身体を返せなんて言わない
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
転生元の人格が霞んできた時の話。
似せている様で、やっぱり何処か違う。
だってデータじゃない、血の通った人間だから。
今なら言っても良いかしら。私、前世の記憶があるのよ。前世の私は本当に何の変哲もないただの人間で、此処ではない世界で昨日と同じ日々を過ごしていたの。運命の人が居ないことなんて、革命を通じて知っていたし、特段好きな人もいなかった。けれどもね、私の事を蔑ろにしてくる人ばかりではなかったのよ。
悩みはないか気にかけて下さる方もいた。甘ったれな私を怒って下さる方もいた。分からない事があれば何でも聞いてくれていいとおっしゃる方もいた。
その方々に大した恩返しも出来ずに死んでしまってね。どうせ何も出来ないし、第二の人生なんて疲れ果てて動けないと思っていたの。
でもね、大好きな人だから頑張れるの。今度こそ、ちゃんと好きな人達に恩返しがしたい。その為ならば、私は陰ながらひっそり消えても構わないわ。
ふふふ。ただの与太話だと思ってくれても構わないのよ?
彼女とは幼馴染だった。幼少期の殆どの期間を彼女と触れ合って過ごして来た。何時だって、人の為に行動して、自らの事を歯にもかけないお人だった。
そうして月日が流れて、互いが互いに秘密を言い合える程の仲になった時、彼女は座右の銘を教えてくれた。やはり何処までも、人の事ばかりだった。
ある時彼女の顔をした、彼女ではない人物が血相を変えて私の元を訪れた。酷く焦せりながら、私の名前を呼んだ。
彼女ではないと直ぐに分かった。彼女はそんな親愛の意味を込めて、私を呼ばない。もっと砂糖を煮詰めた様な甘ったるい声で私の名前を呼ぶ。だからつい、冷たい言葉で返してしまった。
「君は……私が恋愛を向ける君ではないね。でも……何故だろうね……。親愛を向ける相手であると、身体が反応しているんだ」
初めて会ったはずなのだ。この中身の君とは。けれども身体が、この子は信頼出来ると反応している。友のように語らい、腹を割って話しても良い相手だと。
彼女は真剣な顔で深く頷いた。
「ご名答よ。私は貴方が愛する私じゃない。その事について相談をしに来たの。この体の元々の所有者主が、『困ったら婚約者が居るから頼るように。絶対に力になってくれるから』と日記で教えてくれたの。元々の所有者にこの体を返したい。この体は私の物ではないの。生まれた時から彼女の物よ。例え過去世が私のものであっても。その為ならば、私はひっそり消えても構わないわ」
その言葉を聞いた時、ふと、彼女の姿が脳裏を過ぎった。何処までも献身的に、気に入った者の為に奔走し、自らの事は何時だって二の次。今、彼女が発言を聞いたら、『こんな良い子を放ってはおけない。貴方だって蔑ろにしない』と叫ぶだろう。
「返せるかどうかは分からない。もしかしたら、このまま君の人格が表に出てきたままかも知れない。だから……かつての前人格である彼女が言いそうな言葉を伝えるよ」
一呼吸おく。例え君の意思が消えたって、それを引き継ぐ者が居ないなんて、絶対に言わない。言わせない。
「この体を返せなんて言わない。だから、君も幸せになるんだ」
身体は同一。中身は別人。それでも、人のこと考えて生きる子を不幸せになんてさせない。
まぁ、昨日話していたネタバレシーンです。
気に入ったシーンなので、切り取って投げてます。
連載にする気はありませんが、するならばもっと体裁を整えます。
苦手なんですよ。分かりやすい目の敵を作るの。
だから、ざまぁ系でもないですし、悪役令嬢も居ません。
それぞれが互いに沢山の愛を抱えて生きているから、こんな話になりました。
深い意思は、思いは、君が無くなっても継ぐ者がいる。
それは彼女の存在証明になるのではないでしょうか?
死なせないよ!! 絶対に!!
ゲーム上での、元々の友人ポジの子と婚約者の関係は本当に仲のいい友達夫婦みたいな感じです。
イチャイチャはしないけど、一緒にご飯食べて他愛のない会話する様な感じ。
ループしているから(乙女ゲーあるある?)、体に染み付いていると良いですね。