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開戦前

シン帝国遠征軍司令官シオはゴクチ国とコビ国

に、宣戦布告とも同意義な新書を副官イザミに

伝達させる。


イザミの想いはヨナに伝わる事はなく、各国で

は戦いの準備が進む。

その頃リキに騎士団設立と騎士団長への就任が

言い渡されるが、それは第1王子が邪魔者を

抹殺する為の罠だった。


そんな中、ヨナはイナの命令でシン帝国の戦い

を偵察する為ゴクチ国に向け出発した。

「シオ、何のつもりだ?」


「何の事だ?」


「何故ヨトの国を侵略した?これから何をする

つもりなの?」


「貴様は何も知らないのか…」


シオの睨み付けることでも、怒りを露わにする

ことも無い、学生時代に見た事も無い冷たい表情

にイザミは背筋が凍りつくような錯覚を覚えた。


「ヨトの国は侵略された訳では無い、新たな国の

形に変わっただけだ」

「さて…副官、早速だが仕事をして貰おう

か、九龍大陸の各国にこの親書を届けるんだ」


「親書…?」


「内容は、ヨトの国をシン帝国の自治領とする

宣言の発布、ゴクチ国、コビ国に対する統治権

委譲の要求及び聖女エアの引渡し要求だ」


「…な!!」


「シン帝国遠征軍の使者として、必ず伝えろ"要求

が受け入れられない場合は武力をもって我が帝国

の意志を強要する"とな」


「な、何だと!?」


「…自分の立場を考えろ、この国と民の命は、我が

シン帝国の手の中にある無論、近衛兵団とて同じ

だ」


「…!」


「私は準備報告を受けなければならないからここ

までだ、副官…くれぐれも"任務"を全うするよう

にな」


シオが立ち去った後、イザミは動く事が出来な

かった。

(ヨナ…!私どうしたらいいの?助けて!)


しかしその想いはヨナに届くはずも無い。


開戦の3ヶ月前

ゴクチ国本城


「王様…そろそろシン帝国への返答の

期限でありますが、いかがされますか?」


「開戦しかあるまい、お主から魔導局とエゾナ教

を通じたシン帝国の方への働きかけは失敗したの

であろう?」


「左様です…」


「ならば仕方ない、一国の宰相をもってしても

止められぬのだ。ただし親書の返答に聖女エアに

関しては関知しない、エゾナ教に交渉されたし…

と付け加えよ」


「…通じますでしょうか?」


「聖女エアの居場所に関して知る者は我々と魔導局

だけだ、幾ら向こうに"確証"があるとは言え、九龍

大陸とミリア大陸に大きな影響力を持つエゾナ教を

敵にはするまい」


「やはり…"魔法の黄昏"をシン帝国は狙って来まし

たな」


「ギアクよ、民は自然と神と魔法の調和によって

生きてきた。あの聖女をもって"魔法の黄昏"を阻止

せねばならぬ、本来シン帝国を相手にしている場合

では無い」


「シン帝国の科学とやらがどこまで戦えるか分かり

ませぬが、また見くびられたものです…」


「シン帝国は5万の遠征軍で勝てると思っているの

であろう、マエガ鎮台とバークラ将軍の騎士団合わ

せて10万に勝てるとは思えぬがな…」


「左様です…」


同時期 クボ丘陵 ゴクチ国とヨトの国

国境付近 増強されたマエガ鎮台本陣


バークラ将軍はヨトの国との国境に位置

する平野を見下ろすクボ丘陵に本陣を構えた。

クボ丘陵の北部と南部に二本、ゴクチ国まで

繋がる主要な街道が通るこの地域は、防衛

の要点であった。


本陣の前には河川が走り、突進する兵の

勢いを弱め、魔法と弓矢で敵を留めるには

とても効率が良い地形であり、北側には

4万、南側には5万、そして後方には

1万の軍勢が陣を成していた。


「将軍、北、南、両陣とも準備は順調です。

恐らくは冬前、敵の侵攻前には余裕をもって

完成します」


「うむ、草の報告はどうだ?」


バークラ将軍の副官が紙を手渡した。

「これになります」


「なるほど…敵は指揮所をヨトの国本城に

構えたか、攻撃準備も予想通りだな…ヨトの

国に勢力の一部を残すようだが…」


「恐らく攻撃を仕掛けてくるにしても、我々

の敵では無いかと…」


「魔導兵を呼べ、報告の時間だ」


「伝令!将軍様に伝令!」

その時、慌てて伝令の兵士が駆け込んで来た。


「シン帝国からの使者より、本国に親書

が届きました!内容は我が国の統治権の譲渡

と聖女様の引き渡しの要求です!」


「…来たか、予想通りだな」

「引き続き準備をせよ、奴らは冬には来るぞ」


開戦3ヶ月 コビ国本城


「リキよ、お前に騎士団をやろう」


「は!ありがたき幸せ!」


コビ国本城の王の間では、国王が第3王子

リキに騎士団長への着任を指示していた。


「ゴクチ国にシン帝国より親書が届いた

事は聞いているな?」


「はい、統治権の譲渡と聖女エアの引渡し

を要求して来たと聞いています」


「無論、ゴクチ国は宣戦布告と受け取り

戦いの準備をしているが…我が国も同様

に準備をしている、特にイナの領では

陣地を構えている訳だが、国として領主

に任せっきりとはいかん」

「しかしながら、国王直轄の騎士団の

勢力をさく余裕はない」


「はい…」


「そこでだ、新たな騎士団を創設、派遣

する事にした。リキよ、お前は"雷"騎士団

を率いて、イナの聖龍騎士団の前衛部隊と

なって敵を駆逐せよ」

「軽騎兵30、徒歩兵70の※警戒捜索が

任務の雷騎士団だ、よかったな一番槍だぞ」


※敵と接触するまで前進し、敵の位置を捕捉

したらそのまま本隊が来るまで戦い続ける


「はい、ありがたき幸せ」


リキが王の間を出ると、外にライが待っていた。

「兄者…」


「聞いてたか?」


「ああ、軽騎兵30に徒歩兵70の騎士団と

言えば聞こえはいいが…」


「ああ、魔導兵無しでは単なる捨て駒だな」


「これは長兄の…第1王子の仕業か」


「だろうな」


「リキ!いいのかよ!?」


「仕方があるまい、王が死ぬと言っている。

ライはどうする?今ならまだ間に合う、王位

争いに遠いライなら、死ぬような扱いは受け

まい」


「分かってんだろ、一緒に行く」


「不器用だな」


「仕方ない、そんな生まれだからな」


2人は笑い合った。


同時期 イナの館


父イナの部屋に、ヨナが呼ばれたのは夕暮れ

の頃であった。


「ヨナ、お前に頼みがある」


「…親父、どうした?御親兵の訓練もようやく

形になったし、まだ何か…」


「今すぐゴクチ国に行って、シン帝国との戦い

をお前の目で見てこい、勿論隠れてだが…

草が送って来た話ではクボ丘陵に陣を構えて

いるそうだ」


「どうして、今?」


「恐らくこの戦、ゴクチ国は負ける」


「!まさか…」


「そもそも何故、ゴクチ国とこの国にシン帝国

が戦いを挑んだか分かるか?」


「帝国として覇権を掴む為、大陸制圧の足掛か

りとしてゴクチとウチに攻めて来る」


「あながち間違えてはいない、とにかくその

目で奴らを見てこい、それで分かる」

「戦い方が分かったらすぐ戻って報告しろ」


「魔導兵は同行出来ないの?」


「ただでさえ貴重な魔導兵を回せん」

「途中、ヤマガシ族の村に寄れ、山の中を

通ってゴクチ国まで行くルートは彼等山の民

が詳しい、書状で話は通してある」


「分った、戦に間に合うように帰ってくる」


「うむ、頼んだ」


ヨナが部屋を出た後、イナが思わず呟いた。


「…ヨナ、頼んだぞ」


"魔法の黄昏"はもはや止められない、時代は

望む望まないに関わらず、変わっていく。

時代の変化に着いていけない者達はどうする?

誰かがその者達を支え率いらなければいけない。

誰かがその幕を引かなければならないのだ。


イナは窓の外を眺めながら息子が歩いて行く

様子を眺めていた。

騎士学校から帰った息子は、一回りも二回りも

大きく成長しているように見えた。


翌日朝、ヨナはゴクチ国に向けて出発した。

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