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万能勇者、敗北。そして二度目の人生は最弱から   作者: 虚無しお
第1部5章:最後まで、共に行こう
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【第34話】いざ、勝負 

 

「いざ、勝負!」


 ミユキがぴしりと薙刀を構えた。


「……どうしてもやるのか? これから魔王を倒しに行くんだぞ」


「だからこそです! その前に、レイ様に借りを返しておきたいのです!」


「はあ……やれやれ」


 構えるレイの掌に、魔力がじわりと集まる。


 一瞬の静寂。次の瞬間、ミユキが駆け出した。


 空を裂くような斬撃。レイが放つ無数の魔法陣。だがそれをすべて――


「甘い!」


 ミユキは回避していた。鋭く跳躍し、地を蹴り、回転しながら身体を折りたたむように潜り込む。


 レイの頭上から火球が降り注ぐ。その一撃を見上げずに感じ取り、ミユキは低く飛んだ。


 その間にもレイは無詠唱で次々と魔法を放つ。氷の槍、雷の矢、風の刃――

 だがミユキの動きは止まらない。避けるというより、そこにいることを許していないかのような残像が舞う。


 薙刀が斜め下から突き上げられ、レイの顎を狙う。

 レイは咄嗟に後退し、手を翳して爆風を発生させた。だがミユキはすでに横へ跳んでいる。


「ちょっと、成長しすぎじゃないかお前……!」


 苦笑するレイの頬に、ミユキの薙刀の刃がかすった。


「っ……!」


 瞬間、レイが踏み込む。足払い。


 ミユキの身体が浮き、地面に転がった。


「参りました……!」


 肩で息をするミユキに、レイが手を差し伸べる。


「ありがとう。いい試合だった」


 ――が、その静けさを破る声があった。


「さて、次はわしらじゃのう!」


 ムン老師がどこからか飛び出してきた。


「ミユキの仇は、わしが取ってやる!」


「……死んでませんよ!?」


「どっから現れたお前ら!」


 タケル王までが、大剣を片手にノリノリで現れる。


 レイの額に青筋が浮かんだ。


 * * *


 そして、戦いの後。

 

 夕陽の下、レイはリズと並んで腰掛けていた。


「で? そこからどうなったの?」


「……勝てたと思うか?」


 空を見上げるレイの肩が、すっと落ちた。


 

 その頃。

 

 とある静かな部屋の中

 

 一人の女が、注射器を指先で軽く弾く。


「ふふ……ふふふふ……地獄を、見せてあげましょう。レイ……」


 セレーナの唇に、ぞっとするほど冷たい笑みが浮かんでいた。


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