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マッドセガール工業幼稚園  作者: ポテろんぐ
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渡辺とオルガン再び

「そう言えば、渡辺。ワルモン退治か?」


 帰ったと思っていた玉男は、まだそこにいた。


「また雑魚ワルモンか? 良いなぁ、お前は楽な相手ばかりで」


マスクの下からでも馬鹿にしていると解る表情で渡辺を見ていた。さっきの仕返しにマウントを撮りに帰ってきやがった。


「ワシなど、昨日も強敵ワルモンを倒して、もうクタクタじゃ」


 玉男は寝てない自慢みたいな口調で渡辺に言った。まじでむかつく。本当にクズである。


「だけど、ワルモンを探しているのに見つからねぇんだよ」


 蓬田が言うと玉男は「ぷっ!」と口に手を当てて馬鹿にした。


「お前、雑魚ワルモンも見分けられないのに退学生をしているのか? もう一回、幼稚園から勉強し直した方がいいんじゃないのか?」


 ムカつく! が、見つけられないのは事実なので言い返せなかった。


「しょうがないなぁ、少しだけアドバイスをしてやるか」

「はぁ、いらねぇよ! お前のアドバイスなんか!」


 渡辺はムカついたので断った。


「そう遠慮するな、若造よ」


玉男は馴れ馴れしく、渡辺の肩を叩いて来た。


「まぁ、お前をこの世界に導いたのはワシだからな。お前は、可愛い弟子みたいなもんなんだよ」


ここに来て玉男は、どっちが上なのかを回りくどくハッキリさせてきた。やり方が社会派ドラマの悪徳政治家のようで、渡辺はすごくイライラした。


「いいか、ワルモンには殺気を隠す奴もいる。パッと見、何の気配も無いからってソイツがワルモンではないと油断するなよ。ワルモンはワルをする瞬間以外は普通の気配でいる事が多いんだ。解ったか?」


 渡辺はそれを聞いて、ハッと思い出した。

 そう言えば、ブックオフ金田を捕まえたのは古本屋の中だったから殺気が出ていた。だが、外に出ると普通な人間。

 小林も、渡辺が触るまでは普通だった。触ると怖かった。

なるほど、殺気は出ていない事のが多いのか。癪だが玉男のアドバイスが役に立った。


「で、どんな敵を倒すんだ?」

「ウンコしてる犬」


渡辺が答えると、再び「ぷぅ~」と笑い「渡辺くんは大変ですねぇ、頑張って下さい」と馬鹿にした口調で、山芋へと向かって行った。マジでムカつく。


「あの野郎!」


 渡辺は怒りで震えたが、辺りはもう暗くなって、散歩の時間ではなくなっていた。シゲさんの話が長くなってしまったので、時間を食った。


「渡辺、今日は出直そうぜ」


 四人は、その日は帰ることにし、明日、幼稚園が終わったら出直す事にした。

 

翌日。


「ていうか、散歩って朝じゃないか?」


 幼稚園終わりの蓬田の一言で、渡辺は「じゃあ、今日も無理だな」と判断し、四人は翌日の朝まで、ワルモンの事なんか忘れ、自由に青春を過ごす事にした。渡辺はテンションがなぜか高かった。ワルモン退治から急遽、解放されたからだ「予想だにしないサボれる言い訳があると、どうしてこんなに嬉しいんだろう?」と不思議に思う渡辺であった。


「じゃあ、今日はオルガンの練習でもするか」


 え? 


蓬田の信じられない一言で、渡辺は再び現実に引きずり戻された。これからやろうとしていたエロい事が全て雲となって頭から消えた。


それから幼稚園に戻っての久しぶりの地獄のオルガン特訓が始まった。


 鬼。


 翌日、朝から雨が降った。


「雨が降ったら、散歩はいかないんじゃないか?」


 早朝、電話越しの蓬田のその一言で「じゃあ、今日はもう無理だな」と渡辺は判断し、また得した気持ちになり「またエロい夢でも見るか」と二度寝をする事にした。


「折角だから、オルガンの朝練でもするか」


 え……。


電話を切ろうとした矢先に飛んできた、蓬田の信じられない一言に「嘘だろ、コイツ」と渡辺は思考回路を疑った。オルガンの何なんだ、こいつは? 回しもんか?


 そして、翌日の朝。

 朝一で幼稚園に向う習慣の為、早起きには強い渡辺と蓬田、竜二の三人は電撃町で散歩中の犬を観察していた。家長は寝坊で来なかった。「どうせ、そうだろ」と最初から誰も期待していなかったので、誰も驚かなかった。


「よっしゃ! ワルモン退治行くぞお!」


 散々オルガンに費やした日々、待っていたぜこの時を、もう二度とオルガンなんか弾くものか!


 ワルモンと戦う前に心が折れかけていた渡辺は、オルガンから解放された喜びで、ワルモン退治へのモチベーションが最高潮に達していた。


 オルガン、強すぎ。


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