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第6話:自覚

「あの者は、ようやくスタート地点に立ったようだな」

「父上殿」


 アマラが神界の部屋に戻ると、創造新であるアシンが話しかけてくる。

 息子の部屋にプライバシーはないのかと呆れつつ、神の世界でそういったものはほぼ無いに等しいことを思い出し思わず笑う。


「ルーク……いや、カイの気持ちが少しは分かるのう」

「何か?」

「いや、独り言です。しかし、スタートラインですか?」

「うむ、自覚したことで同調の効果に波が出ておる。無意識に……いや、探りながらか? 結果が分からぬから相手に関する思い込みを消そうとしておるようだが」


 アシンの言葉に、アマラが考え込む。

 確かにあの話をした後から、ルークは考え込むことが多くなった。

 コントロールする術を覚えたわけではない。 

 何が功を奏するか分からぬまま、試行錯誤をしているのは見ていて分かっていた。


「我も終焉に関しては、完全にコントロールできておるわけではありませぬが」

「難しい事象ではあるが、終焉は何もせずとも訪れる。お主ができるのは、それを早めるか伸ばすか……もしくは無くすか程度のものだ。間違ったと思えばいくらでも修正が利く。だが、同調に関してはルークが相手に対してなんらかの印象を抱いた時から始まるからのう」

「難儀な事象ですな」


 アシンの言葉に、アマラが深いため息を吐く。

 

「なればこその最高神よ」

「コントロールできればですが」


 2人で顔を見合わせて、今度は同時にため息を吐いた。

 ルークに地球で幸せな人生を過ごさせたことが、結果としてかなり良い影響を与えることを僥倖と捉えて見守るしかない。

 そんな状況に歯噛みしつつも、それでも弟神となりうる人に頭を悩ませるアマラは本当に心優しい竜なのだろう。


「いっそ開き直させるのもいいかもしれぬな?」

「開き直させる?」

「本人は、すでにそのつもりのようだが?」


 アシンに言われて、ルークの様子を見たアマラが思わず苦笑いした。


「悪いことを考えていそうな、嫌な笑みじゃな」

「子供の浮かべる顔ではあるまい」


 思わず苦笑してしまったが、それでも2人とも楽しそうな様子であった。


***

「カーラ、取ってこい!」

 

 俺がボールを投げると、カーラだけが走っていってボールを咥えて戻ってきた。

 カーラの頭を撫でて、全力で誉めてやる。

 何をしているかというと、アルトが連れて帰ってきた子狼たちを使って、自分の能力の再確認を行っているところだ。

 

 今度は無言でボールを投げる。

 ケールだけが走ってそれを追いかけていく。

 そしてボールを咥えて戻ってくると、その場で座って俺の方を見ている。

 

「うむ、成功じゃな」


 ……


「うん、成功だ!」


 思わず前世での口調になったので、慌てて言いなおしたが。

 周囲を見て誰にも聞かれていなかったことに、ほっと胸をなでおろす。

 色々と理解してから、また精神年齢が一気に上がってしまった気がする。

 このままでは色々と生活に支障をきたすので、目下言葉遣いの修正作業中だ。

 やることが多くて、頭が痛い。


「しかし、同調の力。上手く使えば、これほど便利なものはないか」


 さっき俺はケールが取ってきてくれることを、一生懸命イメージしながらボールを投げた。

 それだけだ。

 それだけで、目の前の4匹の子狼たちは、俺の希望通りの行動をとってくれた。

 おそらくカーラ、キール、クーラはケールが取ってくるのを希望したはずだ。

 そしてケールは、自分が取ってくるべきだと感じたはずだ。

 予測でしかないが、動物たちは顕著に俺のイメージを受け取ってくれている気がする。

 行動が単純で、検証しやすいというのもあるが。


 俺の思い込みがどの程度の範囲まで影響があるのか調べるためにも、最近は研究の毎日だ。

 俺が10数え終えるとに鳥が一斉に飛び立つと、強くそして深く意識して数えてみた。

 すると王都中の鳥が一斉に飛び立ったのが分かった。

 その程度の範囲かと安心したが、実は王都の周囲の鳥も飛び立っていたらしい。

 アリスが教えてくれた。


 それである程度の範囲は分かったが。 

 俺が成長するにしたがって、その範囲は広がっていくらしい。

 神に至れるレベルになると、この星をまるっと覆って余りあるくらいの範囲とのこと。

 ただそれは世界ごとに影響を与えるとのことで、ここよりも広い世界でも通用するだけとのことだった。

 安心していいものやら、どうなのやら。


 それらを踏まえて、俺は意識改善をしていかないといけないことに気付いた。

 自分の同調が届く範囲の調節と、オンオフに重きを置いて。

 パッシブスキルといえば聞こえがいいが、無意識に他者に影響を与える能力とか。

 しかもその内容からして、呪いといってもそん色ないだろう。

 そりゃ、最初の人生の後ろ向きな思考のルークが、ドツボにハマるわけじゃ。

 ハマるわけだな。

 

 なので目下、それらの影響をコントロール下におくために思考錯誤しておる。

 その訓練のためにも、学校にはきちんと通っている。

 最近では友達も増えてきた。


「ルーク、今日はボードパークの方は使えますか?」

「メインのハーフパイプコーナーは完成してるから、試験ってことにして放課後に行ってみましょうか?」

「それは、楽しみですね」

「俺も、行っても大丈夫か?」

「勿論」


 リック殿下に頼まれたボードパークの工事が始まり、徐々に設備が整ってきた。

 建造者特権で、試験を名目に先行して遊ばせてもらってるのだが。

 最近はキーファとジャスパーと一緒に行くことが多い。

 そして現地では……


「やあルーク、遅かったじゃないか」

「屋敷に色々と取りに行くものがありましたので」


 すでにエアボードに乗って華麗にトリックを決めていたリック殿下に、声を掛けられる。

 この人も、メインエリアが完成してから毎日来てるな。

 メインエリアは、この施設内で一番広いスペースを使っている。

 ただ初心者向けの低いハーフパイプが多く、あとはレールトリック用の脛くらいの高さの縁石がある程度だ。


 他にはテクニカルエリアとかも作っていて、そこではハンドレールなども用意してある。

 まあもともと、魔力次第で高い位置まで飛べる上に、宙に浮いた板でレールトリックが必要なのかという話もあるが。

 これも、俺のせいだ。


 勢いをつけて縁石のふちの上で魔力を切って、直接ボードで滑ったのを見られて流行りだした。

 これなら、ウィールのついた普通のスケボーも流行るかも。

 そう思って試作品を作ったら、魔力の扱いがまだ上手ではない子供たち相手に大人気商品に。

 魔石を使ってないから、価格もだいぶ抑えられたが。

 それでも、そこそこのお値段。


 これ、ウィールのゴムやベアリング等で、この世界じゃかなり金が掛かる商品なんだよな。

 両方をうちがジャストール領で生産してるから、なんとかなってるけど。

 というかゴムもベアリングも、うちの特産品だしな。

 いまは貴族の小さい子供たちがメインで乗っているけど。

 どうせすぐに真似する業者とかも出るだろうと思って、先手を打って簡単な車輪を付けただけのものも出しておいた。

 ゴムはともかく、ベアリングは真似するのは難しいのでは? と生産管理者に苦笑いされたが。


 それとボードパーク内に作ったキッズエリアでは、超低価格でのボードの貸し出しも行っている。

 そして色々とデリケートな問題に発展する前にキッズエリアは、先行開放してある。

 一応子供向けなので、使用料もかなりお安い。 

 そのため、連日大盛況なのだが。

 貴族用と市民用で、場所は分けてある。

 無用なトラブルを子供たちに起こして欲しくないからな。


 まあパーク内で揉めた場合は、2回で出禁と書いて掲示してあるが。

 ちょいちょい子供同士の喧嘩が起こっている。


 コースの取り合い等だな。

 メインが完全に完成したら、こっちも拡張だな。

 お陰で俺のお目当ての訓練場の方が、遅々として進んでいない。

 いつになったら、出来上がることやら。

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