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実力不足の至るところ


「ギルド登録をお願いします」


「承りました。では冒険者カードの提出をお願いします」


師匠を捜す旅に出てから、約半年が経った。

季節は旅に出始めてからすっかりと変わって、夏風が時折冷たく感じることも増えてきた。


腰から提げている栗色の巾着から銀で製作された冒険者カードを取り出す。

新たな街へ来て、一番最初に行うこの手続き。

冒険者ギルドが街にいる冒険者を管理するために制定されたこの決まりごとは、依頼を受ける為には必須だ。これをまず手続きしなければ、冒険者の主な儲けである「依頼」を受けられないままなので。


「確認いたします……銀級(シルバー)冒険者なのですね」


「えぇ、まぁ」


冒険者は主に四つの(ランク)に分けられる。

神級、金級、銀級、銅級の四種類。

神級が一番高く、金級と銀級が中位。登録時点の級が銅級である。

冒険者ギルド内部では『四種類の級では冒険者の実力を格付けるには難しいのではないか』という意見もあるらしいが、この段階の方法は中々理に叶っていると俺は思う。

なにせ、昇級の条件が「魔物を倒した数」だからだ。


「拝見しますね」


______________________________


アーク・バーサリティ(15)


【弓適性】


初期登録ギルド:チェスタス連邦国ガスタル区ギルド

冒険者ランク:銀級

活動人数:ソロ(1)


Cランクモンスター:27/40

Bランクモンスター:31/40

Aランクモンスター:12/40


______________________________


「"バーサリティ"……と」


「えぇ、少し縁がありまして」


「…そうですか。それにしても【弓適性】で単独(ソロ)、加えて銀級とは素晴らしいご活躍ですね」


「ありがとうございます」


「これでギルド登録は完了です。これからも当ギルドをご贔屓に」


「ありがとうございました」


冒険者カードを受け取って、巾着にしまう。

それにしてもこの街のギルド職員は対応が丁寧だ。前の街とは勤務態度が比べ物にならない。

前の街のギルド受付嬢は仕事がとにかくずさんというか卑劣だった。魔物討伐の報酬を少し減らした額で渡したり、銅級冒険者に人気で楽な薬草採集の依頼を改変して、ギルド在庫用の薬草の為に余分に採ってこさせたりしていた。前者は実際に体験したし、後者はそれが発覚して冒険者に受付嬢が怒られたりしていた。

当然の結果ではあるが。


さて、この国『バルグエスタ共和国』国境の街『ヒェグラ』の街に着いたのはついさっき。加えて日も落ち、夕日が山に隠れる寸前である。

経験上、冒険者ギルドでのこの時間帯は勘弁願いたい。


「おいそこのガキ」


「………」


「おい!デケェ荷物背負ったガキ!!お前に言ってんだ!」


ドカドカと大きな足音でこれでもかと不満を表情に溢れ出させた大男が、俺の前へと立ち塞がった。

正直旅疲れで一刻も早く休みたい。一日遅らせていれば、この時間帯に着くこともなかったのに。


「なんのご用でしょう」


「【弓適性】がどうしたよ? ここはガキの遊び場じゃねェんだ!」


どうやら嘲笑いに来ただけらしい。

この時間帯じゃあ冒険者用の宿舎のチェックインもギリギリだ。早く寝てしまいたい。


「おいおいガルツが絡んでるぜ」


「アイツたしか銀級目前だっけ? ここらで二番目に腕が良い冒険者パーティーのリーダーの」


「あの子供【弓適性】? カワイソー」


面倒な奴に絡まれたらしい。

コイツの名前は『ガルツ』。見たところ戦斧を背負っているので重戦士的な役割をしているらしい。


「俺の名前はガルツ! 【大斧適性】でこの街で最強の冒険者パーティー『ダンシェル』のリーダーだ!」


……それがなんだ、という話ではあるが。

喧嘩を売りたいんなら売ればいい。なんだかんだ理由つけて逃げてやるから早くしてくれ。

ふと気付いたのでちゃんと『ガルツ』の顔を見てみる。すると、なんとコイツの顔が赤かった。酔っ払っているらしい。どうりで酒臭いと思った。

脈絡のない一方的な会話、気の大きさと比例する声量。覚えがある。


酒癖の悪い酔っ払いはこの世で一番面倒なのだ。


加えて、コイツは増長しているらしい。

先ほど名も知らぬ誰かが「二番目に腕が立つパーティーのリーダー」と言っていた気がする。だがガルツはなんと言ったか。


()()()()()()()()()()()と言ったか。


コイツは【弓適性】がソロで冒険者をやることを咎めるより先に、自分を見つめ直してみたら良いと思う。


そんな文句を顔にでも出ていたのか、ガルツが目に見えて激昂し始めている。これは不味い。


「お前ェ……! ブッ殺すぞォ!!!」


屈強な腕が振り上げられ、ガルツの拳が俺の顔面を捉えている。読めていた行動なので避けることは容易い。

攻撃を避けようと顔を背けた時、パシッと軽く叩いたような音がした。

俺とガルツの間に一人、男がいた。


「ガルツ、ギルド内での暴力はご法度だろ?」


凛とした芯のある声に、助けられたのだと理解した。

いや、それよりも。


腰に提げている()が、どうにも異質にしか見えなかった。

それにはひどく、既視感があった。


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