【第39話】救済と感謝と
魔王の間に戻ったレイたちを、ユイとカイムが迎える。
「あらあら」
「まあまあ」
「……なんだよ、どうしたんだ?」
二人は揃って、まるで何もかも見通していたかのように微笑んでいた。
「……理解が早いな」
レイがぼやくと、カイムが穏やかに頷いた。
「あなたたちの“記憶”、しっかり見せてもらいました。面白かったですよ」
カイムの目が細まり、ユイの瞳がほのかに紅く光る。
「……もしかして、俺だけついていけてない?」
* * *
セレーナにとって、すべては完璧なはずだった。
魔王に倒されれば、それでよし。
もし倒されなければ、絶頂の瞬間に、自らの手で息の根を止めてやる──
そう、思い描いていた。
だが、予想外の事態が起きた。
レイたちの足が、真っ直ぐこちらへと向かってくる。
反射的に身構えたその瞬間──
乾いた音が響いた。
「お前は、殺す価値もない。……気が変わらないうちに、とっとと消えろ」
レイの拳が、彼女の頬を打ち抜いていた。
セレーナは誰にも顔を見られぬように背け、踵を返す。
そのまま、無言で走り去った。
誰も追おうとはしなかった。
そこに残されていたのは──
かすかに目を開けた、ユウトの姿だった。
* * *
「あれ、リズ? また会ったね。……どうしたんだい、そんな泣きそうな顔して」
ユイが軽く微笑む。
リズは言葉にならない嗚咽をこらえながら、ユウトの胸へ飛び込んだ。
もう、取り返しのつかない場所にいたはずの人が、目の前にいる。
それだけで、すべてが報われた気がした。
* * *
その頃、魔王の玉座の間。
ユイとカイルは、並んで腰を下ろしていた。
「俺さ、弱くなって、正直悔しいことも多かったけどさ」
ぽつりとカイルが呟いた。
「ごめんなさい……」
ユイはうつむく。
「でもさ、よかったこともあるんだよ。人の気持ちが少しわかるようになって、仲間もできて。前だったら理解できなかったことも、今は少しわかる気がする」
カイルは、静かに笑った。
「だから、そのことについては──感謝してるよ」
ユイは驚いたように目を見開いたが、すぐにふっと微笑んだ。
「それは……すごく、嬉しいです」




