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戦士の出発

フミは戦士と認められ、ヨナの

道案内をする事となった。


フミの父モロと彼女を実の娘のように

可愛がった村長がヨナ達の出発を見送る。

翌朝、村の入り口でフミを待っていると

荷物を括り付けた小型の龍を伴うフミと

父親のモロ、村長、村の魔法使いがやって

来た。


村の入り口の付近でフミは立ち止まると、

モロの方を振り返り片膝をついた。


「これより戦士モロの娘、フミの修行の

儀式を執り行う」


魔法使いの女性が煙を出すお香を、鎖が

ついた入れ物に入れ振り回すと、祝詞を

唱え始めた。


「村長、これは…」


「村では、初めて修行に行く戦士は戦士と

なる儀式をしてから出発する習わしなんだ」


「フミは面を父に返納しなさい」


魔法使いの合図で今まで付けていたお面を

外し、モロに渡すとモロはそれを両手で

高く掲げた。


「山の神よ、フミをお守りくださりありがとう

ございました、面をお返しします」


そう唱えると面は自然に発火した。

地面にそっとモロが置くとパチパチと音を

たて面が灰に返っていく。


「…なんと…」

ヨナが不思議そうに見つめていると村長が

ニヤりと笑った。


「5歳以降はあのような神様の加護がある

お面を付けて過ごすんだ、子供の内は本当の

顔は親以外に見せてはいけない決まりだ」


「5歳以降に見た事はないが、フミは美人だ

ぞ、母親も美人だったからな」


こちらには背を向けているフミの顔は今は

分からないが、モロの顔は泣きそうな、

嬉しそうな複雑な顔をしていた。


「戦士モロの娘、フミよ、戦士の修行に行く

事を認める」


モロは魔法使いの合図で袋の中から2本の

短剣を取り出した。


「フミ気を付けてな、戦士は必ず村に帰る

までが修行だ、忘れるな、いついかなる時

に修行に出ても必ず村に帰る、分かったな」


「分かりました、精進します」

フミは短剣を受け取ると振り返った。


振り返ったフミは驚く程の美人だった。

褐色の肌に大きな目と艶やかな唇

ヨナは思わず目が釘付けになった。


村長はその様子を見てヨナを肘でつついた。

「手を出すなら、もっと大人になってからな」


「いやいや!何を言ってるんですか!」


ライがここにいなくて本当に良かったと

ヨナは思った。

間違いなく奴はフミを見たら口説きに

かかるだろう。


「なんだよ…」


フミはヨナの前まで歩み寄ると、恥ずかし

そうに俯いた。


「すまない、あまりに美人で驚いた」


「そう言う事を!父上の前で言うな!!」


フミの右ストレートが胸に命中した。

一番彼女の攻撃で効いた気がする。


村の入り口まで見送られると、フミの案内

でゴクチ国までの道を進み始めた。


「モロ、良かったのか?」


「ああ、やっぱり心配か?」


「そりゃ村長だからな、フミ、母親にそっくり

だったな」


「ああ、美人だろ」


「フミなら上手くやるさ」


「ヨナは覚えてなかったが、ヨナが子供の頃

イナ殿の屋敷で会った事があるんだ。その時、

屋敷の近くまで魔獣が現れた」

「ヨナは、逃げ遅れた使用人を守る為に、

小さい身体で手足を広げて、魔獣の前に立ち

はだかったんだ」


「なるほど、生まれながらにしての騎士か…」


「安心しろとは言わないが、大丈夫だモロ、

ヨナは真っ直ぐな男だ」


「ああ…」


ヨナとフミを見送るモロと村長は、一抹の

寂しさと成長したフミを送り出す嬉しさで

それ以上言葉が出なかった。

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