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秘密組織『ルース』   作者: 日々レイオ
第2章 名古屋獣人化編
21/22

秘密21 暗殺者

西(にし)一族。422年前から存在する暗殺一家。依頼された仕事はミスなく必ず遂行されることで裏社会では有名だった。政府にも何度も使われたことがある。アタシはその一族の当主の娘として産まれた。





(あんず)、あんたは本当にいい子だね。勉強もできて訓練も1位、お母さん嬉しいよ」


「ありがとう、母様。必ず期待に応えてみせます」


当主の娘としてもちろん期待も大きかった。けどアタシは才能があったのか両親の期待を大きく上回った。そんな期待にアタシはうんざりしていた。


「杏様! 訓練でまたもや1位を取られたとか」


「杏様流石です!」


一族専用の学校に行けば分家の者たちにひたすら褒められる。そんな日々を永遠に繰り返す。うんざりしていた。


11歳。その歳は西一族が暗殺者として初任務をこなす歳だ。周りと比べかなり優秀だったアタシは熟練者並の任務に着いた。


「この男は秘密組織『ルース』の名古屋部隊社長だ。杏にはこの男を暗殺してきてもらう。依頼主はそいつの部活だ。こいつがいて昇進できない。だから暗殺してほしいという馬鹿な依頼だ。だが、ここのセキュリティは未知だ。依頼難易度はかなり高い。そこで杏に声がかかったというわけだ。杏できるか?」


「はい、父様。明日の朝には必ず屋敷に戻ってきます」


「流石私たちの娘だ」


その夜、秘密組織『ルース』の基地に隊員の振りをし潜りこんだ。疑われることはほとんどなかった。ただひとつだけ厄介なことがあった。記憶した地図には司令室まで真っ直ぐ進めば辿り着くと記載されていた。しかし実際に行ってみれば司令室方向の奥には扉があり、そこは生体認証がなければ入れないよう対策されていた。そこを通らなければ暗殺対象の寝室に潜入できない。だからその対象の部屋へと繋がるダクト管を使って向かった。部屋に繋がる網を壊し、静かに対象の元まで向かった。その男の上に馬乗りになり殺そうとした瞬間だった。その男に腕を掴まれた。


「なっ?!」


「……僕狙われるぐらい偉くなったんだね」


その男は襲われているのにひどく冷静だった。アタシは人殺し訓練でミスなんてしたことがなかった。この日初めて敗北する、悔しいという感情が流れてきた。


「ん? まだ幼いじゃないか……」


「離せ! 殺させろ!」


「嫌だよ、僕まだ死ぬ予定はないからね………それより君……なんで泣いてるんだい?」


気づかなかった。悔しさからか、それとも別の理由かアタシの目から大量の涙が溢れていた。


「泣いてない! お前を殺す! そうすれば……」


「じゃあ殺す?」


「は?」


「君が自分のために僕を殺すなら喜んで身を捧げる。けど君が誰かのために僕を殺そうとするなら僕は君を殺す……どうする?」


「 アタシは! 父様と母様の期待に応える! 娘として! それだけだ!」


「…………それ苦しくないのか?」


「…………え……?」


未だに覚えている。あの日アタシが殺そうとした男はアタシに同情するかのようにひどく悲しそうな顔をしていた。


「親のためって……君の意思は? 産まれた時からそうなのかい?」


「……そうだ……アタシはあの偉大な両親の娘でそうするのが当たり前で……」


「君は本当に両親の期待に応えたいのかい?」


「……そうするのが当たり前で……」


「違う……君の本当のことを知りたいんだ」


「………アタシは…………アタシは! ありのままに生きたい! 親の期待なんて応えたくない! あんな家出たい! もっと可愛い服を着て、遊んで………もっとオシャレをしてみたい!」


初対面の男になぜこんなことを言えたのか未だにわからない。けどこの本音はきっとアタシが無意識のうちにずっとやりたくてしかったなかったことだ。幼い時からすべて強要されていた。一度だけファッション雑誌を見たことがある。そこに写る女の子たちは色々な可愛い服を着ていた。髪を巻いて、化粧をして、なんて可愛いらしいんだろう。そう感じた。


「……そうか…………お前こんなことはやめて僕とオシャレをしよう。きっと可愛い」


「……っ……」


「お前は今日から僕と暮らす。決定事項だ」


「でも……」


「書類とか名前とかは任せとけ、そういうの得意なやつがいる。そういえばお前名前は?」


西宮(にしみや)杏……」


西(にし)?! かの有名な暗殺一家じゃねぇか! ………杏」


「……うん」


「お前は今日をもって西宮杏は捨てる。そして今日から東山(ひがしやま)杏、どこにでもいるかなり可愛い女の子だ。僕は東山尚人(なおと)。今日からお前は僕の娘だ」


「……うん! 尚人!」


小刀を捨てた少女は父親を強く抱き締めた。


うんざりしていた日々を変えてくれた尚人。アタシの恩人。自由に生きていいことをアタシはこの日初めて知った。


「尚人?! パパって呼びなさい!」


「嫌だ! 尚人がいい!」


「……………まぁいっか……」


尚人と一緒に過ごす日々は毎日が楽しく最高の日々だった。一緒に過ごし、ちょうど2年経過した日、尚人にルースに入らないかと誘われた。


「………アタシ……もう武器は持たないって決めた……だから……」


「じゃあ見学でもしてみないか? ルースは人殺しの組織じゃない、皆を守るために武器を持って戦う。それにルースは討伐隊だけじゃなくて研究隊や整備隊もある。明日一緒に出勤しよう」


「……うん……」


次の日尚人と一緒にルースの名古屋部隊の基地へと向かった。そこは大きな食堂にたくさんの机。そしてかっこいい隊服を着た大勢の人がいた。


「ここがルースの基地だ、そんなに怯えなくて大丈夫だ」


あの日のことは忘れない。怖くて尚人の服をぎゅっと引っ張っていた。今思うと恥ずかしい。


「東山社長! (まめ)さんが呼んでますよ!………ってこの子は?」


「この子は俺の娘の杏だ」


「…………え?………え? え? え?! 社長って子供いたんですか?!」


「なんか誤解してないか? この子は養子だ」


「あっ………そうでしたか……この前僕は結婚しないとか言ってたのに裏切ったかと思いましたよ」


「裏切ってない」


「あはは! それより早く研究室行った方がいいですよ!」


「はいはい、仕事頑張れよ」


「はい!」


あの人は誰だったのか。聞く余裕がないほど緊張していたのだと思う。尚人に連れられ研究室へと行った。そこは薬品の匂いがこびりついた慌ただしい部屋だったのを覚えている。


「社長! やっと来たんですね! こっちです」


尚人に着いていき小部屋の中へと入った。そこには世間で騒がれている悪物の亡骸が置かれていた。死臭はまったくなかった。


「こいつの血を検査してみました。こいつの血は死んだはずなのに生きているんです」


「……なるほど」


「生きていることを仮定し、先程切れた血管を繋いでみました。すると鼓動が戻ってきたんです。すぐ殺しましたが」


「つまり誰かの手を借りれば不滅ということか」


「恐らく……」


アタシはこの話を聞いていた気になってしまった。血管以外を切っても繋がるのか、内蔵を潰しても蘇るのか。好奇心に勝てなかった。話し込んでいてアタシには当分気づかないだろうと思い、ゴム手袋をして近くにあったメスで悪物の脳みそを切った。


「……わぁ……」


「………そうだな……それはほうこ………く……杏?! 何やってるんだ!」


「尚人見て! 血管だけじゃなくて脳みそも切って繋げたら再生したの! 心臓も! 内蔵も! ねぇ、他はどうなってるの?! もっと調べさせて!」


アタシはあの日から悪物に興味を持ち始めた。毎日研究室に行き、豆ちゃんの研究の手伝いをした。楽しかった。けど次第に死体だけでは満足できなくなってしまった。


「あのね、尚人……」


「なんだ?」


「討伐隊に入りたいの……」


「討伐隊?! 研究隊じゃなくて?! 討伐隊?!」


「うん! もっと知りたいの! 悪物どうやって動いて、どうやって攻撃するのか! だからお願い!」


「……………僕は正直討伐隊員になるのは反対だ……そもそも研究隊がぴったりと思って連れて行ったんだ……まさかの討伐隊…………………」


「お願い! アタシ頑張るから! 研究も討伐も両方ともしたいの!」


「…………うーん………うーん…………………いいぞ」


「ほんと?! やったー!!」


「ただし条件がある」


「なに?」


「絶対死ぬな」


「死なないように厳しく訓練してよ」


その日からアタシは討伐隊としてデビューした。悪物を近くで見て戦える。最高の日々だった。13歳で入隊して15歳でA(エース)に昇格した。A(エース)になった冬、そこで東京で行われるA(エース)が全員集まる会議にも参加した。その時、現A(エース)のれぇくんと(てる)先輩、悠斗(ゆうと)先輩は既にいた。会議が終わったあと一緒に東京に来ていた尚人に呼び出された。紹介したい子がいると、その子はらんちゃんだった。東京部隊に所属している討伐隊で、尚人の妹の娘。つまり姪。


「この子は僕の姪の若尾鈴蘭(わかおすずらん)。東京部隊討伐隊のQUEEN(クイーン)だ。鈴蘭この子は僕の娘の杏だ」


「鈴蘭ちゃんよろしく」


「よろしく」


「ねぇなんて呼べばいい? 鈴蘭ちゃん?」


「別に……好きな呼び方で……」


「じゃあらんちゃん!アタシは杏でいいよ!」


「うん……杏……」


尚人に救われてからずっとずっと楽しい日々を送ってきた。けどあの習った癖が消えることはなかった。Aになったばかりの時アタシの専用武器はアサルトライフルだけだった。けど何かが足りない。そうわかって尚人に進言した。


「小刀を装備したい?! 絶対ダメだ!」


「これはアタシの(ごう)だから。約束する。絶対人前では使わない。人は殺さない。………………やっぱりどれだげ綺麗な道に進んでも過去のことって消えないんだね」


「………消えないか…………わかった……絶対人を殺すな」












「……ごめん…………尚人………約束破っちゃうかも…………………ねぇ……うさ耳パーカー…………死への恐怖を味わいながらゆっくり死ぬか、脳みそを貫いて苦しいのを味わず死ぬかどっちがいい?」


瓦礫を踏みながらゆっくりと近づく杏に参葉は恐怖、ただそれだけをかんじていた。


(……まさか! まさか! 西一族の! しかも当主の娘?! 行方不明になっていたはずっす! こんな所にいたなんて………とにかく逃げるしか!)


切れた右腕の止血をしながら立ち上がり杏から逃げる。


「逃げるってことはアタシの好きにしていいってことだよねー?」


一瞬で参葉(さんは)の元に追いつき、首元に小刀を当てる。


「……簡単に死ねると思うなよ……お前は死ぬ恐怖に襲われながらゆっくりと死へと向かう」


「……あっ……あっ……」


見えない速さで杏の小刀が参葉の左腕を落とした。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


「何怖がってるの? 次は両足だよ」


「ひっ?!」


両足を切り落とされ参葉は地面に仰向けになるしかなかった。


「ねぇ、このまま地獄のような苦しみを味わって死んで……アタシの大切な人が護る街を獣人化した罰だよ」


小刀を鞘にしまい、杏はその場を去った。


「……約束守れなかった……」





最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

杏が武器をアサルトライフルにしたのは刀を持つとどうしても人を殺すということが頭から離れなくなるからです。しかしアサルトライフルだけではなぜかしっくりこない。そのため万が一に備え小刀を装備しています。西一族の訓練で何百人とあたりまえのように人を殺してきた杏は人殺しへの躊躇など一切ありません。

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