ヨナの疑問
一方的で、今まで知った戦いと全く違う
会戦にヨナは困惑する。
そもそも何故、我々が一方的に侵略をされ
なければいけないのか、ヨナはかつて留学
した国に複雑な思いと疑問を抱く。
「戻らないとな、フミ、帰りの道案内も頼む」
フミは頷くと2人はすぐ出発した。
夜まで時間は無かったが、早くコビ国に帰り
戦いの様子を伝えなければならない、
その為にも少しでも距離を稼ぐ事にした。
夜の帳が降りるまで進み、2人は野宿を
する事にした。
「大きな筒が最初に並べられて…煙を吹く
と爆発…徒歩兵が…」
「ヨナ、地面に何描いているの?」
焚き火の灯りを利用して、ヨナは地面に
絵を描きながら唸っていた。
「今日の戦いを思い返しているんだ」
「あんなの初めて見たよ、ゴクチ国って
あんまり強くないんだね」
「いや、違う、ゴクチ国が弱いんじゃない
シン帝国の戦い方と道具が進み過ぎていた
んだ」
「どういう事?」
「今までの騎士を中心にした戦い方だと、
ゴクチ国の兵が強い事には間違いない、
数は遥かに上で、しかも陣を作って敵を待ち
受けていたし」
「ふぅん…?」
「あ…ごめん、あまり面白い話じゃなくて」
「ヨナはそういうのは何処で勉強したの?」
「騎士学校で習った、武術以外は殆どこんな
感じの事やっていたよ」
「そもそもシン帝国ってどんな国なの?私
は山しか知らないからイメージが沸かない」
「なんだろう…街は、土がない」
「コビ国の都みたいに?」
「あんなもんじゃないよ、石畳で出来た広場
みたいな広い道路、火事でも焼けない、土を
焼いて作った石で作られた建物…国土も広いし
凄い力がある国だよ、ミリア大陸には他にも
小国があるけど、属国と言って、シン帝国の
子分みたいなもんだよ」
「なんでそんな力がある国がこっちを狙う
の?」
「分からない、土地や資源がある事は間違い
ないんだけど…ただ魔法を使える人がシン
帝国には殆どいないんだ。だから魔法使う人や、
地面にある魔素が貴重な資源なんじゃない
かな?」
「え!そうなんだ」
「僕達が住む九龍大陸以外だと、アナ大陸は
魔法が使える人達がいるけど、シン帝国が
あるミリア大陸や北の大陸は、魔法そのもの
が無くて科学って魔法に変わるモノがある
んだ」
「ふぅん…」
「正直、俺もよく分からない、確かにシン
帝国は今まで戦いを繰り返して大きくなった
覇権主義の国ではある…でも俺達の所まで、
領土を広げる理由が思いつかない」
「ねぇ…ゴクチの国が降参したらさ、次は
ウチらの所に来るんでしょ?シン帝国って」
「間違いないだろうね」
「ヨナは戦うの?」
「そりゃ戦うよ、領主の息子だし、領民を
守るのが領主とその家族の役目だから」
「その"領民"に私も入ってる?」
「そりゃそうだろ、勿論」
「…じゃあ私の為に戦うんだ」
「そうなるけど…どうした、急に?」
「…山の民はね、平地に定住しないから
代々ずっと差別されていたんだよ」
「…ああ」
「ヨナのお父さんのイナ様は、そんな事
しなかったけど、たまに平地の村に行く
と露骨に嫌な顔されるんだよ、私達」
「…」
「ヨナはイナ様と一緒で変わってるのかな?
それとも、哀れだと思って優しくしてるの
かな?」
「…俺にはそんな差別する気持ちはない」
「そっか、ヨナは真っ直ぐなんだね、ごめん
変な事言っておやすみ」
「ああ…おやすみ」
ヨナは何か胸に引っかかりながら眠りに
ついた。