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創世のファンタジア  作者: 冴村 彰
6/7

第五話 「十五代目」

久しぶりの更新ですが、少しづつでも書いていきますので、よろしくお願いします。

m(_ _)m

「どうぞ。」

小太郎がそう言うと静かに左右の襖が同時に開き、廊下には正座をしたお幸とユウちゃんが正座をして、床に手をついていた。


「おぉ。お幸ちゃんに十五代目。」

小太郎は嬉しそうに言った。

「おひさしぶりでございます。嘉納先生。藤原先生。」

「おひさしぶりです嘉納先生。藤原先生。」

お幸とユウちゃんは頭を下げたまま言った。

「堅苦しいのは無しじゃ。はようこっちへ。」

小太郎はそう言ってユウちゃんを手招きした。

「はい。」

ユウちゃんはそう言って部屋に入ると、小太郎と博道の前で正座をした。

「はよう足を崩さんか。堅苦しいのは無しじゃと言うたであろう。」

「はい。」

ユウちゃんはそう言うと、正座を崩して胡座をかいた。

その間にお幸は、持ってきたお茶と和菓子を3人の前に並べていく。



「元気そうじゃな十五代目。」

小太郎はにっこりと笑いながら言った。

「十五代目は勘弁してください。私には荷が重すぎます。」

ユウちゃんは頭を掻きながら、恥ずかしそうに言った。

「ユウちゃんは立派な十五代目だよ。」

博道も笑いながら言う。

「剣崎流兵法十五代目頭首。剣崎勇児と言えば、大和で知らぬ者はおらんじゃろうに。」

「嘉納一刀流頭首の嘉納先生に比べればお話になりませんよ。同じ頭首でも、全国に門下生がおられる嘉納一刀流と、頭首とは名ばかりで、一人しかいない剣崎流兵法を一緒にされては困ります。」

勇児はそう言って笑った。

「うちも同じだよ。」

博道はそう言ったが勇児は慌てて言った。

「子供達に無償で剣術を教えておられる藤原先生と違い、私には人に教える才能はございません。」

「教えられないのではないよ。教えた事がないだけじゃ。」

小太郎はそう言って笑った。

「そうそう。」

博道もそう言って笑う。

「買いかぶりは困ります。」

勇児もそう言って笑った。



「ところで今回のご来訪は、私にも関係があると聞きましたが…。」

勇児は本題を切り出した。

「そうなんじゃ。お前に八雲が交わした盟約を守って欲しいんじゃよ。」

小太郎がそう言うと勇児は驚いた。

「父上が交わした盟約ですか?」

「そうじゃ。勇児にはルーン王国から来る子供に、剣術を教えてやって欲しいんじゃよ。」

「ルーン王国の子供を弟子にするというのですか?」

「昔、八雲がルーン王国に行った事は覚えておるか?」

小太郎にそう言われて勇児は思い出した。

「はい。覚えております。あれは確か7年ほど前、五家老の皆様方がルーン王国の内戦に出向かれた時の事ですよね?」

「そうじゃ。その時我ら五家老は、ルーン王国と一つの盟約を交わしたのじゃ。」


五家老とは、昔から大和王室に仕える「嘉納家」「上田家」「不動家」「篠崎家」「剣崎家」の五家であり、それぞれが王国の重要なポストに就いている。

その歴史は古く、大和王国の前の国名である、斑鳩王国の頃より仕えているというのだから驚かされる。

嘉納小太郎は嘉納家の前頭首であり、勇児は剣崎家の現頭首なのだ。



「それがルーンから来る子供達を預かるという事なのですか?」

「そうじゃ。我らで一人づつ子供を預かる事になったのじゃ。それでな勇児。今はおらん八雲の代わりに、お前にも子供を一人預かって欲しいんじゃよ。」

小太郎は笑顔で言った。


「子供を預かると言いましても、私自身が篠崎の家でお世話になっている身。そんなことが出来るでしょうか?」

勇児は不安そうに言った。

「預かると言っても、子供達は皆ここに住む事になる。子供達の生活の方はお幸さんに迷惑をかける事になるが…。すまんのぅお幸さん。」

小太郎は申し訳なさそうにお幸に言った。

「迷惑だなんてそんな。前々からお話は伺っておりましたし、私はルーン王国にいた事もございます。私が適任かと。」

お幸はそう言って笑った。

「そう言ってもらえると助かる。すまんなお幸さん。」

「どうかお気になさらず。」


「というわけじゃ。頼まれてくれるかの?」

「父上がお受けしたという事は、剣崎がお受けしたという事になります。ましてや盟約ともなれば、私が断る理由などありません。そのお話謹んでお受けいたしたいと思います。」

勇児はそう言って頭を下げた。

「そうかそうか。それじゃあすまんがよろしく頼むの。」

「畏まりました。」 

「それじゃあ頼んだぞ。」

小太郎はそう言うと腰をあげた。

博道も続いて腰をあげる。

「もう戻られるのですか?」

お幸が慌てて小太郎に声をかけた。


「今からヒロさんと千徳寺に行くんじゃよ。今からなら夕方には着けるじゃろ。」

「でしたら少しお時間をいただけませんか?一遍住職へのお土産をお包みいたしますので。」

「いやいやお気遣いは結構。舟の時間もあるし、住職へのお土産も用意しておるしな。」

「それじゃあレイラちゃんひとみちゃんまた。レイラちゃんはいつまで大和にいるのかね?」

「大和には1週間滞在します。」

「そうかい。レイラちゃんが帰るまでに、また顔を見に来るよ。」

博道はそう言うと、小太郎と共に部屋から出て行った。



勇児 「今日はずいぶんと(せわ)しいですね。」

お幸 「本当にねぇ。」

さやか 「小太郎先生は一遍住職とは仲がいいからねぇ。月に一度は必ずお会いに行かれるもの。」

レイラ 「一遍住職って?」

お幸 「一遍住職は、小太郎先生の奥さまの菩提寺の住職をされているのよ。」

さやか 「いつも古い擦り切れた法衣を着ておられるわ。レイラちゃんも何度か見たことあるでしょう?」

レイラ 「あぁ。あのかなり痩せた、人の良さそうなお坊さんね?」

勇児 「一遍住職は鶏肉の入ったおからが大好きでな。大鉢いっぱいでも全部食べちまうんだ。」

さやか 「うそ!」

レイラ 「うそ!」

「前もって言っておいてくだされば、おからをたくさん作っておいたのにねぇ。」

お幸は残念そうに言った。


「ところでレイラちゃん。大和にいる間はうちに泊まるんでしょ?」

さやかがレイラに尋ねた。

「もちろんそのつもりだけど?」

レイラは当然と言わんばかりに答えた。

「あ、それなら勇ちゃんの家に泊まった方がいいな~。泊まってもいい勇ちゃん?一緒にお風呂入る?洗いっこしょっか?」 

レイラはニコニコしながら勇児に尋ねた。

「ダメよ!ぬけがけは許さないわ!」

勇児が答える前に、さやかが鬼のような形相で言った。

勇児 「うわっ!」

レイラ 「キャッ!」

あまりの返答の速さに驚いた勇児とレイラは、思い切り体を後ろにのけ反らせた。


「レイラちゃんは私の部屋で寝るの!わかった?」

レイラを睨みつけながらさやかが言った。

「はい。」

レイラはコクンと頷いた。

「相変わらず仲がいいわねぇ。」

お幸はさやかとレイラを見ながら、そう言ってにっこりと笑った。

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