしてスーツをまとう姿は、どこにでもいそうな社会人を思わせた。

 やがて彼が口を開く。

「やんちゃだが将来性はあるだろう。逃げ出すタイミングの見極めも良かったし、何より戦闘力が申し分ない。私の血族に勝つぐらいなのだから」

 最高峰の吸血鬼としての称号――真祖と呼ばれる彼は、冬夜のことを思い出す。実際に戦闘を見たわけではないが、それでも真祖が生み出した血族に単独で勝った事実から、冬夜のことを大いに評価していた。

「ただ使いこなすのも難しいぞ。人格を壊して完全に操ってしまえば、彼の持つ判断力などが死んでしまう……だからと言って家族程度の弱味で、彼を抑えきれるかどうかも分からない」

 三人の中で最も体格の良い男が言った。口元に深い皺が刻まれているものの、瞳に宿る光は鋭い。髭が濃く、もみあげと繋がっている。太い腕を組んでいる様からは、まるで野生の獣のような猛々しさが漂う。。

「その辺りは私たちが気にしたところで仕方のない話だ。運営は政府に任せよう」

 真祖がまとめると、髭の男が露骨に顔を歪めた。

「お前が言い出したことだろうが」

「まぁそうだね。ただ気にしたって仕方がないのは事実だろう? それぐらいは分かるだろう、半分獣でも」

 その言葉に髭の男が牙を剥いた。犬歯は氷柱のように鋭く、瞳に宿る光は冷え冷えとしている。低く唸る声は人のものとは思えなかった。

「まぁ落ち着け、俺たちが喧嘩したところで何も解決しないだろう」

 その二人の間に割って入ったのは小柄な男だった。穏やかな口調ながらも、二人は男の言葉を無視できない。口元に微笑をたたえながらも、その男の目が笑っていなかったからだ。

「まぁ……岩永の言うとおりだな」

 真祖が渋々頷く。髭の男も僅かに息を吐き、溜飲を下げた。

「ところで、あいつはどうなった?」

 岩永は思い出したように尋ねた。真祖は怪訝そうに肩を竦めて応じる。

「あいつとは?」

「風切 秀だ」

「ああ……あいつか」

 真祖は顔を歪め、吐き捨てように言った。その様子から捕獲に失敗したことを岩永は悟る。

「あいつは取り逃がした」

 真祖の代わりに答えたのは髭の男だった。彼もまた不機嫌そうに眉をひそめていた。

「あれで、ただの人って言われても信じられないもんだ。俺とこいつで何とか撃退だぞ」

「二人で戦ったのか?」

 岩永は目を丸くして、二人の顔を交互に見やった。真祖は眉間のシワを深くして視線を逸らし、髭の男はあっけらかんとしていた。

 岩永からすれば、相性が最悪と言ってもいい二人が共闘したとは、にわかに信じられないことだった。それだけでなく、この二人を相手にできる秀の戦闘力についても考え直す必要がある――岩永は小さく息を吐いて考える。

「二人でも歯が立たないとでも言うのか?」

「いや、殺せと言われれば簡単な話だ。ただ上の奴らが風切を高く買ってやがるから、どうしても捕獲しろとうるさいんだよ」

 なるほどと岩永は頷く。普通に戦えないが故に遅れを取ったことを理解すると、岩永は納得して胸を撫で下ろした。吸血鬼と人狼の二人を圧倒する人の存在が生まれれば、それは今の岩永の地位まで揺るがすことになってくる。

 それに秀はまだ若い。いつの日か、岩永の地位を脅かす存在に成長する可能性は充分にあった。どこかで処分する必要があるかもしれないと岩永心に留めておく。

「ならば風切以外は大体捕獲、処分したようだな」

 岩永が言うと、人狼――髭の男が口を開いた。

「玖月んところのぼっちゃんはどうしたんだ? あれも大変だっただろ?」

「あれは大したことない……そうだ、二人にも渡しておこう」

 岩永はポケットに手を突っ込んで、二つの小瓶を取り出した。それぞれに赤いシールが貼ってあり、中にある透明の液体が揺れた。二人は恐る恐る小瓶を受け取り、興味深そうに見つめた。

「母上から買った対玖月の毒だ。もしもに備えて二人とも持っておけ」

「そんなもんあったのか」

 人狼の反応は分かりやすく、目を丸くしている。真祖も僅かに驚きながらも、やがて眉をひそめた。

「こんな便利な物があるなら最初から渡しておくべきだと思わないか? 誰があいつに遭遇していたか分からないんだぞ?」

 真祖は席を立ち、岩永に詰め寄った。それでも岩永は取り乱すことなく、悠然と応じる。

「そのために配置地区を決めておいたんだ。できるだけ玖月の子から離れるところに君たち二人を配置しておいた」

「それでも先に渡しておいても損はないだろう。予防線と――」

「解析、生産がギリギリだったんだ。母上が――あいつがいれば量産も簡単だっただろう。まったく……惜しい奴を亡くしたよ」

 岩永は顔色一つ変えずに言った。真祖も黙って席に戻る。淡々と言葉を紡ぐ岩永に、冷たい物を感じて、これ以上の詰問を躊躇ったのだ。

「しばらくの間は、教員不足の学園で跳ねっ返りどもを抑えるのが、俺たちの仕事だ」

 それだけ言うと、岩永は席を立った。腰に下げられたホルターケースが鳴った。黒金が僅かに姿を覗かせ、それを愛でるように岩永の手が撫でた。


*


 再び目を覚ますことができるとは思いもしなかった――それが冬夜の素直な感想だった。

 身を起こそうとするが、身体が言うことを聞かない。また動かそうと意識しただけで、節々が痛んだ。

 ずっと眠っていたせいか、薄暗い室内にも関わらず、冬夜の目は物の輪郭をはっきりと捉えた。首も動かないので、目だけを動かし、出来るかぎりの情報を収集する。いくらか動く影がある。それらが人であることを理解し、冬夜は再び眠りについた。身体が動かなければ、何の意味も無い。今は休むべきだと結論を出して、目を瞑る。

 しかし何のために休むのだろうか――自問するが、答えは出てこない。いつものように答えの出ない質問を流そうとするが、何かが引っかかった。身体が動くようになるまで、たくさんの時間があったにも関わらず、答えを導き出すことはできなかった。その間、冬夜はもどかしさに苛まれ続けることになる。

 周囲はずっと暗いせいか、時間感覚が無くなりつつあった。定期的に食事が運んでこられるが、それがどの時間帯の物なのか、判別することもできない質素な料理ばかりだった。

 何度目か分からないが、料理が運ばれてきたタイミングで冬夜は身を起こした。それに応じて、周囲の影が一斉に冬夜から離れた。湿気をはらんだ空気が張り詰める。人影の放つ緊張感に、冬夜も動くことを躊躇った。

 とは言え、数日に渡って、何も食べていない冬夜は空腹に耐えかねて、運ばれてきた食事の方に、緩慢な足取りで向かう。トレイを一つ受け取り、それを黙々と食した。しばらく、じっと冬夜を観察していた人影も、同じようにトレイを受け取って、食事を始めた。

 どうやら檻の中らしい。ようやく動けるようになった冬夜は、周囲の観察から答えを導く。一つの檻の中には数人いて、冬夜を含めると五人だった。武器は全て奪われているようで、どうしようも無かった。

 食事を終えた冬夜は、満腹感に身を委ねながら眠りに落ちようとしていた。その時、僅かながら檻の中で人の動く気配があった。それは気配を隠そうともせず、冬夜の下に歩み寄ってくる。目を開いて、いつでも起き上がれる体勢を取ってから、冬夜はその人影を睨み付けた。

「そんな睨まないでほしいっす」

「……佐伯か」

 冬夜のすぐ近くに腰を下ろした佐伯に、冬夜も身を起こす。一年最強の佐伯に、鮮烈な学園デビューにより、名を馳せた冬夜の二人の対面に、他の三人は檻の隅に避難していた。

「お久しぶりっすね」

「そうでもないと思うけどな」

 冬夜が否定気味に返すと、佐伯は小さく笑いを漏らした。

「皮肉っすよ」

「ほう、それぐらい吐けるようにはなったのか」

「ええ、まぁ、左腕が折れている上に、武器の無い南雲さんなら負ける気がしないっすよ」

 実際、その通りだろう。ただ、冬夜は顔色一つ変えずに頷く。

「ああ、間違いなく勝てないな」

「認めていいんすか? ここで、あの日の恨みを返されるとか――」

「別にどうでもいい」

 佐伯の言葉を最後まで聞くことなく、冬夜は遮った。しかし、その声にも力は無い。顔は俯き、瞳は何も捉えていない。すぐ目の前に佐伯がいるにも関わらず、いつしか警戒すらも解いていた。

「……舐めてんすか?」

 佐伯の声が僅かに低くなる。今にも張り裂けそうな緊張感に、隅に寄った三人が震えている。目の前の佐伯から、あからさまに殺気を向けられているが、やはり冬夜が顔を上げることはなかった。

「何で生きるんだろうな」

 不意に冬夜が呟いた。その声に緊張はなく、ただ暗い感情だけが吐き出されたかのようであった。

「生きる理由っすか? 随分と哲学的になったじゃないっすか」

「元より、それが分からないから、こうなったんだ」

「なら、死ねばいいんじゃないっすか?」

 冷たい声色の佐伯だったが、その当然のような答えに冬夜は思わず失笑を漏らす。佐伯はそれが面白くないようで、放つ殺気が更に濃くなった。

「だから、俺はルールの外に身を置いた。殺されるべき存在になるために、人を殺し続けた」

 それを聞いて、佐伯は笑い飛ばした。それは、やがてぴたりと止まる。佐伯は殺気を消すが、その瞳には冷たい光がきざす。見下すような瞳は、冬夜に注がれていた。

「いい迷惑っすよね、殺された側からすれば」

「だろうな」

 冬夜は否定しない。自らの勝手であることを理解した上での行動だったからだ。

「てか、何で生きている意味が分からなくなったんすか?」

 佐伯の質問に、冬夜は僅かに顔を上げる。予想外の質問に、反射的な行動だった。

「だって、普通は生きるモンじゃないっすか、人って。どんなヤツでも最初から死のうだなんて思わないっすよ。何かあったからこそ、死のうと思ったんじゃないっすか?」

 何かがあった――冬夜は復唱しながら、記憶を遡る。初めての殺人、上村を殺した日を過ぎ、更に遡り続ける。河川敷で秀を目撃した記憶、そして家を出る間際の記憶までやってきて、冬夜はようやく理解した。

「ああ、そうか」

 表情の無かった冬夜の顔が僅かに微笑む。しかし、その瞳に光は無い。不意に目頭から涙が零れた。痛みに対し、反射的に涙が流れたことは、いくらでもあった。しかし感情が原因で涙を流したのは、あの日以来だろう――そう、居場所を奪われたと思い込んでいた、あの日だ。

 冬夜は、ずっと居場所を求めていただけだったのだ。人を殺し、その場所を奪う――それを無意識に続けていただけなのだ。しかし、その人の居場所を奪ったところで、結局のところ冬夜が求められることはない。どこまでも厭われ、遠ざけられ、恐れられる存在にしかなれなかった。

 冬夜は求められたかった。自らを必要としてくれる場所が、ただ欲しかっただけなのだ。随分と遠回りしてきたが、ようやく本心に辿り着けた。

 それと同時に、自らを取り巻く無気力の正体にも気づく。これは喪失感だ。自らを必要としてくれた西浦を失い、冬夜は純粋に悲しんでいたのだ。

 頬を伝う涙は止まらない。ようやく自らを必要としてくれる人が見つかったと言うのに、気づいた時には手遅れだった。それも自らが手を下したとなっては、もはや笑うしかない。自らの滑稽さ、失った悲しみがない交ぜとなり、今までに無い感情が冬夜を満たす。もはやコントロールできる範疇を越えて、冬夜はそれに身を委ねるしかなかった。

 響く嗚咽に、佐伯はただ困惑し続け、動くことすらできなかった。しかし、いつまで経っても泣き止むことのない冬夜に呆れたのか、そっと彼の前を離れた。壁に背を預け、じっと冬夜を見つめている。どこからどう見ても、殺人鬼には見えない――ただの人の子だった。

 湿度の高い地下の牢獄の中で、数日に渡って冬夜の嗚咽が響き渡った。薄暗く、元より陰鬱な空気を更に酷くさせる物ではあったが、誰もが脱走を諦め、絶望に呑まれていった。

 それが不意に止んだ頃、佐伯は顔を上げた。冬夜に動く気配があったのだ。ただ泣き続けるばかりで、食事すら取らなかった冬夜が急に立ち上がったのを見て、佐伯も思わず中腰になる。冬夜の一挙一動を逃すまいと薄暗い闇の中、凝視する。とは言え、この程度の暗さで、吸血鬼の佐伯が困ることはなかった。冬夜の視線、表情、僅かな動きですら見て取れた。

 見たことのない冬夜の瞳に、佐伯は戦慄する。今までにない強い光だった。

「もう、失うものか」

 冬夜は袖で顔を拭う。それを最後に、冬夜の目から涙が流れることはなかった。

「お前は俺が嫌いだよな?」

 それが自分に向けられた質問だと、佐伯は分からなかった。

「なぁ佐伯?」

「え、ああ……もちろんす」

 そうか、と冬夜は頷き、苦笑を漏らす。あれほどの仕打ちを与えたのだ、当然のことだろう。冬夜は佐伯に背を向け、外に出ることを阻む檻を見つめた。

 贖罪から始めよう。佐伯もまた冬夜の居場所を構成する一人なのだから。

 まずは学園を取り戻す――そう心に誓って、冬夜は再び腰を下ろした。檻を包む緊張感が和らいだのを肌で感じることができた。

 檻から抜ける必要があったが、それについては勝算があった。ただ、今は待つだけだと冬夜は目を瞑る。

 今度こそ手放すものか、自らの居場所を――そう心に誓う冬夜の瞳には、今までにない光が宿った。

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