【第16話】 ぼんず到達、そして……
ぼんず──それは、マルカク大陸の南東の端に位置する小島である。
小島といっても、その大きさは淡路島ほど。大陸とは橋で繋がっており、アクセスは容易だ。
ちょうどその大橋を渡りきったところで、カイルたちは立ち止まっていた。
「キーリカから一か月くらいかかるはずなのに、なんだか一瞬で着いた気がするわ。驚きね!」
リズが感嘆の声を上げる。
「お前の着物の方が驚きだよ。いつの間に買ったんだよ」
カイルの視線の先には、淡い紫の着物を身にまとったリズの姿があった。
「いつまでもローブじゃ野暮ったいでしょ。ありがと、ミユキちゃん。着付け方、教えてくれて」
「いえいえ。お似合いでござりまする」
微笑むミユキに、リズが照れたように笑い返す。
「そんなことより飯だ」
「そんなことって何よ!」
「そうですよ、カイル様!」
ユイが小さく抗議の声を上げる。
「まあまあ。ここの海鮮、うまいんだって」
一行は、港近くの小さな店──『海幻亭』へと足を運んだ。
「いらっしゃい」
「よう、大将。本日の刺身定食くれ」
「いきなり日替わり頼むとは通だな、あんちゃん。来たことあったっけ?」
「この店は、ぼんずでもなかなか知られていない。よく知っておられたな、カイル殿」
「ここの刺身と海鮮丼はマジでうまいんだよな」
「おいしそうです〜」
「生魚食べるのって……大丈夫なの?」
「衛生管理が、ぼんずはしっかりしてるからね。生卵もいけるんだよ」
ノーランが補足する。
「そうそう、エルレンと一緒にすんなよな」
「ほんとかしら……独特な味だけど、なかなかイケるわね」
「だろ?」
「海鮮丼、おかわり」
すでに完食していたレイが、さらっと注文する。
「あんた、いつ食べたのよ……」
リズが呆れるのも無理はない。
食後、一行は町の入り口近く、大橋のたもとまで戻ってきていた。
「さーて、どうすっかなー……ん?」
人だかりができている。その中心には──さらされた複数の首が並べられていた。
「……あれは」
レイが声を漏らす。視線の先、無造作に置かれた首の中の一つ。
それは、かつて自分たちを襲った男──ライゾウのものだった。
これにて第2章、終了です。
次回からは第3章──動乱のぼんず編が始まります。どうぞお楽しみに!