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秘密組織『ルース』   作者: レイたる日々
第2章 名古屋獣人化編
15/16

秘密15 気分転換

地下鉄に乗り、着いた動物園は植物園も兼ね備えた大きな動植物園だった。


「とーちゃーーく! らんちゃーーん! 早く早く!」


「待ってよ!(あんず)!」


ちなみに蓮介(れんすけ)と杏はかなり目立つので先程サングラスを購入させた。効果があったのかあまり目立っていない。


「杏、チケットは?」


「電子チケット購入したから大丈夫! もちろんみんなの分もね! アタシの奢りだから今日はめいっぱい楽しも!」









「師匠! コアラいましたよ!」


「ほんとだ……寝てる……可愛いな」


「癒されますねー」


「癒されるな」


蓮介と翔太(しょうた)がコアラの前から動く気配がなく壁際にいた鈴蘭(すずらん)が呆れている。


「あいつら声かけなかったら一生ここにいるわよ……」


「いいじゃん、気が済むまでいさせてあげよ。ここ最近忙しかったんでしょ? 息抜きと思ってさ……らんちゃんも前行って見てきなよ。可愛いよ」


「……まぁ……そうね……これは息抜きであってコアラが可愛いから見に行くわけじゃないからね!」


「はいはい」


鈴蘭が蓮介と翔太の所へ向かったことにより、恭也(きょうや)は杏とともに取り残されてしまった。


(……………なんか……気まずい……)


「ねぇ、(きょう)くん」


「はいっ!」


「にゃはは! そんなに驚かなくても大丈夫!

聞きたいことがあるだけ」


「聞きたいこと?」


「うん、恭くんの……()()について」


秘密。そう言われた瞬間どきりとした。知られたくない、軽蔑されたくない、嫌われたくない。額には汗が溢れ、心臓の音しか聞こえなかった。


「……ん………恭くん!」


「……あっ……すみません……」


「顔色悪いよ……ごめんね……知られたくない秘密なんて誰にでもあるよね……アタシもその一人だから……」


そう言った杏はコアラを見ている鈴蘭を儚げでどこか消えてしまいそうな目をして見ていた。


「……恭くんがここに来るって聞いて悪いけど君のことを色々調べさせてもらった。恭くんって本当は名古屋出身なんだね」


「……そうです……」


「でも東京に住んでる。しかも一緒に暮らしてるのは両親じゃなくて父方の祖父母。だから君と両親の間には何かある……そうでしょ?」


「……」


「沈黙は肯定と受け取っていいかな? ……なんか嬉しい」


(……何言ってるんだ……人の秘密を……知られたくない最悪のことを知って嬉しいだなんて……)


「………………アタシとそっくりで………」


嬉しいと言われたことで湧いていた怒りが一瞬にして収まった。彼女は恭也と似たような悩みを抱えている。そう思っただけでなぜか救われた気がした。


「……そっくり……」


「うん………アタシ今もだけど両親のこと嫌いなの……そこは君と一緒かもね……恭くん……アタシたちは仲間だよ……だからもっとアタシたちを……ルースを信用していいんだよ」


(会長に言われたあの言葉と一緒だ……まだ出会って1日も経っていないのに、こんなにも俺を心配してくれる………この人も……きっと)


「……いきなりこんなこと言われても困るよね……現に(てる)先輩は恭くんのこと敵対してるから……少なくとも名古屋部隊は東京部隊の味方だから安心して!」


「……あの……」


「なに?」


「俺の秘密がくだらなくても失望しませんか?」


「…………しないよ……確かに他人から見れば秘密なんて大したことないかもしれない……けど当人にとっての秘密は死んでも隠したいもの……それを笑ったり、失望したりすることはいじめと変わらない。アタシはどんな秘密でもありのままの恭くんを受け入れるよ。だからアタシの秘密を知った時も受け入れてくれる?」


「……はい」


「ありがと……じゃあ、アタシたちはまだお互いの詳しい秘密を明かしてはいないけどなんとなく知ってる仲間だね! よろしくシークレットフレンド!」


差し出してきた杏の手を握った。恭也の心はどこか軽かった。


「ひとつだけ忘れないでほしいの、誰かに秘密にしているってことはその誰かに()をついているってことだから。それだけは忘れないで」


握った手をぎゅっと強めた杏はいつになく真剣な顔だった。恭也は頷くしかなかった。


「でも親友のれぇくんにも秘密にしてるってことは……もしかしてアタシれぇくんより上かにゃ?」


「何が俺より上ですか?」


にやにやしている杏の後ろから何やら殺気を放つ蓮介が睨みつけていた。人一人殺してやるという顔だ。


「れぇくんには関係ない! アタシと恭くんだけの秘密!」


「なっ?! 2人だけの秘密ってなによ?!」


「鈴ちゃん先輩落ち着いて!」


この後5人は騒いでいたことで飼育員さんに怒られた。









「……らんちゃんのせいで怒られた……」


「なんで、あたしのせいなのよ! 蓮介も悪いでしょ!」


「れぇくんはアタシのどタイプなイケメンだから悪くない……」


「イケメンってだけでなんでも許すな!」


鈴蘭と杏がぎゃあぎゃあと言い合っているのを3人は後ろから呆れたように眺めていた。


「鈴蘭先輩と(あんず)先輩って仲良いんだな」


「そうだな、鈴先輩をルースに誘ったのも杏先輩だからな」


「へー……」


(あの時言ってた友達って杏先輩のことだったんだ……)


「いいなー、オレも歳上のタメ口で話せる友達ほしいなー」


(……………ん?)


「翔太……今なんて……?」


「? 友達がほしい」


「違うその前」


「歳上のため口で話せる」


「杏先輩って鈴蘭先輩の歳上?!」


「うん…………(あん)ちゃん先輩は高校3年で鈴ちゃん先輩は高校2年だから1歳差だよ」


(てっきり2人は同い年だと思ってた……年上なのにため口で話せる……2人はそれぐらい仲がいいんだ……)


恭也が2人を見つめる目は羨ましそうで、どこか悲しそうだった。


「れぇくん! うたくん! 恭くん! 早く次のところ見に行こ!」













「久しぶりの動物園楽しかったー! 誘ってくれてありがと!」


名古屋部隊へと戻る地下鉄の中で杏がぽろっと呟いた。


「いえ、そんな……杏先輩に案内してもらえて助かりました」


「恭くんいいこと言うね~。アタシあそこの動物園のプロだから」


杏が褒められたことに対してドヤ顔をし、隣に座る恭也の肩を組んでいる。鈴蘭はその様子を羨ましそうに見つめている。


「なんか……あんたたち仲良くなってない………?」


鈴蘭が妬ましそうに杏と恭也へと問いかけた。それに恭也が少しどきりとする。


「当たり前じゃん! アタシは恭くんのことを調べる先生だからもっと仲良くならないと!」


「「もっと?!」」


恭也と鈴蘭が口を揃えて驚いた。


「うん! 恭くんのあんなところやこんなところも知りたいな」


「あんなとこ?!」


「らんちゃん何考えてるの?」


「べべべべつに! 関係ないでしょ!」


「にゃはは! らんちゃんは(うぶ)だね~」


杏が鈴蘭をいじっている間に電車は目的地に着いていた。5人は降り定期をかざした。しかし恭也は残高不足で通り抜けることができなかった。


「チャージしてきます!」


「わかった、近くで待ってるな」


慌ててチャージし終え、改札へ向かおうとしていたところ、誰かが声をかけた。


「あの…………これ落としましたよ」


少年が渡したのは恭也の鞄に着いていたストラップだった。


「あっ……ありがと………う………」


その少年を見た恭也と恭也を見た少年はお互いに目を見開いた。それは恭也が会いたくて会いたくなかった人物だった。


「………(せい)……」


「……兄ちゃん……」


恭也は受け取ったストラップを強く握りしめた。











最後まで読んでくださり本当にありがとうこざいます。

自分でも書いていて想像しにくいのでいつか基地の見取り図やブレスレット(武器)がどんな感じなのか挿絵を説明とともに投稿します。

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