2話 強烈な求婚攻撃
2日後勇者パーティの全員のヒールが完了した。
これで俺が勇者パーティを見殺した罪でしょっぴかれることはないだろう。
「何とかなったな。助けられてよかった」
当然の話だが優先度の高い子から治していく。
最初に治したルゼルも手伝ってはくれていたけど辛い。
患者のために用意してある魔力回復アイテムなんかも摂取しながら2日間ぶっ通しで無理やりヒールを行い続けた。
備蓄の薬草は半分以上消し飛んだ。
そうしないと俺の貧弱なヒールでは追いつかなかった。
眠い。
最後に治したのは聖女。
ダメだ、もう無理。立っていられない。
「俺は寝るぞ」
「わ、ワイト殿?!ワイト殿?!」
そのままベッドに突っ伏して倒れる俺。
伸ばした両手はぷにっとした何かを触っていた。
何も考えられない。
俺の記憶はここまでだった。
◇
話し声がして目を開けた。
どうやら寝ていたらしい。
泥棒か?そう思いながら一応起きていることに気付かれないように目だけを動かして確認する。
思い出した。そう言えば勇者パーティがいたんだったな。
「え、Sランクの薬草がこんなにたくさん……フッカツソウ、ウチケシソウ、ゼンカイソウ、他にも沢山ある。それが全て99個?あ、有り得ない!!!!」
勇者のサーシャが呟いていたようだった。
「違法な薬草だらけですし何故こんなに持っているのかは分かりませんが私たちを助けてくださったのは事実です」
そう口を開いたのは聖女だった。
「リリア……」
サーシャに名前を呼ばれていた聖女はリリアというらしい。
「私は途中から意識があったから分かります。あのワイトというお方は何の関係もない我々を助けるのにあんなに真剣な顔をして下さっていた。私はあの方をお守りします。あの素敵でカッコイイ顔に恋をしてしまいました」
そう言って俺と勇者パーティの間に立つ聖女リリア。
あの?なんの話をしてらっしゃるんですか?
「あなた方がこの方をギルドに報告するのであれば私はここで自害しましょう。例え仲違いすることになっても」
「リリアの言う通りだよ」
ルゼルもリリアの横に立った。
「私は自分から薬草を飲んだよ。こんな私のために貴重な薬草を使ってくれた。私はワイトを守る。裏切れないよ絶対に」
ルゼルがそう言ってから口を開くリリア。
「私はあの方のあの真剣な顔を裏切ることなんて出来ませんわ。例え私が反逆者として処刑されることになったとしても」
その時顔を赤くするサーシャ。
「わ、私も見たよ。あの真剣な顔……//////」
そう言って呟くサーシャ。
「わ、私はワイトが起きたら求婚しようと思っている。2人には協力して欲しい」
「「え?」」
2人が口を開けてポカーンとする。
「あの顔を見たらきっと私の運命の人だと思えたの。あんなに私のために辛そうな顔が出来るなんて素敵な人だと思った」
多分寝不足で歯を食いしばっていただけだと思う。
「私の時にはこんな目に遭わせた魔王に怒りを感じて唇を噛み締めすぎて血が滲み出ていましたよ?」
聖女が言ってることには心当たりがある。
眠過ぎて意識が飛びそうなのを唇を噛んで意識を保ってた、その時に切れたんだ。
別に魔王に怒ってた訳じゃない。
「それからワイト様は左手で私の手を掴んで私のお腹を右手で触って言いました。助けられてよかった、と。これは私といずれ産まれてくる赤ちゃんへの言葉でしょう」
俺の手の位置でそんなことまで妄想できるなんて妄想力がすごいなこの人。
そう思っていたら
「正妻の力を見せてあげすよ?サーシャ」
リリアは俺のベッドに上がり込んで俺の頭を持ち上げると膝枕をしだす。
「今度は私が看病する番ですよ。あ・な・た♡」
俺の耳元で囁いてくる。
すごいゾクゾクする。
いい意味で。
やばいリリアのいい匂いがする。
「あ、鼻血出てる」
ルゼルのつぶやきでみんなの視線が俺に注がれる。
「起きたの?ワイト?」
盗賊のルゼルがすぐに駆け寄ってきた。
もうごまかせないか。
「あ、あぁ。丁度鼻血が出たくらいで起きたさ」
そう返すとルゼルは俺の手を握ってきた。
「私と結婚して欲しいの、ワイト。こんな盗賊なんかの私の命を救ってくれたワイトの事が好きになっちゃった」
真っ赤な顔でそう言ってくる。
沈黙が流れる中次に動いたのはサーシャ。
「い、いや、私だ!ワイト。私と結婚して欲しい」
勇者のサーシャもルゼルに続いた。
目線のやり場に困って天井に目をやるとリリアがにっこり微笑んでいた。
「私を正妻に迎えてくださいね。ワ・イ・ト♡」
もう逃げ場は無くなっていた。
頭を痛めているとルゼルが提案する。
「じゃあ皆でお料理対決だから!1番美味しかった人がワイトと結婚!それでいいよね?!」
何故か俺の家でお料理対決することになったらしい。勘弁してくれないか。
そんなことしてないでさっさと魔王の討伐にでも行けよお前ら。
そんなことを思っていたらサーシャが何かを持ってきた。
「ワイトこんなこともあろうかとスープを作ってたんだ。飲んでくれないか?」
サーシャが作ってきたスープをルゼルもスプーンで掬って俺の口許に寄せてくる。
リリアは特にやばかった。
「ワイト。私が毒味してから口移しで食べさせてあげますからね♡」
そう言ってリリアはスープを口に含んだ。こいつまじでやるつもりかよ?
その時、ガチャり。
俺の家の扉が開く。
ゴクリ。
驚いたのかリリアはスープを飲み混んだ。
「ワイトー?言われてた薬草持ってきましたよー……なんで……私以外の女の人が……。か、彼女なんですか?!」
ニコニコした笑顔を浮かべてたその少女の顔は次の瞬間曇った。
腕いっぱいに抱えた薬草がハラハラと力なく落ちる。
はぁ、タイミングが悪いね。
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