第3話 元々は1つだった
小説【18禁惑星ちきゅきゅ】第3話 元々は1つだった
父「ちきゅきゅは、元々は5次元惑星だった。全ての物を分かち合い、豊かで平和に暮らす楽園のような世界だった。だが、ある時に他の星から異星人がやって来た。技術の上では当時のちきゅきゅ人の、遥か先を行っていた彼らは不思議なテクノロジーを見せ、自分たちは神だと名乗ってカルト宗教を作り、ちきゅきゅ人たちを支配し始めた。疑うことを知らなかったちきゅきゅ人は、その全てを鵜呑みにし、奴隷のように従い続けた。
イタオ「…………」
父「だが、あまりにもヒドイ過重労働や抑圧や搾取や暴力に、一部の人は気付き始めた。ヤツラは神ではない! 悪魔だとな… そしてそこから脱出し、ヤツラに見つからない場所でひっそりと暮らし始めた。
イタオ「なるほど…」
父「だが、ちきゅきゅにやって来ていたのは、悪魔だけではなかったのだ。救いの神とも言うべき善良な異星人が、その人たちにコンタクトを取ってきた。もしお望みでしたら、安全な星にお連れいたしますとな。そして、希望者を他の星に避難させてくれたのだ」
イタオ「もしかして、その安全な星というのがノーテンキ星? そして避難して来た民の末裔がオレたちノーテンキ星人なの?」
父はコクリと、うなずいた。
イタオ「オレたちは、元々は同じ民族だったということだね… だから色々と共通点があったのか…」
父「うむ… その後ノーテンキ星に避難して来た人たちは、善良な異星人たちの支援のお陰で元の楽園のような世界を再興することが出来た。だが、ちきゅきゅに残った人たちには、当然起こるべき事が起こった」
イタオ「起こるべきこと?」
父「うむ… 恐怖や抑圧の周波数に包まれたちきゅきゅは、次元下降を始め、ついには3次元まで堕ちてしまったのだ…」
イタオ「3次元に堕ちると、どうなるの?」
父「まずは、愛を感じ取る内的感覚の機能が大幅に低下してしまう。すると残るのは恐れと欲望の2つになる。あとは支配者がその2つをアメとムチとして巧みに使い、操り続けることになってしまった」
イタオ「そんなの、かわいそうだよ! 助けてあげようよ!」
父「もちろん助け船は、何度も送っている。だが、もう感受性を失った彼らの心には真実のメッセージは響かない。送ったメッセンジャーや活動家を十字架に張り付けにして殺害したり、火あぶりにして殺したり、毒を盛って殺したりと、みんな死体にされて帰ってきた…」
イタオ「誰がやったの? 悪魔支配者?」
父「いや、ヤツラにそそのかされた一般の民だ… 救いに行った人や、ただ無償の奉仕に行っただけの人が、徹底的にネガキャンをされた… アイツらは悪魔だとか、魔女だとかのレッテルを貼られてな…」
イタオ「それを信じてしまった人たちが殺したの?」
父「うむ… 3次元に下降した世界では、もう自分では何も考えることが出来ないほど、思考力が落ちてしまうんだよ…」
イタオ「………」
父「だから、上の人の言いなり、偉い人の言いなり、怖い人の言いなり… つまり奴隷ロボットと化してしまうんだよ… でも我々はもう何千年も、何万年も助け船を送り続けている。民を目覚させ、導く指導者的存在や、メッセンジャーをな…」
イタオ「分かった! 今度はオレたちがその後を引き受けるよ!」
父「お前たちが? 子供には無理だ! 第一あそこには行ってはいけないと、言ってあるだろう!」
イタオ「だって大人たちのやり方で、何万年も上手くいかなかったんだろ? それならオレたち子供のやり方でやるしかないだろう!」
父「子供のやり方?」
イタオ「うん! 大人たちのやり方なんて、どうせ上から目線で、あれしろ、これしろ、あれダメ、これダメと言うだけだろ? オレたち子供は、そんな思い上がったことはしないんだよ! 子供には子供のやり方があるんだから、まあ見ててごらんよ!」
父「具体的に、どうするつもりだ?」
イタオ「子供の得意技は、誰とでもすぐに仲良くなれることさ! オレたちは人を指導するつもりなんて無い。ただ純粋に友達になりに行くだけだよ。まずは、こちらから心を開き、心を許し、心で繋がり、心を通わせるだけさ」
父「………」
イタオ「対等な関係だけが、エネルギー交流を潤滑に行うことが出来るんだよ! その能力は大人よりも、子供の方が遥かに優れている! だからまずは友達になることから始めるつもりだ! それが遠回りのようで、実は一番の近道だと思うよ」
父「お前も、いつの間にか成長していたんだな… ただのイタズラ坊主かと思っていたが… 分かった! 出来る限りのことをやってみなさい。でも、充分に注意してな。彼らの中には話しの通じない人も多いし、決して心を開かない人も多いからな」
イタオ「大丈夫だよ! 純粋さは子供の特権だ! 純粋な心だけが全ての人と友達にも、兄弟姉妹にもなれる唯一のツールなんだから!」
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イタオ「と、言うわけなんだよ」
ズラ子「なるほどね〜 これで納得したわ!」
………………
イタオ「だから、これからはちきゅきゅに行く機会が増えると思うから、よろしくな!」
ズラ子「うん! もちろん私も行くわ! あれ? あそこ見て! あれアンタの父ちゃんじゃない?」
イタオ「あ! ホントだ! 何をやっているんだろう… 行ってみよう!」
………………
父「え〜 ご通行中の皆さん! 私はちきゅきゅの18禁指定の取り消しを求める署名活動を行なっております。子供でも自由にちきゅきゅに行けるようにしてあげたいのです。大人たちが勝手に作ったマイルールを、問答無用で子供たちに押し付けるのは、あまりにも一方的すぎます。子供には子供なりの意見も考えもあるものです。我々大人は、それを尊重する大きな心を持つべきではないでしょうか。どうか皆様のご理解とご協力を、よろしくお願いいたします!」
イタオ「父ちゃん… ウルウル( o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅ ) オレは父ちゃんのことを見直したぞ! これからは、もう少しイタズラを手加減してあげるからな」
ズラ子「やめるつもりは無いのね(笑)」
イタオ「ああ 子供心、遊び心、イタズラ心を失った人生ほどツマらないものはないからな。ハハハ(笑)
つづく…