【第34話】いざ、勝負
「いざ、勝負!」
ミユキがぴしりと薙刀を構えた。
「……どうしてもやるのか? これから魔王を倒しに行くんだぞ」
「だからこそです! その前に、レイ様に借りを返しておきたいのです!」
「はあ……やれやれ」
構えるレイの掌に、魔力がじわりと集まる。
一瞬の静寂。次の瞬間、ミユキが駆け出した。
空を裂くような斬撃。レイが放つ無数の魔法陣。だがそれをすべて――
「甘い!」
ミユキは回避していた。鋭く跳躍し、地を蹴り、回転しながら身体を折りたたむように潜り込む。
レイの頭上から火球が降り注ぐ。その一撃を見上げずに感じ取り、ミユキは低く飛んだ。
その間にもレイは無詠唱で次々と魔法を放つ。氷の槍、雷の矢、風の刃――
だがミユキの動きは止まらない。避けるというより、そこにいることを許していないかのような残像が舞う。
薙刀が斜め下から突き上げられ、レイの顎を狙う。
レイは咄嗟に後退し、手を翳して爆風を発生させた。だがミユキはすでに横へ跳んでいる。
「ちょっと、成長しすぎじゃないかお前……!」
苦笑するレイの頬に、ミユキの薙刀の刃がかすった。
「っ……!」
瞬間、レイが踏み込む。足払い。
ミユキの身体が浮き、地面に転がった。
「参りました……!」
肩で息をするミユキに、レイが手を差し伸べる。
「ありがとう。いい試合だった」
――が、その静けさを破る声があった。
「さて、次はわしらじゃのう!」
ムン老師がどこからか飛び出してきた。
「ミユキの仇は、わしが取ってやる!」
「……死んでませんよ!?」
「どっから現れたお前ら!」
タケル王までが、大剣を片手にノリノリで現れる。
レイの額に青筋が浮かんだ。
* * *
そして、戦いの後。
夕陽の下、レイはリズと並んで腰掛けていた。
「で? そこからどうなったの?」
「……勝てたと思うか?」
空を見上げるレイの肩が、すっと落ちた。
その頃。
とある静かな部屋の中
一人の女が、注射器を指先で軽く弾く。
「ふふ……ふふふふ……地獄を、見せてあげましょう。レイ……」
セレーナの唇に、ぞっとするほど冷たい笑みが浮かんでいた。




