戦士フミ
ヨナは過去、発露した魔法で人を殺して
しまっていた。
フミはまだまだ知らない所には力を持った
人間がいる事を知った、
翌日、ヨナはモロと村長の所にフミを戦士と
して同行して貰いたいと願い出た。
モロと村長の胸には、幼馴染みであるフミの
母親との思い出が浮かび上がる。
「じゃあヨナは何で魔法を?なぜ封印を?」
「子供の頃に突然身体に龍騎士の魔法陣が
浮き出てきて、魔法が使えるようになった
のだけど…」
「うん…」
「魔法が暴走して、人を死なせてしまった
んだ、それで封印して魔法を極力出さない
よう抑え込んでいる」
「…嫌な事聞いてごめんなさい…」
「いや、いいんだ、こちらこそ変な事言った
な、もう遅いし風邪引くから戻ろう」
フミは結局ヨナがどのような魔法を使って
いるか分からなかった。
身体強化にはさほど魔法を使っていない、
体術のように見える。
木の枝が鋼ように硬くなった理由が分か
らない。
人を死なせる程の魔法とは何か、フミは
少し背筋が寒くなった。
翌朝、村長の所に行くとヨナは開口一番で
「フミを戦士として同行させたい」と願い
出た。
「いや…しかし…」村長はモロを見ると
モロは俯きつつ「…戦士としてか…」と
呟きヨナを見返した。
「昨晩、フミと手合わせした結果か?」
「そうです、彼女の剣には迷いがない、
ただ純粋に自分が強くありたいように
見えました」
「強くありたいか…妻を思い出すな、妻
も魔法が使えたが、占いとか薬作りより
も攻撃魔法の方が得意だったな」
「ああ、懐かしいな、彼女が子供の頃と
似ているな」
村長とモロは、子供の頃を思い出すよう
に笑った。
「フミの母親も、皆を守りたいと子供の頃
攻撃魔法をしょっちゅう練習していたん
だ」
「モロと私がやめろって言っても聞かなく
て、魔獣すらこの村に近寄らなくなった頃
、この近辺に強力な魔獣がいると噂を聞き
つけてイナ殿が騎士を引き連れて討伐に
来たんだ」
「あの時のイナ殿の顔は面白かったな!
噂の魔獣が、実は13歳の女の子が山で
魔法を練習しているだけだったんだからな」
一瞬の沈黙が訪れた
「あの娘も、やはり血は引いているんだな…」
「ヨナ殿、娘を連れて行きなさい、きっと
役に立つ」
「モロ殿…」
「ヨナ殿、言わなかったが、実は魔獣も
ここ数年は出てきていないんだ、動物が
地面から湧き出る魔素を食べると魔獣に
なると伝えられているが、それもここ
しばらく魔素すら出てこない」
「つまり、村に戦士が必要な場面がここ
しばらくなかったのだ、だから気にする
な」
村長とモロがそう言うと、後ろから声が
した。
「父上…」
後ろにはフミが立っていた。
「戦士と認めてくれるの?!」
「フミ、まだ戦士として半人前だ、だから
修行を申し付ける、ヨナ殿をゴクチ国へ
案内しろ」
「はい!」
「ヨナ殿、イナ殿から話が来た時から考えて
はいた、昨晩手合わせしている様子を見て
決心がついた、娘が案内する、宜しく頼む」
「はい!ありがとうございます」
ヨナとフミは深々と頭を下げると、出発
の準備を始めた。