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殺人鬼の日常  作者: 小石 汐
おでかけ
10/30

後日談

 後日談。

 結局、島から無事に帰ってみると、二クラス分ほどの人数が減っていた。男子五十三名、女子十四名、教師六名、施設の職員五名――計七十八名が吸血鬼の犠牲となった。

 最初の犠牲者である斉藤たちの死体は神社の裏で見つかった。二組と三組の男子はコテージの裏に、また施設と正反対の海岸で、捜索に出た教師と職員の死体もあった。

 あまりにも死者が出すぎたため、適当な言い訳で警察は納得しなかった。そのため、冬夜は再び神社まで戻り、謝り続けるミイラを見せた。緊張感の無かった警官たちも、それを見て言葉を失った。ようやく吸血鬼の話を信じたのであった。

「これは我々が責任をもって管理します」

 帰りの船で警官が言った。結局、あのミイラは詳しく調べることになり、ガラスケースの中に収められた。曇って日光が弱まっているせいか、ガラスケースから「ごめんなさい」と聞こえた。

 課外学習から生還を果たし、数日すると新聞に載るぐらいのニュースになっていた。教師は毎日鳴り続ける電話の対応に追われ、三日ほど休校となった。

 そして休校が解け、冬夜は何の気なしに登校した。二年一組の教室は酷く寂しかった。男子は数名、女子も半分ほどいなかった。隣のクラス――二年二組は、もっと酷かった。男子ゼロの女子数人だった。

 しんと静まった教室に踏み入れ、冬夜は後悔した。こんな状態なら来るんじゃなかった、と。しかし西浦の姿を見つけ、冬夜は少し安心した。自分の席に腰を下ろして息を吐く。

 しばらく椅子を引く音が教室に響くも、その後は不気味なほどの静寂が訪れた。やっぱり来なければよかった。怪我で課外学習に来れなかった上村を軽く恨んだ。

 あれほど血生臭い世界から、学校に帰ってくると違和感が酷かった。今にも冬夜を追って、警官が教室に流れ込んでくるのではないか、と気が気でなかった。今回は正当防衛で、何の罪に問われないことも理解している。しかし長年の逃亡生活の癖か、派手に血の臭いをかいだ後の冬夜は、過敏になっていた。

「ねぇ南雲くん」

 昼休み。弁当を食べて早退しようと心に決めた冬夜を、西浦が呼び止めた。冬夜は平静を装うも、心臓の鼓動は自然と速まった。

「終わったばっかりに訊くのも悪いと思うんだけど……あの吸血鬼さんと友達だったの?」

 冬夜は首を傾げて、しばらく考えた。そして「違う」と返した。

「そう、なんだ」

 どことなく悲しそうに西浦は目を伏せる。そんな彼女の心境が読めず、冬夜は眉をひそめた。

「何故そんなことを訊くんだ?」

「ん、えっと、何て言うか……吸血鬼さんの口調がさ、友達の悪口を言うみたいだったんだ」

 たぶん、私の勘違い、と西浦は苦笑を漏らし、去っていった。

 同類、と呼ばれた。しかし冬夜は吸血鬼は示した和解案は蹴った。決して親しいと言える間柄ではない。それどころか、最終的には拷問に近いことまで行った。

 冬夜は腕を組んで考える。考えれば考えるほど、気分が悪くなった。結局、冬夜は早退した。

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