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秘密組織『ルース』   作者: レイたる日々
第1章 東京部隊入隊編
12/16

秘密12 訓練

「ちょっ! 速い速い!」


「え~、恭也(きょうや)さ~ん、これぐらい避けてもらわないと困りますよ~」


現在恭也は体育館でチームS全員で訓練をしていた。恭也は花梨(かりん)と木刀による打ち合いをしていた。しかし、恭也は防戦一方で花梨にボコボコにされていた。驚くことに花梨は初心者とは思えない動きで恭也を翻弄してくるのだ。


「は~い、恭也さん3回死んだ~。花梨の勝ちだね~」


「まいり……ました……それにしても兎みたいにぴょんぴょん跳ねて戦うんだな」


「う~ん……花梨の中では麒麟(きりん)なんだけどな~、でも兎も大~好き……恭也さんは~、何かを我慢して戦ってる感じがするな~」


思わぬ点をつかれ恭也の肩がピクっと揺れる。


「気のせいだよ! あっ! 文治(ふみはる)! 次、俺と訓練しよ!」


花梨から逃げるように文治を訓練相手に誘う。


「うん! やろ……」


(きょう)せんぱーい! 何してるの?」


文治の言葉を遮るほどの大きな声を出した翔太(しょうた)が恭也へと飛びつく。


「翔太?! 何って……訓練だけど……」


体育館を使用しているのは恭也たちチームSだけではない。そのせいで、翔太がくっつく恭也は注目の的になっていた。向けられる視線は疑問、尊敬、嫉妬、不満と様々なものだ。


「訓練! オレとやろ!」


「いや……でも……」


「だめ………?」


キラキラした瞳で恭也を見詰める。


「1戦ぐらいいいと思うぞ!」


「ほら! (ふみ)先輩もこう言ってるし!」


「まぁ……1戦ぐらいなら……」


「やった! 待ってて! すぐ木斧(もくおの)持ってくるから!」


(木斧って何………)


信じられない速さで武器を取りに行き戻ってきた翔太は嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねていた。まるで花梨の戦い方のように。両手には木斧が1本ずつあり、腰には謎のチェーンが巻かれていた。いつの間にか体育館にいた隊員たちは端に避け、2人の戦いを今か今かと待ちわびていた。


(なんか……前もこんな感じあった気が……)


「模擬戦始め!」


文治の合図により模擬戦が始まった。目の前にいたはずの翔太はいつの間にいなくなり、恭也の目の前にいた。振りかざす木斧を刀で防御する。


「ぐっ!」


「恭先輩すごい! 一発目をガードするなんて! でも……これからだよ!」


距離をとった翔太が腰に巻いてあったチェーンを外し、木斧に付属した輪っかに取り付けた。木斧と木斧がチェーンで繋がった状態になったのだ。これで翔太は近距離と中距離の2つの戦術を手に入れたことになる。もちろん攻撃力も増す。


「いっくよー!」


木斧を新体操で使うリボンのように扱い、恭也はなんとか避けるしか方法がなくなってしまった。


(くそっ……半悪物(はんあくぶつ)の変身状態になれば……)


考え事をしていた間に木斧を首に突きつけられ、恭也の敗北が決定した。翔太が恭也に耳打ちをする。


「恭先輩……師匠からの伝言です。半悪物の力に頼りすぎてはダメだ。このままだと恭也は悪物に侵食されるぞ。だそうです」


「…………っ……」


「追いつきたい、助けたい、その気持ちは分かります。けど自分が死んでは元も子もないということを理解してください。では、満足したので、恭先輩またね!」


翔太は嵐のように去っていった。取り残された恭也は今置かれた状況と翔太から手渡されたメモを見た。メモには半悪物である恭也を嫌う人が東京部隊に来る。要注意というメモだった。





(……俺を嫌う人………(れん)がこんなメモを渡すってことはそんなにやばい人なのか?)


恭也は月に一度精密検査を受けることになっているので研究室へと向かっていた。背負う鞄の中にはもちろんタムがいる。研究室の扉を開けると笠原(かさはら)佳代(かよ)が待っていた。そしてなぜか蓮介(れんすけ)と翔太がいた。


「おうおう! 待っておったぞ、恭也よ! では検査を始めるのじゃ!」


どうやら担当研究は佳代らしい。笠原は助手だろうか。


「それでは、ベットに仰向けになって、上のボタンを4つ外しておいておくれ。真守、そこの検査装置を恭也の胸元につけておくれ」


「はい」


テキパキと検査が進む中、蓮介と翔太が面白いものを見るかのようにジロジロと見てくる。


「蓮……翔太……なんでいるんだ……」


「恭也の検査するって聞いて、面白そうだなと思ったから」


「師匠と同じく」


「それにいざという時のために弱点でも知っておこうかなって」


「殺すつもりか!」


「あはは! そんな訳ないだろ、そんなことよりメモ見たか?」


真面目な顔になった蓮介が恭也に問う。


「見た……メモにあった嫌っている人って誰なんだ?」


「聞いたことはあると思う、元東京部隊にいた現A(エース) 1位……平薮輝(ひらやぶてる)


(聞いたことがある……ルースに入ってから大食堂でその名がよく飛び交ってる……ルースに所属する討伐隊員(とうばつたいいん)の憧れ……そんな人に命を狙われかけている?!)


「気をつけた方がいい、会長が擁護してくれているが薮先輩(やぶせんぱい)には通じない。A(エース)は組織の命に忠実に従う者とそうでないものがいる。薮先輩は後者だ。今、組織はA(エース)のご機嫌を取らないと機能していないからな。A(エース)には基本甘い」


「つまり……俺殺されても仕方ないってこと!」


「そうなるな」


「嘘だろ! まだタムスク完結してないんだぞ! あと半年で新作のゲーム発売もある!」


「ここまできて娯楽の心配しかしてないの逆にすごいねー」


歳下の翔太に哀れみの視線を向けられている。しかし、恭也は気にしている場合ではなかった。


(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい! 俺の生きがいが奪われる! そもそも生きることができなくなる! 最悪だ!)


「一応私からも注意しておこう、渥美(あつみ)くんも念のため()()さんに連絡入れとてもらえるかい?」


笠原が呟いた()()という言葉に恭也が肩をピクっと跳ねらせた。


「はい……」


返事をした恭也の顔は苦しいのを我慢したかのような笑顔だった。


「それにしてもルースって周りの人に話しちゃいけないのに逆に親には話さないといけないって謎ですよねー」


「親御さんに話すのは当たり前のことだ。こちらとしては未来ある若者をこき使っているのだから。それに入隊前に反対されることが多いからな」


(笠原さん大変なんだろうな……クレーム対処とかして疲れてるのかも……)


「喋っているところ悪いが検査終わったぞい、それでは検査結果を伝えるのじゃ。とりあえずタムについてじゃ」


検査中、タムはずっと恭也のいる検査ベットで寝ていた。


「一応タムも調べたが、高位の悪物(あくぶつ)が持つ魔能(まのう)は感じられんかった。まぁ、そこまでは良かったんじゃが……この魔能は階級S以上に指定される悪物しか持っておらん。まさかと思い、恭也の体を調べたら……お主の体から魔能を感じた。タムは魔能を恭也の体に置いてきたようじゃな」


「それってどのくらいやばいことなんですか?」


「むむ……どのくらい……まぁ簡単に言うとやばい、かなりやばい。恭也、お主このまま悪物の力に頼りすぎると死ぬぞ」


「「「「死ぬ?!」」」」


「あぁ死ぬのじゃ、魔能は人間の体に適合することは99%ない。体の中に根を張り、全身から血を出して死ぬ」


(想像しただけで気持ち悪い……)


「いくら人を助けられるからと言って不必要に使ってはダメじゃ。まずはルース指定の武器で戦えるようにならんとダメじゃな……あ! 蓮介! お主たち恭也を連れて夏に名古屋へ行ってはどうじゃ! 鈴蘭(すずらん)が毎年言っておるじゃろ!」


この言葉に蓮介がうげっと言い、苦虫を噛み潰したよう顔をした。


(すず)先輩は行ってますけど……俺たちは行ってませんよ……」


「よいではないか! あそこなら銃の使い方を恭也に教えやれる! しかもここよりもっと詳しく調べてくれるじゃろ! そうと決まれば、東山(ひがしやま)に話をしてくるのじゃ!」


「ちょっと! 会長! 俺、行くって言ってないですよ!」


「師匠……恭先輩のためだよ。大人しく参加しよ……」


「翔太……当日俺の盾となり剣となってくれ……」


「できる限り頑張りますね……」


(なんだこの落ち込みというか、謎の雰囲気……そんなに名古屋やばいのか?)


「会長も張り切ってるから、頼んだよ、蓮くん」


「……善処します……」


「それじゃ私は仕事があるから失礼するよ。次の検査が入っているから早く退出するんだぞ」

















研究室から出た恭也たちは大食堂へと向かっていた。


「なぁ名古屋なんで行きたくないんだ?」


恭也の質問に蓮介が明後日の方向を見てしまったので仕方なく翔太が説明する。


「えーっとね、名古屋は組織としてはいい場所なんだけど……その……A(エース)の人が癖強くて……師匠はそれに巻き込まれてるから……」


(なるほど……蓮は普段自分から絡みに行くことが多い……逆に言えば絡まれるのが嫌ってことか……初めて知った……)


「はぁ……行くことを考えるだけで憂鬱だ……」


珍しくしょげている蓮介を2人で慰めていると、大食堂が何やら騒がしい。ちらりと顔を半分だけ出して覗くと、笠原とキャリーケースを持った少年がいた。


「……薮先輩だ」


「あの人が……」


横顔だけでも伝わる謎の威圧。そして彼の瞳は光を写していなかった。


「修理、どのくらいかかる……?」


「この程度なら2週間で直る、私の家で良ければ泊まっていくか?」


「……いえ……俺の休息室残ってる……?」


「一応そのまま残してあるが……」


「そこに泊まる……」


「だが!」


「いちいち心配しなくていい……自分で決めたんだ……修理終わったら連絡して……」


「輝くん!」


笠原の静止を気にもせず、輝は休息室の方向へと去ってしまった。輝に尊敬の眼差しを向けていた討伐隊員は一瞬にして尊敬が消え、恐怖を感じただろう。目に入るものすべてを睨みつけ、何も信じていないその瞳は、孤高の一匹狼そのものだ。


「……こっわ! 俺、秒で殺される!」


「あはは、まぁ可能性はあるな」


「ですね」


「どうすればいいんだよ!」


「うーん……1つ目はなるべく薮先輩の視界に入らない。2つ目はなるべく1人にならないだな。隙があれば殺される。悪物を殺したと思えば罪悪感なんてないからな」










俺はとんでもないないものに取り憑かれてしまい、とんでもない人に目をつけられてしまったようだ。




最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

新キャラ平薮輝が登場しました。どんな感じの人物か簡単に説明すると人間に恐れられている狼のような感じです。なぜ笠原にあんな態度をとっているかは後々解き明かします。





魔能

S 、A+ 、A 、 A- 、 B 、C 、 D 、 E

強い←          →弱い

悪物は上記のように振り分けられている。その中でも最も強いS悪物は暴れるだけでなく、火を吐いたり、毒ガスを放つなど個体によって色々な力を持っている。これを初めて見た人がSNSで悪なる物体が持つ魔の能力つまり魔能と名付け魔能と呼ばれている。悪物の中にはS以上の存在もごく稀に現れる。それはZとされる。

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