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万能勇者、敗北。そして二度目の人生は最弱から   作者: 虚無しお
第1部5章:最後まで、共に行こう
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【第39話】救済と感謝と


 魔王の間に戻ったレイたちを、ユイとカイムが迎える。


「あらあら」

「まあまあ」


「……なんだよ、どうしたんだ?」


 二人は揃って、まるで何もかも見通していたかのように微笑んでいた。


「……理解が早いな」


 レイがぼやくと、カイムが穏やかに頷いた。


「あなたたちの“記憶”、しっかり見せてもらいました。面白かったですよ」


 カイムの目が細まり、ユイの瞳がほのかに紅く光る。


「……もしかして、俺だけついていけてない?」


* * *

 

 セレーナにとって、すべては完璧なはずだった。

 魔王に倒されれば、それでよし。

 もし倒されなければ、絶頂の瞬間に、自らの手で息の根を止めてやる──

 そう、思い描いていた。

 

 だが、予想外の事態が起きた。

 レイたちの足が、真っ直ぐこちらへと向かってくる。

 

 反射的に身構えたその瞬間──

 

 乾いた音が響いた。


「お前は、殺す価値もない。……気が変わらないうちに、とっとと消えろ」

 

 レイの拳が、彼女の頬を打ち抜いていた。

 

 セレーナは誰にも顔を見られぬように背け、踵を返す。

 そのまま、無言で走り去った。

 誰も追おうとはしなかった。

 

 そこに残されていたのは──

 かすかに目を開けた、ユウトの姿だった。

 

* * *

 

「あれ、リズ? また会ったね。……どうしたんだい、そんな泣きそうな顔して」


 ユイが軽く微笑む。

 リズは言葉にならない嗚咽をこらえながら、ユウトの胸へ飛び込んだ。


 もう、取り返しのつかない場所にいたはずの人が、目の前にいる。

 それだけで、すべてが報われた気がした。


* * *

 

 その頃、魔王の玉座の間。

 ユイとカイルは、並んで腰を下ろしていた。


「俺さ、弱くなって、正直悔しいことも多かったけどさ」


 ぽつりとカイルが呟いた。


「ごめんなさい……」


 ユイはうつむく。


「でもさ、よかったこともあるんだよ。人の気持ちが少しわかるようになって、仲間もできて。前だったら理解できなかったことも、今は少しわかる気がする」


 カイルは、静かに笑った。


「だから、そのことについては──感謝してるよ」


 ユイは驚いたように目を見開いたが、すぐにふっと微笑んだ。


「それは……すごく、嬉しいです」


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