追手
目覚めた冬夜の視界に広がったのは、白い天井だった。ゆっくりと首を起こし、辺りを見回す。見覚えのない風景に冬夜は首を傾げた。広い部屋にはソファーとテレビ、奥にはダイニングキッチンがあった。
身を起こそうとするも、身体に力が入らなかった。何度か手を握り、ようやく感覚が戻ってきた。それと同時に押し寄せる痛みが体中を駆け巡る。筋肉だけでなく関節までも動かす度に悲鳴を上げた。
それでも冬夜は身を起こし、ベッドから這い出た。スリッパを蹴り飛ばしても、気にしている余裕がなかった。
重い身体を引きずるように冬夜は部屋を歩く。ソファーの向かいにあるテーブルに冬夜が持ち出したナイフが丁寧に並べられていた。ひとまず武器が奪われていないことに冬夜は安堵の息を漏らした。
その一本を握り、冬夜は部屋の奥にある扉へと向かった。その足取りは酷く重い。身体に一体何が起きているのか分からず、冬夜は歯を食いしばった。
やがて奥からパタパタと足音が聞こえてくる。冬夜はとっさにナイフを構えるが、その動きは酷く弱々しいものだった。
そして扉が開かれる。現れた人物に、冬夜はため息をつきながらナイフを下ろした。
「おわおっ! なぐもん、目覚めたんだ」
薺が冬夜に抱きついた。しかし冬夜は薺の身体を受け止めきれず、二人揃って倒れてしまった。後ろで一纏めにした薺の黒い髪が、冬夜の鼻をくすぐる。冬夜は顔を背けて「どけ」と低く唸った。
「ご、ごめん、大丈夫?」
薺に引き起こされるも、冬夜は顔をしかめていた。
開けっ放しになった扉の向こうは、フローリングの廊下が伸びている。両側には白い壁が続き、シンプルながらも高級感溢れる造りに、冬夜は眉をひそめた。
「ここはどこだ」
「玖月くんのおうち」
「ほう……って、はぁ?」
薺の返事に冬夜は目を剥いた。
「説明、要るよね?」
冬夜はしばし逡巡しながらも、やがて頷いた。二人は部屋に戻り、ソファーに腰掛けながら薺の説明を聞いた。
学園を出る間際に冬夜は意識を失った。鼻血を拭ったと同時に前触れもなく倒れた、と薺は告げる。
そう言えば、と冬夜も少しずつ記憶が蘇ってくる。四肢の痛みにも納得がいった。
「学園からずっと玖月くんに担いでもらってきたんだよ」
私じゃ無理だったから――薺の笑みはどこか苦々しい。冬夜はそれを無視して、尋ねる。
「で、今も玖月の家に世話になってるのか?」
「うん、ここなら相手も簡単に手は出せないからって」
「相手って……追ってくるのか、学園は?」
薺は首を横に振った。その表情に不安が滲み出ていた。
「もっとヤバい人たちが動いてるんだって。なぐもんが眠っている間に、各国から召集をかけたらしいの。学園からの逃亡者を狩るために」
「はぁ……もっとヤバいのねぇ」
冬夜は天井を眺めながら呟いた。現実味が無く、冬夜はぼんやりと薺の言葉を聞いていた。
「で、ここなら安全な理由は?」
「それは――」
「僕の父さんが学園に出資しているからだよ」
薺を遮って答えたのは緋人だった。いつしか二人の後ろに現れていた緋人は、柔らかな笑みを浮かべていた。
「よう、人外」
冬夜が楽しそうに笑いかけると、緋人は顔をしかめた。
「その呼び方はやめてくれないか?」
「俺の納得がいくまで説明してくれるなら考える」
やがて観念したように、緋人は語り始めた。
あの学園は、日本政府の手駒を養成する施設だった。冬夜や風切のような素行の悪い者、また朱里のような特殊な能力を持つ者を集めて、諜報や暗殺を行わせるための教育をする施設であることは、間違いの無い事実だ。実際に赤腕章――化け物レベルの戦闘力を有する秀などの育成に成功し、実績を残しつつあった。それを聞いても冬夜は眉一つ動かさずに、続きを促す。
「まぁそれが主な理由なんだけれどね。僕を飼い慣らす檻としても都合が良かったんだ。父さんも僕の扱いには困ってたしね」
つまり僕の居場所だったと言うワケさ――そう告げた緋人は、どこか悲しげな色を瞳にきざしていた。
薺は目を丸くしていた。冬夜は相変わらず、ぼんやりと話を聞いていた。
「僕のこの特異体質を解析したり、また同じような能力を持つ人を集めることで僕の異常さを和らげようとでも考えてたのかな、父さんは……結局どこに行っても僕が一番異常だったけどね」
緋人は自嘲するような笑みを見せた。
そこで冬夜はようやく口を開く。話など聞いている素振りが無かったので、緋人も薺も目を丸くした。
「だったら、お前の親父さんは怒ってるんじゃないか? 俺が首謀で生徒たちは逃亡したんだから」
「うん、まぁ怒ってたね。でも、今はあんまり気にしてないみたい。それよりも政府の方がご立腹だよ。僕らを追うために、各国に散らばっていた精鋭部隊を呼び寄せているらしい」
冬夜はソファーに背中を預けて天井を仰ぐ。その話なら薺からも聞いた。しかし冬夜からすると何とも実感の沸かない話だった。
「政府、ねぇ……馬鹿な政治家ばっかりだし、諜報機関も核も持たない平和ボケした国だと思っていたが、そんなことも無かったんだな」
「何で楽しそうなのよ……あんたら」
薺の言葉で冬夜と緋人はお互い見つめ合った。そして吹き出す。薺だけが理解できず、首を傾げた。
まぁ、と冬夜は楽しそうに笑いながら告げる。
「まだまだ退屈しないなって」
*
眼下に広がる風景は無彩色で支配されている。所々に見える色彩が淡くなり、果ては呑み込まれてゆく。世話しなく行き通う人が、時に支配されていることを冬夜は再認識した。
現状を思うと、まだ彼らの方がマシなのかもしれない――冬夜はぼんやりと風景を見下ろしながら考える。相手の反撃を恐れ、安全圏で身を潜めている行為は退屈で仕方がなかった。街で蠢く人々にとって大切で貴重な一分が、冬夜にすると苦痛を伴う退屈の中で六十を数えながら過ごすのだ。同じ時間なのに、これほど感じ方が違うのだ。冬夜は純粋に彼らを羨んだ。
冬夜は自らの立ち位置を確かめる。本当にここにいて良いのだろうか――答えに辿り着くのは、ほんの一瞬の出来事だった。窓に背を向け、部屋の中央にあるテーブルに向かう。そこに並べてあったナイフ四本をすべて装備し、リビングを出た。長い廊下が続いて、やがて玄関が見えてくる。冬夜は鍵を開け、迷いなく部屋を出た。日陰にいるにも関わらず、温い風が冬夜の肌を撫でて少し汗ばんだ。
無駄に豪華なホールで、エレベーターの到着を待つ。しばらくするとエレベーターがやってきた。それに乗り込んで一階を目指す。エレベーターが落下を始め、身体が無重力感に包まれた。二桁の数字がどんどん減ってゆくのをぼんやりと眺めながら、冬夜は手を握った。関節の痛みは消えている。問題はない――冬夜の口の端が僅かに上がった。
一階に着き、冬夜はロビーを出ようとしたところで足を止めた。
「じっとしていないとは思ってたけど……行くんだね」
淡い水色のワンピースに身を包んだ薺と、ティーシャツ一枚にジーンズとシンプルな姿の緋人だった。やはりと言うべきか、緋人の身体は常人離れした筋肉を搭載していた。少し力を込めるだけで、ティーシャツが四散しそうなほど身体にフィットしている様子が心許なかった。
二人とも買い物袋を持っており、その帰りだったのだろう。冬夜は無言で頷き、二人の横を通り過ぎる。背中に視線を感じるも、冬夜はマンションを去った。向かう先は特に決まっていない。ただ足取りに迷いは無かった。
手持ちの小銭で電車に乗り、足りない分は歩いた。ただ二駅分ほどの距離だったので、冬夜は何食わぬ顔で踏破した。
この町を離れたのは、ほんの一ヶ月程度だ。しかし何とも言えない感覚が冬夜の中で渦巻いた。
こみ上げてくる物を抑え、冬夜は足を進める。何度も角を曲がり、町の中を歩いて回った。
やがて冬夜が通っていた高校が見えてきた。しかし夏休みに入ったのか、校舎に活気は無かった。運動部も活動を行っていないようだ。その前をあっさりと通り過ぎて、冬夜は歩き続けた。
そして着いたのは河川敷だった。人気は少ない。冬夜は堤防を下りてゆく。雑草は伸び放題だった。そこで息を吐いた。
「もう少し、上手く尾行しろよ」
いつしか冬夜の両手にはナイフが握られており、臨戦態勢に入っていた。やがて音もなく草を踏んで、冬夜に迫る男が三名いた。
一人は鎌と重石を鎖で繋いだ武器――鎖鎌を手に、もう一人はギターケースからチェーンソーを、最後はハンドガンを両手に持っていた。
一人が冬夜に銃を向ける。男は迷うことなく引き金を絞り、弾丸を放った。その動きを見て、冬夜は大きく飛び退く。そのまま横に走り抜けて、狙いを付けさせないように努めた。その隙に鎖鎌とチェーンソーの男が動く。チェーンソーのエンジンが唸りを上げる。それでも冬夜は顔色一つ変えなかった。むしろ溢れ出す愉悦に、冬夜の口の端はつり上がってゆく。
行ける――そんな自信があった。冬夜は走る向きを変えて鎖鎌を持つ男に飛び込んだ。鎖鎌、チェーンソー、ハンドガンと三人の男が一列に並んでいる。これで銃器の射線は防いだ。冬夜は砂利を踏みつぶしながら進む。それと同時に男が鎌を放った。
刹那、全ての動きがスローモーションになった。冬夜は飛んでくる鎌を軽やかに躱して、肋骨に止められないよう気をつけながら心臓に向かってナイフを突き立てた。かきん、と金属同士がぶつかるような音が響く。心臓を保護するプレートを埋め込んでいるようで、冬夜は僅かに眉を竦めた。
即死を狙いたかったがやむを得ない。冬夜はそのままナイフを跳ね上げ、ゆっくりと動く男の首を斬り裂いた。首がぱっくりと赤い口を開く。溢れてくる血を一瞥して、冬夜はチェーンソー男に向かって駆けた。
本来は高速で回転しているはずの刃の動きまで見て取れた。冬夜は思わず笑う。その瞳はいつも通り狂気が宿っていた。チェーンソーに構うことなく、両目を潰す。そしてハンドガンの男に向かって駆けた。
「……なっ!?」
ハンドガンを持つ男の顔が驚愕で満ちる。動きも戻っていた。それでも冬夜は踏み込んだ。刹那、二発の弾丸が冬夜に向かって放たれた。それを身を捩って躱しながら、冬夜はナイフを振るう。しかし、それは銃のグリップで防がれた。
「お?」
そして更にグリップが振り下ろされた。今度は冬夜がそれをナイフで受ける。更に逆の手でナイフを振るおうとするも、男が銃を向ける方が早かった。冬夜は身を捩って、射線から逃れる。放たれた弾丸は冬夜の腹部を掠めた。しかし出血するほどでないだろう――更に冬夜は踏み込んでナイフを振るうも、再び銃で防がれた。
偶然じゃないのか――冬夜は嬉しそうに顔を歪めた。そして二人の攻防のテンポは加速してゆく。放たれる弾丸を躱しきれば、冬夜の勝ちは揺るがない。しかし、それでは面白くない。それまでに決着をつけるべく、冬夜は更にテンポを上げた。
攻撃に傾いた冬夜のスタイルは、自らの負う傷を増やしてゆく。掠めるグリップ、銃弾は致命的なところを外す程度で、追撃の手を緩めることはなかった。
「銃器を扱う奴で、これほど肉弾戦に強いのは初めて見たぜ」
冬夜が更にテンポを上げると、男の苦しそうに顔を歪めた。男の額に浮かぶ脂汗を見て取れるほど、冬夜は落ち着いていた。淡々と男の急所を狙い、ナイフを振るい続けた。
不意に冬夜の耳が音を捉える。僅かながらも、後ろで砂利を踏むような音が聞こえ、冬夜の背筋を悪寒が抜けてゆく。とっさに身を屈めながら、横に飛ぶと同時に、視界の端で血しぶきが舞った。
体勢を立て直し、冬夜は敵を確認する。銃を持つ両手を痙攣させる男の顔は、重石で潰されていた。重石から伸びる鎖を辿りながら、冬夜が反転すると鎖鎌の男が青い顔で立っている。咄嗟に構え、追撃を警戒するが、相手は微動だにしなかった。
傷口が浅かったのだろうか――冬夜は首を傾げてみるが、相手の反応はない。虚空を睨み続ける男に、冬夜は歩み寄る。その足取りに警戒はなく、動かない男の顔を覗きこんだ。
死んでいる――恐らく、先ほどの一撃が最後だったのだろう。生気の無い瞳を一瞥して、冬夜は反転する。そのまま気絶しているであろうハンドガンの男の下へと向かった。こちらは、まだ息がある。それを確認すると、冬夜は当然のように首を斬り裂いた。
そのまま続いて、作業をこなすように、チェーンソーの男にも向かう。やはり息があったが、傷は致命的だった。胸が上下するたびに、ぱっくりと開いた傷口から泡沫が生まれる。
やがて冬夜は傷口を更に広げるようにナイフを振り下ろした。漏れる呼吸の音の中に、懇願の言葉を聞き取ったのだ。
「殺してくれ」と男は確かに言った。男の望み通りに冬夜はトドメを刺し、痛みと苦しみから解放してやった。
「畜生」
冬夜は眉をひそめ、不機嫌そうに呟いた。頬についた返り血を袖で拭い、擦って目立たなくすると、そのまま河原を後にする。白昼、堂々と行われた殺人劇は、その後も表沙汰になることはなかった。
それから、しばらく歩き続けていた冬夜だったが、不意に違和感を覚えて、顔を袖で拭った。袖に付着した新しい赤色に、冬夜は首を傾げる。それは鼻血だった。攻撃を受けた覚えは無く、突然、流れ出した鼻血に色々と思うことはあったが、鼻の頭を押さえて、止血を試みた。
ようやく鼻血が止まった頃、冬夜は見慣れた一軒家の前に立っていた。離れていた期間は、長くもなく、短くもない。そんな中途半端な期間だったせいか、自宅を前にしても、何かしらの感情が湧き立つことは無かった。
門を通り、玄関に立ったところで、冬夜は家の鍵を持っていないことに気づいた。恐らく学園の寮に置きっぱなしなのだろうが、取りに戻るという選択肢は自殺行為に近い。ただ、自殺行為であることが、冬夜の意思決定を左右することはない。手持ちの無い現状で、鍵だけのために、わざわざ歩いて学園まで戻ることが、単に面倒くさかっただけだった。
冬夜はやむを得ず、呼び鈴を鳴らす。家の中から、パタパタと音がして玄関の扉が開かれた。現れたのは母だった。冬夜の姿を見て、驚愕を滲ませながらも、やがて涙目になって、冬夜を抱きしめた。
泣きつく母に、しばらくはなされるがままだった冬夜も、やがては面倒くさくなり、無理やり振りほどく。体調や帰ってきた理由を尋ねてくる母に、おざなりに返しながら、冬夜は逃げるように自らの部屋を目指した。鍵を閉め、母を遮断してから、ベッドに腰掛ける。小さく息を吐き、肩の力を抜くが、武装の解除は行わない。そのまま両膝を抱えるようにして、うずくまった。
目を瞑り、静かに息をする冬夜の姿は、眠っているようにも見えた。しかし意識は音に向いている。何かあったときに、すぐ動き出せるように――パソコンで言うスリープモードのようなものだ。体力を温存、または少しでも休めるために、冬夜は静かに呼吸だけを繰り返した。
そのまま数時間が流れた。階段を上る母の足音、夕夏が帰ってきた気配、呼ぶ声がしても、冬夜は一切動かない。室内の静寂と同化するように、冬夜は息を潜めていた。外から冬夜を呼ぶ夕夏は、部屋の中に冬夜が本当にいるのかと疑うほどだった。
赤い夕日が閉じた瞼を焼く。赤くなった視界は、しばらくして真っ暗な物へと変わってゆく。日が沈んだことを感じながら、冬夜は僅かに目を開いた。誰かが階段を上ってくる。その音から感じる質量は、家族に無い物だった。冬夜は音も無く立ち上がり、腰元からナイフを一本だけ抜いて、扉の近くに身を寄せた。壁に耳を当てて、外の気配を探る。足音は部屋の前で止まった。訓練された兵士では無いだろう。相手は足音を響かせながら、無用心にやってくる。手に持ったナイフを退屈そうに弄りながら、冬夜は耳を澄ませ続けた。
やがて自分の名を呼ぶか細い声が、扉の向こうからやってきた。冬夜は僅かに首をかしげながら、
「誰だ」と尋ねる。
「俺――祐介だ」
相手は上村だった。冬夜は小さく息を吐いてから扉の鍵を解除する。僅かに扉を開けて、そこから目だけを覗かせる。上村は学生服のままで、僅かに笑みを漏らしていた。
「何か用か?」
「いや……帰ってきたって聞いたから」
冬夜が尋ねると、上村は更に笑みを深くした。
逆に冬夜は表情を失ってゆく。特に用件も無さそうな上村に構っている時間を惜しみ、手早く済ますべく、突き放しにかかった。
「俺に会って、どうするんだよ」
「今は夕夏とは付き合っていない」
上村の言葉は、冬夜にとって予想外と言うほどのことでもなかった。僅かに頷き、「それで?」と返す。上村は笑みを引きつらせ、言葉を探すように目を泳がせた。すぐには言葉が見つからないようで、無言が二人の間に居座る。
「……何が気に入らないんだ?」
無言を破ったのは上村だった。俯いたまま、ぽつりと零した言葉は、今にも泣き出しそうに震えていた。
冬夜は我慢しきれず、盛大なため息を漏らす。これしきのことで泣くなよと呆れ果てていた。それと同時に、上村の質問の答えを探す。急ぐこともなく、じっくりと考えてみるが、何の感情も湧いて来なかった。
「いや、別に何も」
それは本心だった。もはや上村を前にしても、以前のように殺意が沸いてくることは無かった。
これ以上、会話を続けても無駄だと、冬夜は扉を閉めた。上村が呼ぶ声が聞こえたが、それを無視して、再びベッドの上でうずくまった。
しばらくすると諦めたのか、上村の気配が遠ざかっていった。扉を一瞥して、冬夜は小さく呟く。
「何で、あいつを殺したんだろう」
時間は無駄にあるため、冬夜はゆっくりと考え続けた。しかし、どれだけ時間をかけても、答えを導き出すことはできなかった。