【第37話】やったぞ、カイル!
時は少し戻る。砂漠の洞窟へ向かう直前の夜。
リズの宿の一室で、カイルとレイが肩を並べて座っていた。
「なあ、あの魔王──コピーするらしいんだ」
「ほう?」
「相手の戦い方を見て、吸収して、それを自分のものにする……前に、似た相手と戦ったことがあるんだ」
「つまり……?」
「先に倒せばいいってことだ。コピーされる前にな」
「先手必勝か」
「そういうこと」
「……その情報、信用できるのか?」
「自分のことが信用できないか?」
「──お前の言うことなら、信じるよ」
* * *
迷宮の最奥。
玉座に座る人形の魔王が、こちらを無感情な目で見下ろしている。
その隣に立つのは、黒髪の、そしてユイに瓜二つの顔をした側近だった。
レイが静かに一歩、前に出る。
「──俺がやる。手を出すな」
「みんな、動かないで」
ユイがぴしゃりと告げる。
場の空気が張り詰めた。
次の瞬間、レイの姿がかき消えた。
風が逆巻き、閃光が走る。
魔王の剣が振り下ろされる前に、レイの蹴りがその腕をへし折った。
反撃の魔法が撃たれるより早く、無数の氷柱が心臓部を貫く。
そして──
「──行くぞ」
瞬間、風が裂ける音。
魔王が反応する間もなく、レイの一撃がその首を断ち切った。
ゴトリ、と音を立てて首が転がる。
「──やったぞ、カイル!」
レイが振り返って叫ぶ。
「そんな……苦労して……作ったのに……」
ユイに似た側近が声を漏らす
だが──
その瞬間、カイルの身体が黒い靄に包まれた。
「え……?」
それがカイルの最期の声だった。
次の瞬間、カイルの膝が崩れ落ちる。
瞳はすでに閉じられていた。




