6話 新勇者パーティ
翌日。
「おい!起きろ!」
リザードマンが俺の家の扉を叩いていたので出てみると
「新生勇者パーティが来てる!広場に集まれだとよ!」
「そうか。呼びに来てもらって助かる」
俺はそう答えてリリア達に目をやる。
こんなところに来るということは多分こいつら目当てだろうし。居場所がバレているのなら今更何をしてもどうしようもないだろう。
リリア達を連れて広場に辿り着いた俺は意外な奴らを見た。
「お前こんなところにいたのかワイト。スライムにすら勝てない雑魚冒険者君」
声をかけてきたのは忘れもしない。
俺がかつて所属していたSランクパーティ【崩壊の砦】のリーダーのカイトだった。
「みんなで心配してたんだぜ?お前やっていけるのかなぁって。お前のスキルは量を減らすことしか出来ない欠陥スキルだからなぁ」
そう言ってパーティメンバーに目をやってクスクス笑うカイト。
その後カイトはもういいと言って村人たちを家に帰らせた。
「で、お前がなんで旧勇者達といるわけ?」
俺が答える前にサーシャが口を開いた。
「偶然出会って意気投合した。それだけさ」
「まぁ、何でもいいけどよ」
カイトはそう言うとリリアに目をやった。
「俺前からあんたの事いいと思ってたんだよね。どう?うちにこない?」
「遠慮します」
「いいからこいよ!」
そう言って強引にリリアの腕を掴もうとしているカイトの首にフレアブレードを向ける。
「なっ、てめぇ、ワイト誰に何してんのか分かってんのかよ?」
「わ、ワイト//////」
俺の後ろに隠れるリリア。
「帰ってくれないか?嫌がってるだろリリアが」
「お前まさか知らないわけないよな?勇者法」
ニヤニヤしながら聞いてくるカイト。
そして剣を抜き
「勇者の邪魔しちゃいけねぇって決まりがあるんだよ!死ねやァァァァァ!!!雑魚が!!!!!」
襲いかかってくる。
ガン!
ブレードの中で石が弾けて爆発する。
その爆発で俺もリリアを抱えて後退することになったけど、俺より至近距離で食らったカイトは
「ぐぁぁあぁぁぁあぁぁ!!!!!!!!」
俺より勢いよく吹っ飛んでパーティメンバーの方まで転がっていく。
そんなカイトとの距離を詰めるために歩く。
「な、何だよ、何なんだよお前ぇ!何だ!今の爆発は!爆発魔法かよ?!お前そんなん使えたのか?!」
そうやって尻もちを着いて後ずさるカイトの胸にフレアブレードを向ける。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!!」
「帰れよ」
俺が引き金に手をかけると
「……」
気絶するカイト。
口から泡を吹いて見事な気絶だった。
それを見た勇者パーティの聖者ズークがカイトに駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか、カイト!!!貴様ァァァ!!!!」
俺を睨んでくるズーク。
そこに聖騎士のアークも加わる。
「てめぇ!おい!言いつけてやるぞ!王様に!知ってるんだろ?!勇者法」
「別に、言いつけたら?好きにしなよ」
俺はこいつらが言いつけられないのを知ってる。
「勇者パーティの勇者カイトが不意打ちしたのに、スライムにすら勝てない最弱冒険者に負けました、って報告できるもんならさ」
そんなこと言えるわけない。
俺は知っててフレアブレードを抜いて応戦した。
「俺の戦績はギルドにも残ってるだろうね?0勝10000敗。ただの1度も勝利を知らない男さ。そんな奴に勇者が負けた、なんて報告できる?できるならどうぞご勝手に」
そんな話が王様に知られては勇者の座など引きずり下ろされるに決まっている。
だからこいつらは頭に血が上るほど屈辱的でもこの件は大っぴらに言えない。
「さぁ、早く帰って報告しなよ。我らの誇る最強無敵の勇者様がスライムに負ける世界最弱の男に負けましたって」
「てんめぇ!ぶっ殺す!」
「アーク。ここは引きましょう」
俺の言葉に答えたのはズーク。
「いいのかよ?!ズークそれで!勇者パーティの名が!」
「そんなこと言っている場合じゃないでしょう?!」
周りを見ると村人達がヒソヒソ話し合っている。
「勇者パーティって弱いのね」
「たしかに。あのワイトって人スライムの討伐依頼もまともに出来なかったのに」
そんなことをヒソヒソ村人達達に話されていた。
「く、クソがァァァァァ!!!!!」
アークは叫んでズークと一緒にカイトを抱えて帰っていく。
「もう二度と来るんじゃないわよ!」
ルゼルがそう叫んでいるが聞こえている様子は無い。
本当は全員殺すのがベストなんだろうけどあいつらが生きて帰らなかった場合、面倒になると思ったからこうした。
「まぁ、もう来れないだろうね。これ以上恥を晒したくないだろうし」
フレアブレードをポーチにしまいながらそう答える。
この武器はほんとうに俺と相性がいいようだ。
スキルや才能なんて必要なくただ、鉱石を詰め込んで魔力を流す。
それだけで火力の出る武器。
「さ、帰ろっか。今日も色々やることあるしね」
リリア達に声をかけて俺達は家に戻ることにした。
のだが、今日はシエラが付いてきていた。
「どうしたんだ?シエラ」
「私は助手なのです。助手ならばやはりワイトの近くにいるのが正解だと思ったのです」
そう言って俺の手を掴んでくるシエラ。
「そう言えばそちらの方がたからお代は頂いたのですか?」
シエラがリリア達を見て俺に聞いてくる。
なんか忘れてることあったなと思ってたらそれか。
シエラの言葉を受けて顔を合わせる3人。
「ど、どうしよう……私ウチケシソウ飲んじゃった。あんな高いの払えないよ……」
そう不安がってるルゼルの頭に手を置く。
「いいよ。別に。忘れてたことだし、料理も作って貰ってた。その分でチャラってことで」
「そ、それじゃ悪いよ!あれ1つで奴隷100人くらい買える価値のあるものなんだよ?!わ、私にそれだけの価値なんて」
そう言ってルゼルがポーチを取りだそうとしていたが
「じゃあ俺がウチケシソウでルゼルを買ったってことでいいんじゃない?君にはあんな葉っぱ以上の価値が絶対ある」
「わ、ワイト……//////」
顔を赤くするルゼル。
「こ、今夜もいっぱいお返しするから//////」
「私もしますよ。ワイト」
「私もするから」
ルゼルに続くリリアとサーシャ。
「お返し?」
首を捻るシエラだった。
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