秘密19 みーつけた
「フンフン♪フフン♪フンフフフフフ♪」
とある研究室のような場所でうさ耳のフードを被った人物が鼻歌を歌っていた。その人物は肩掛けの小さな鞄にガラスのカプセルをたくさん詰めていた。
「参葉、なにしてん?」
「依様! お疲れ様っす!今カプセルを詰めてるとこっす!」
「ふーん……もしかして仕掛けるん?」
「はいっす! 1日経ったんでルースはそろそろこのグミが原因って気がついてると思うっす。だからその準備中っす」
「そっか……気ぃつけてな。俺、こうみえてもあんたのこと気に入ってるんやから。掃除とかな」
「光栄っす! 依様もこんなとこで油売ってるとまた鞠様に怒られるっすよ!」
「いつものことやから鞠兄さんもわかってくれるって」
「それならいいっすけど……そろそろ時間なんで俺行きます! また!」
「気ぃつけてな」
参葉と呼ばれた人物はその場を後にした。ほとんど明かりのない研究室のような場所で依は椅子に座り飴をくわえた。
「……失敗せんとええけど」
(……カプセルも設置できた………あとは……渥美恭也を持ち帰るだけっす……)
駅の時計近くで壁にもたれスマホを触る。参葉は飴を舐めながらにやにやして待ち続けていた。カプセルには時間になったら発動するよう仕掛けが付いている。まだそのことを知らないルースは慌てるだろう。
(……監視カメラのデータは消した……俺が配っていたなんて当然気づけない……こんな高みの見物最高っす!)
上機嫌の鼻歌をまじえながら飴をカラカラと舐める。そんなところに誰かが話しかけてきた。
「あのー、すみません」
「なんっすか?」
スマホをポケットにしまい、棒付きの飴を口から出す。下を向いていたため話しかけた人物の顔を見るため正面を向いた。
「みーつけた♪」
目の前にいたのはルースの戦闘服を着た杏だった。
「……はぁぁぁぁ?! なんで?!」
「にゃはは! どうせルースはまだ俺にたどり着けてない……とでも思ってたんでしょ? ざーんねん☆ ルースはね国の信用得てるからこんなこともできるんだよ」
そう言った杏はポケットから何やらスイッチを取りだした。押した瞬間駅内にいた人間が跡形もなくいなくなった。
「今日駅内にいた人間は小型プロジェクターが映し出した幻。そして今日は駅全面閉鎖。君みたいな自信に溢れる人はまさか! 誰ひとりいないなんて思いもしないでしょ? そこで呑気に現れた君をアタシたちは待ってたんだよ。それに! 獣人化した人たちはルースの薬でほとんどが治ってる。残念でしたー♪」
「…………獣人化なんて今更関係ないっす……俺も備えはしてあるんで」
突如イヤホンマイクに市内数カ所にて悪物を観測とアナウンスが入った。
「………やっぱそうくるよね……」
杏が髪に付けていたヘアクリップを外した。クリップについていた赤い水晶に触れるとヘアクリップはアサルトライフルへと変身した。
「残念だけど……君、殺すね?」
「国の英雄が人殺ししていいんっすか!」
「……ルースはしないよ……アタシ個人がね」
参葉の後ろから弾が飛んでくる。撃ったのは恭也だ。しかし参葉は孔雀の大きな羽を使ってガードしていた。
「なっ?!」
「渥美恭也みつけたっす」
弾を塞いだ孔雀はどうやら参葉が使役している悪物のようだ。実際の孔雀より大きく、羽も大きい。
「恭くん! プランB!」
「了解です!」
エスカレーターの陰に隠れた2人は杏のアサルトライフルで参葉に射撃する。参葉は孔雀の羽でガードし、羽を弾のように杏たちへ射撃する。
「渥美恭也! 君を殺したりはしないっす! 初めなんっす! 移植しないで悪物の力を得た人間は! だから俺と一緒に来てほしいっす! そして君を調べさせてくださいっす!」
「……聞いた? 殺さないって……恭くんどうする?」
杏は恭也を試すような聞き方をした。それはまるであの応答にYESといえば君だけは助かる。けどそうなると私たちは死ぬかもしれないと言っているようだ。もちろん恭也の回答は決まっている。
「……ごめんなさい! 俺! 行きませんから!」
「そうっすか……じゃあ…………殺してでも連れてくっす……」
射撃戦を何度も何度も繰り返していく。参葉の使役している悪物は羽を何度も再生し弾切れならぬ羽切れすることはない。しかし杏が撃っているアサルトライフルには弾に限りがある。最初にセットしてある分と両足にガーターベルトのようにしてつけてある分しかない。片方は使い終わってしまっている。
「……ちっ……しぶといなぁ」
「先輩……このままじゃ……」
「やばいよねー……プランBとか言いながら最初以外なーんにも考えてないんだよねー……言ってみたかった!」
「じゃあこのまま終わりですか?!」
「やだなー、あるよ一つだけ形勢逆転させる方法」
「なんですか?」
「……君が変身すればいい……咄嗟に変身したあの時と違って、君の意思で」
「……死んでも文句言わないでくださいね」
「大丈夫、アタシはそんな簡単に死なないから」
意を決した恭也の体が半悪物へと変わっていく。見た目は前回と変わらず半ドラゴンのような姿だ。ただ1つ違うのは変身の最中恭也が頭を抱え始めたことだ。
「……ぐっ! ……うっ………いっ……」
「恭くん?」
「……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
しゃがみこみ頭を抱えていた恭也がいきなり立ち上がった。その目は普段と違いタムと同じ美しい金色の瞳だった。杏と目が合った瞬間突然杏に襲いかかってきた。杏がギリギリのところで躱す。
「……………あっっっっぶな! ……怖い怖い……恭くん……今君には何が見えてるの?」
『なんでこんなこともできないの! 青はできてるのよ! 兄である恭也ができなくてどうするの!』
『お前はもっと医者になれるぐらい勉強しろ! この問題が解けるまで飯は抜きだ!』
『兄ちゃん! 見て! 俺クラスで1番とったんだ!』
『恭也くんのお父さんとお母さんお医者さんなんでしょ? いいなー』
『あんなやつ産むんじゃなかった……』
(……苦しい……息が詰まる…………誰か誰か……俺を認めて……)
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
近くにある壁や物あらゆるものを破壊していく。今の恭也に残っているのは怒りただそれだけだ。
「あれが…………初代の力………素晴らしいっす……あれを使役できたら……」
「あれが素晴らしい?よく言うよ。見てて可哀想」
降り注ぐ瓦礫の中、杏が参葉へと近づく。
「……素晴らしいっすよ、それに美しい……さっきから言いたかったんすけど……渥美恭也が変身しなくてもなんとかなったんじゃないんっすか? もしかしてドSっすか?」
「あんたたちにとって恭くんは研究対象かもしれないけど、ルースにとって恭くんは最後の手札なの……けどあの子はまだ心のどこかで受け入れてない……あたしはあの子をみんなに認めてもらいたいの……あたしがそうだったように……」
『なんでこんなこともできないの!』
(……うるさい……)
『もっと真面目にやれ!』
(うるさい……うるさい……うるさい!)
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
凶暴化した恭也は目に入るすべてのものを壊していく。駅にいたはずの恭也はいつの間にか街に出ていた。
「恭也! どうしたの?! タムだよ!ボクがわからないの? 」
暴れる恭也の周りをタムが飛んでいる。その瞳は心配そうで今にも泣き出しそうだ。
「恭也…………このまま真っ直ぐ進んだら、戦闘区域から出ちゃうよ……」
駅から半径10km圏内は戦闘区域になり住民は避難している。しかしこのまま真っ直ぐ進むともうすぐ恭也は人を殺してしまうだろう。一方で、東京部隊のAたちは参葉が発生させた悪物の討伐をしていた。
「数多いですね」
「名古屋部隊のKINGとQUEEN、JACKもいるけど……今日中に終わるか不安ね………それにしても……なんであいつはあんなに身軽そうに戦ってるのよ……」
話題になっている蓮介は大鎌を使い小型悪物や大型悪物の首を素早く落としている。周りにいる名古屋の討伐部隊は蓮介の動きに見惚れている。
「……あいつ……本当に3位なの?………薮先輩と難先輩より速くない?」
「それはオレも同感です……師匠今でもわざと手抜いてません?」
「そうよね……まぁ蓮介は置いといてあたしたちもさっさと倒して終わらせましょ!」
「了解です!」
4階まである建物の屋上にいた鈴蘭と翔太は飛び降り、着地ついでに悪物を攻撃していく。鈴蘭はハンマーで悪物の頭を潰し、翔太は四肢を切ったあと鈴蘭を呼びハンマーで頭を潰す。
「あんたその武器変えたら? 刃の部分が小さくて頭と首攻撃できないじゃない」
「俺はこれでいいんです。それにオレはこれ持ってますから」
翔太がポケットから取り出したのは透明な液体が入った瓶だった。ラベル名には注意という一言しか書かれていない。
「まさか……」
「そうです! 悪物だけに効く神経毒です! これを釜に垂らして攻撃すると死ぬので大丈夫です!」
「……なんか悪物が可哀想に思えてきた……」
ハンマーを担ぎながら翔太が四肢を切った悪物を眺めていると突然後ろから大きな破壊音が聞こえた。
「なに?!」
鈴蘭と翔太が振り向いた先にはこちらに殺意を持って飛びかかってくる半悪物化した恭也がいた。
最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。
恭也は初めて悪物化した時は無我夢中だったため変身できましたが、それからは強すぎる力に恐怖が勝ち変身することすら拒みました。ただ身体能力が上がることは生身の体にも反映しています。
鈴蘭が言っていた難先輩とは大阪部隊に所属するAの人です。




