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3話


 

 一緒に登校した後は普通にクラスに行き、授業を受ける。

 休み時間になると澄村は周りの生徒に話しかけていた。


 話しかけられた方は最初は戸惑っていたが、次第に慣れてきたのは普通に話をしていた。


 さっそくクラスメイトとの交流をはかっているらしい。

 有言実行とはさすがだ。


 ちなみに俺は休み時間にはクラスメイトと話さずにスマホいじってた。

 もしくは寝るか。


 俺は成長しないな……。


 そんな感じで授業が過ぎていき、4限が終わって昼休みになった。



 さてと。

 食堂にでも行くか。


 一緒に行く友達はいない。

 別に悲しくはない。いやまじで。

 まあ一人でも問題はないし、友達と言っていいか微妙なラインのクラスメイトと行っても気まずいだけだ。

 

 食堂目指そうかと俺は席を立ったとき。


 

「望月君。一緒に食堂に行きましょうか」



 と、横から声をかけられた。


 話しかけてきた相手は澄村だ。

 さすがにもう声だけでわかる。

 ていうか俺に対して一緒に食事に行こうと誘ってくれる人間は彼女くらいなものだ。


「え? いいの?」


 そして誘われた俺は戸惑いながら質問した。


「いいのってどういうこと?」


「いやだって、お前はクラスメイトと行くんじゃないのか?」


「いいえ。貴方と行くことにしたわ」


「それでいいのかよ?」


 せっかく仲良さそうにしていたのだ。

 このチャンスを活かせばいいのに。

 他人のことだけれども、もったいないと感じてしまう。


「別にいいのよ。クラスメイトとは休み時間に話すようにしているから。今は、貴方と仲よくなりたいと思っているの」


「ま、お前がいいならいいけどよ」


 俺と澄村は一緒に食堂に行く。

 この高校に入ってから誰かと一緒の食堂に行くことは初めてじゃないか。

 来るときは大体ひとりだったもんな。

 まあ陰キャなんてそんなもんだ。

 

 食堂に来た俺たちはそれぞれ料理を取って席に着く。


 俺は和定食。

 焼き魚と味噌汁と米と漬物のシンプルな定食だ。

 ご飯は大盛りにした。

 男の子だからね。


 澄村は麺類を選んでいた。 

 ちなみに内容は天ぷらそばだ。

 丼が少し小さい。

 どうやら少な目にしてもらったようだ。

 小食なのかね。


「それだけで足りるのか?」


「ええ。むしろ天ぷらの分ちょっと多いくらいよ」


 多いくらいなのか。

 すぐに食べ終わってしまう程度の量しかないが。

 俺が小学生の時でももうちょっと食べてたと思うけど、まあ男と女の胃袋の大きさの違いかね。


「望月君は和食なのね」


「ああ」


 食堂では和食・洋食・麺類・カレーの四つから選べる。

 メニューはカレー以外毎日異なるが値段はどれも同じだ。

 どれを選ぶかは単純に好みで別れる。

 俺はたいていの場合は和食を選んでいる。

 

「和食がすきだからな」


「そう。望月君は和食派ね。ちゃんと覚えておくわ」


「なぜに」


 俺の食の好みを把握してどうしようというのだ。


「将来のため」


「はあ……」


 将来?

 俺の好みを知ることと澄村の将来に何の関係があるというのか。

 


 ――はっ!


 望月に電流走る(例の声)。


 わかった。

 ホームパーティーだ。


 澄村はいつかホームパーティーをしようと思って俺の食の好みを把握しようとしているのだ。

 

 ホームパーティーはなんとなく日本ではなじみがない感覚だが、芸能人は頻繁に行っていると聞く。

 ほら、大物タレントの誕生日とかに盛大にパーティーやってるってよく聞くじゃん。

 あれだよあれ。


 澄村もいつかそういうのを行おうと予定しているに違いない。

 俺は澄村の友人第一号(別に第一号ではない)だから、パーティーに招待した時のためにこうして好みを聞いてくるのだな。


 ふふっ。

 それならば仕方ない。

 パーティーは俺みたいな陰キャにとっては天敵のようなものではあるが、まあ呼ばれるのなら断る必要もなかろう。


「澄村」


「なに?」


「楽しみにしているぞ」


「えっ? た、楽しみって……。そんなに私の手料理を楽しみにしてくれて――」


「ああ。ホームパーティー、楽しみにしてるぜ」


「……ホームパーティー?」


 澄村がジトリ、と半目でこちらを見てくる。


「ああ、なるほど。望月君が何か的外れなことを考えていることはわかったわ」


「なんでぇ!?」


 澄村の指摘に愕然とする。


 なぜだ?

 電流走った時の直感はたいてい当たっているはずなんだが。

 八木の直感も当たっていたし。

 まあ八木は負けたけど。


「ていうか料理はできるのか」


 さっき手料理とか言っていたし。


「勉強中よ」


「どれくらいの腕前なんだ?」


「じゃ、じゃがいもの皮を剥けるわ」


「包丁で?」


「ピーラーで」


「初心者じゃねえか」


 というかここで具体的な料理名を出さずに皮をむくという行為を告げる時点で、どの程度なのかは察せるものだ。


「だから勉強中って言ったのよ」


「まあ、間違ってはないけど」


 ものは言いようである。


「しょうがないでしょ。始めたの昨日からなんだから……」


「学び始めもいいところだな」


 勉強で言えば、鉛筆の持ち方を習ったところじゃん。


「見てなさい。今に上達するんだから。そのときは食べさせてあげる」


「え、マジ? じゃあお弁当作ってくれ」


 学食ってお金かかるんだよな。

 その分のお金を使わなければ、ゲームとか漫画に仕える金に回せる。


 ま、さすがに断られるか。

 俺も話の流れというか、冗談半分で言ってみただけだし。


「いいわよ」


「おぉ?」


 あ、ほんとに案が通った。


「約束よ。私がお弁当を作ってくるから、きちんと食べてね?」


「おう。わかった」


 なんか気合い入っているな。

 

 女子的には、男子にお弁当作るのは一つの夢なのかもしれない。

 俺が言っておきながらなんだけど、そういうのは彼氏とかにやってあげればいいのになあ。

 





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