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秘密組織『ルース』   作者: レイたる日々
第1章 東京部隊入隊編
11/16

秘密11 デート?!

(……早く着きすぎちゃった……)


黒のロングスカートをヒラヒラと揺らし駅前で鈴蘭(すずらん)恭也(きょうや)を待っていた。10時待ち合わせで現在は9時12分。舞い上がっていたのか思っていたより早く着いてしまったようだ。手鏡を取り出し、リップを塗り直す。


(……どうしよう……どうしよう……どうしよう! 緊張してきた! 大丈夫……服、新品でトレンドを取り入れた。メイクもナチュラル。髪も三つ編みをカチューシャにして目立ち過ぎず。大丈夫よ……落ち着きなさいあたし……)






そわそわした鈴蘭を遠くから面白そうに見詰める影が3つ。


(すず)先輩いつもよりおしゃれしてる、相当気合い入ってるな」


「前、オレたちと出かけた時とは大違いですね」


「それにしても渥美くん遅いな」


影の正体は蓮介(れんすけ)翔太(しょうた)文治(ふみはる)だった。3人はこっそり尾行しているようだ。謎のサングラスまでつけている。


「文治先輩面白いこと知ってたよね」


「文治ナイス!」


「ここここ光栄です!」


文治が恭也と鈴蘭のデート?を知っていたのは


渥美(あつみ)くん! 土曜、一緒に特訓しないか!』


『あー……ごめん……その日鈴蘭先輩と出かける予定があって……』


『そうか! 楽しんできてくれ!』


恭也に断られ大食堂で悩んでいたところを蓮介と翔太に声をかけられた。


『文治久しぶりー、何悩んでんだ?』


『日置くん! それと……!』


『初めまして、師匠の一番弟子鰐部翔太(わにべしょうた)です。文治先輩よろしくお願いします』


『よろしくな! 鰐部くん!』


(すごい熱血そうな人だ……)


『実は渥美くんに特訓しないかと誘ったら若尾(わかお)先輩と用事があると断られてしまって……土曜どうしようかと悩んでいたところだ!』


文治の一言で蓮介と翔太は顔を合わせニヤニヤし始めた。


『文治、土曜の予定決まったぞ』


『なんだい!』


『2人を尾行する』


こんな感じで3人はこっそりと尾行していた。最初は2人を止めていた文治も今は楽しそうにしている。


(きょう)先輩来た!」


3人が一斉に隠れ、顔を半分だけ出し様子を伺う。





「鈴蘭先輩お待たせしました」


大きめのショルダーバッグをかけた恭也が鈴蘭へと近寄る。ショルダーバッグの中は貴重品、スマホとタムが眠っている。


「べべ別に! 待ってないんだから! さっさと行くわよ!」


鈴蘭が目的地へと歩いて行くので恭也は鈴蘭の隣に並び着いていく。





「恭先輩と鈴ちゃん先輩行っちゃいますよ!」


「追いかけるぞ!」







「ここは?」


店に入り案内されたのは過ごしやすい個室だった。洋風の店内にコーヒーのいい香りが残っている。


「あたしのお気に入りのカフェ。お昼まだでしょ、奢るからなんでも食べていいわよ。スイーツも頼みなさい」


「ありがとう……ございます……あの……」


「何よ」


「お金……大丈夫なんですか……?」


「これでもルースの(エース)よ、そこらのバイトよりお金持ってるわ。安心してなんでも頼みなさい」


注文を終え商品を待っている途中、恭也が口を開いた。


「鈴蘭先輩、前のライオン悪物全部倒していただき本当にありがとうございました。お礼するのは俺の方ですね」


「何言ってんの、あたしは命を助けられたのよ。私の方がお礼する立場よ。それにあの時あたし9匹しか倒してないわ、あと1匹はいなくなったみたい」


(いなくなった……鈴蘭先輩が怖くて逃げ出したのか? それならネットで目撃写真が投稿されるはず……どこに消えたんだ……)


恭也が考えている間に料理が運び込まれた。恭也の前にはカルボナーラが運ばれ、鈴蘭にはエッグベネディクトが運ばれた。


「その件はもういいでしょ、温かいうちに食べましょ」


「そうですね、すみません。つい考えごとを……」


呆れた視線を恭也に向けるが、鈴蘭はどこか楽しそうだった。


「「いただきます」」


「美味しい……鈴蘭先輩ここのカルボナーラ美味しいです!」


「当たり前でしょ! あたしのお気に入りのお店なんだから!」


なぜか誇らしげにドヤ顔をする鈴蘭。








一方、尾行していた3人も同じ店に入っていたが残念ながら2人の様子を伺うことはできなかった。


「恭先輩と鈴ちゃん先輩個室入っちゃいましたね」


「鰐部くん! ここのパスタ美味しそうだぞ!」


翔太にメニューを見せつける文治の顔は輝いていた。


「ほんとだ! 文治先輩尾行忘れてない?」


「忘れてないぞ! 尾行するにも体力が必要だから今は腹ごしらえだ!」


「そうだね! けど………この視線の集まりの数2人にバレそう……」


現在お店の端のテーブル席に腰掛けているのだが蓮介の存在が大きく、中にいる女性客や女性定員が蓮介を熱い視線で見ていた。2人にバレるのも時間の問題だ。


「師匠……前も言いましたけど、次出かける時は絶っったい変装してきてくださいね! 」


「えーー、折角の俺のイケメンが隠れちゃうだろ」


「隠れていいんです! 知ってると思いますけど、中園北には師匠のファンクラブ的なものがあるんですよ!」


「海老のトマトクリームパスタ3つお願いします」


蓮介と翔太が話し合う中待ちきれなかったのか文治が注文をした。


「知ってる。流石俺、イケメン」


「はぁ……師匠、そのナルシなところなかったら完璧なイケメンだったのに……」


「俺は完璧ですー」


蓮介と翔太がぎゃあぎゃあと言い合っているうちに料理が届いていた。待ちきれなかったのか文治は先に食べ始めてしまった。それを見た2人も食べ始めた。


「渥美くんと若尾先輩は何を話しているんだろうか、気になるな!」


「もしかして告白?!」


「いや……翔太、それは流石に早い……恐らく、少し打ち明けて談笑してると予想。鈴先輩若干ツンデレなとこあるから告白は遠い未来の話だな」








「鈴蘭先輩はなんでルース入ったんですか?」


お互いに食べ進めていたところに恭也が思いがけない質問をしてきた。鈴蘭は自分のことを話せるいいチャンスと内心喜んでいた。


「あたしは友達にスカウトされたの。まぁ名古屋部隊所属の子だったから、つてで東京部隊に入隊した感じ。中学3年の時入隊したから………そういえばその時にはもう蓮介は(エース)にいたわ」


(蓮この時には(エース)になってたのか……最速で2年で(エース)になったとして……早すぎじゃね?)


「蓮っていつからルースいるですかね……」


「……かなり前からいるみたいよ、(やぶ)先輩とも仲良いから」


「薮先輩?」


「札幌部隊所属の(エース)1位。あんたは会わない方がいいわ」


「なぜです?」


「薮先輩、悪物大っっっ嫌いだから。あんたが渥美恭也って知ったら殺されるわ」


恭也は恐怖のあまりに震えた。忘れていたが蓮介や翔太、鈴蘭のように恭也に友好的な人もいるがもちろん半悪物である恭也を妬ましく思っている人もいる。今恭也はいつ殺されてもおかしくない状況に置かれているのだ。


「まぁ………あたしは………あんたの……味方だけど……」


人差し指で髪をくるくるさせながら恥ずかしそうに鈴蘭がボソボソと話す。しかし恭也には届いていなかったようだ。


「1位の人に信用してもらえるぐらい強くならないとですね! 鈴蘭先輩ありがとうございます!」


「は?! え! 別に! あんたのためじゃないんだからね!」


トマトのように顔を真っ赤にした鈴蘭が慌てて弁明するのを恭也はくすくすと笑って見ていた。


「それでも……ありがとうございます」


にっこりと笑った恭也に鈴蘭は顔から煙を出しこくりと頷いた。その横で定員がデザートを用意していた。


「デザート……来たから食べましょ……」


恭也の前には鈴蘭からオススメされたガトーショコラが用意されていた。鈴蘭はバスクチーズケーキを食べている。


「先輩、良かったらどうぞ」


フォークにガトーショコラを刺したのを鈴蘭に差し出す。


「は?!」


(こいつなんとも思ってないの?! これ関節キスになるのよ! それにあーんって……でも………気づいてないし……誰も見てないし……)


「……あーん」


鈴蘭が食べようとした瞬間別の黒い影に食べられてしまった。その影はタムだった。


「恭也これ美味しいよ! ボクにもっとちょーだい」


「先輩……すみません……」


「気にしないで……」


(あっぶなー! あと少しでかかかかか関節キキキキキキキスするところだった!)


真っ赤な顔をした鈴蘭の横で恭也は仕方なくタムにガトーショコラを分けていた。


「美味しいーー!」


タムがすいすいと空中を飛ぶ。個室を選んで良かったと恭也は心から思った。黙々と食べ進め2人は喫茶店を出た。もちろんタムは鞄の中だ。


「この後時間あります?」


「別に……あるけど……」


「映画行きませんか? 今度は俺が奢りますから」


「…………行く……」


「じゃあ行きましょ」






映画館へと向かう2人を3人がまた追いかける。


「どこに行くんだ、渥美くん!」


「この道だと映画館だな」


「何見るんでしょうね、今流行ってる恋愛映画ですかね」


「いや……恭也は多分ホラーだ」








「見るのって………これ……?」


わなわなとポスターを指さした鈴蘭が震えている。


「はい! 俺ずっっと見たくて! あ! ………無理でしたか? 変えますね……」


すごくしょんぼりとした恭也がチケット販売の場所へと向かう。鈴蘭が恭也の手を握り止めさせる。


「見ましょ! ホラーなんで苦手じゃないんだから! あんたの奢りなら見るわ!」


「先輩! ありがとうございます!」


ポップコーンどドリンクを購入しわくわくでシアターへと向かう恭也に対し、鈴蘭は少し青ざめている。


(先輩として情けない姿を見せる訳にはいかない……しっかりしなさい、鈴蘭! あたしなら大丈夫よ! いつも悪物と戦ってるじゃない!)


20分後


「ぎゃぁぁぁ!」


恭也以外の客は全員悲鳴をあげている。もちろん鈴蘭もだ。


(無理無理無理無理無理無理無理! 怖い怖い怖い怖い怖い!)


怖さのあまり思わず肘掛けを掴む。しかし左手が恭也の右手と重なってしまった。


「あっ……! ごめ………!」


思わず恭也を見る。暗い中スクリーンの明かりだけだったがよく見えた。恭也の顔はほんのり赤くなっていた。


「すみません……」


謝った恭也は映画へと視線を戻してしまった。


(……恥ずかしいのに……嬉しいこの気持ち……なんだろう……)







「翔太、文治! 見たか今の! 絶対恭也、意識し始めたって! あ………」


2人の肩を揺らすが2人は怖さのあまり気絶していた。








「今日はありがとうございました、楽しかったです」


「うん………あたしも……………楽しかった……あのさ………何か困ったことがあったらなんでもいいなさい、力になるから……」


「やっぱり先輩優しいですね」


「は?! 優しくなんかないわよ!」


またしても顔を真っ赤にした鈴蘭に恭也がくすくすと笑う。


「では、また」


「また…………」


2人は別れそれぞれ帰路に着いた。








「いつまで着いてくるんだよ」


どうやら恭也は3人の尾行にずっときづいていたようだ。


「ありゃりゃ、バレてた?」


「半悪物になって嗅覚良くなったから、すぐわかった」


「恭先輩すごい!」


「すごいな!」


「恭先輩! 今日の感想お願いします! 鈴ちゃん先輩のこと好きになっちゃいましたか?」


3人がニヤニヤと質問してくる。


「……優しくしてくれ嬉しかったよ……好きはないかな……優しい先輩っていうだけ、それに俺は恋愛する価値ないよ」


そう呟いた恭也はどこか悲しそうで、泣きそうな顔だった。





―――





ここは新千歳空港内にあるベンチの一角。1人の青年がキャリーケースを横に置き、足を組んでいる。


「……もしもし…………お久しぶりです、今から専用武器の修理でそっち行きます。終わったらすぐ帰る予定なので……………はい、お願いします」


電話を終えるとタイミングよくアナウンスが鳴った。荷物を預け飛行機へと乗り込む。飛び立つ飛行機の中から彼は険しい顔で空を眺めていた。まるで殺意に満ち溢れる目で。







最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

ルースの給料事情ですが討伐隊はAが一般のサラリーマン並。以下はバイト並です。悪物の階級によって給料は変わるので強いのを倒せるAは優遇されています。

他の隊はルースの社員で、未成年はいません。そのため公務員並の給料です。

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