表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万能勇者、敗北。そして二度目の人生は最弱から   作者: 虚無しお
第1部5章:最後まで、共に行こう
33/41

【第33話】弱いから見えるもの

 

 焚き火の音が、ぱちぱちと乾いた夜気に弾ける。


「どうしたんだい、元気がないね、カイル」


「はあー……」


 気の抜けたため息に、ノーランは小さく笑った。


「魔王を倒すんじゃなかったのかい? たしか、この大陸の真ん中あたりにある砂漠に、洞窟が隠されてるんだろ?」


「まあ、それはそうなんだけどさ。はあー……」


「なにがあったんだい?」


「……俺って、役に立ってんのかなと思ってさ」


「急だね。なにがあったの?」


「ユイに、いろいろ言われてさ」


「喧嘩でもしたのかい?」


「いや、そうじゃない……こともない、かも?」


「羨ましいけどね。ぼくからすれば、喧嘩するほど仲が良いっていうしさ」


「うーん、色々衝撃的すぎて、どう言っていいか分からないんだけど……たとえば俺がさ、レイくらい強かったとしてだな」


「また唐突にくるねえ」


「まあ聞いてくれよ。その力を奪われて、今の状態になってるんだけど……どうも、その裏で手を引いてたのが、ユイだったみたいなんだ」


「うーん……なんて言っていいのか分からないけど、それこそ、誰かにそそのかされたとか、理由があってやったとか……そういうの、ないのかな?」


「それはあるな。魔王に洗脳されてたとか……あいつなら、ないとも言い切れないか」


「それとね」


 ノーランは、火にかけた鉄鍋を木の棒でくるりとかき混ぜながら、ふっと目を細めた。


「弱くなったからこそ、分かることもあるんじゃないかな。人のありがたみとか、自分の限界とかさ。……レイを悪く言うつもりはないけど、あの人には分からなかったことも、今のきみには分かるようになってるんじゃない?」


「……それも、そうかもな」


 カイルは、ほんの少しだけ、口元をゆるめた。


 火の粉が夜空に舞い上がる。遠くで風が、砂を払うように鳴いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ