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ランク外冒険者がゆく  作者: 小馬鳥
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エティオ覚醒

 エティオは目を覚ますと、拘束具で身動きの取れないまま寝かされている自分に気付いた。さっきまでのでき事がまるで夢であったかのように、今見えている景色に変わりはなく、一瞬その記憶を疑いかけたが、すぐに頭の中に直接響くマアトの声を知覚した。


(大丈夫ですよ、エティオ。ワタシはちゃんといますから、夢ではありません)


(それなら良かった。あれが夢だったなら、オレにとっての黒歴史秘話になったところだったからな。

 さて早速だが、この拘束をどうしようか?)


(それならば方法は色々とありますが、まずはご自身の肉体活性を利用した方法をお試しいただき、感覚のすり合わせを開始しましょう。

 そのうえでワタシから提示できる選択肢はふたつです。高強度の肉体強化を発揮して金属の拘束具を破壊して脱出する方法と、手足の骨を砕きつつ脱出してから高強度の肉体回復を発揮して原状回復する方法とがありますが、どちらに…)


(それは選択肢じゃないだろ! どう考えても前者しか選びようがないからな!)


(ふふ、ええ、冗談です。別にエティオがMだとか、ポンコツと言われた腹いせで仕返ししてやれとか、そういう邪な考えは持っておりませんのでご安心ください)


(どちらもかなり疑わしいが、今はそんな悠長なことを言っている場合じゃないな。とりあえず自分の肉体活性がどの程度のものなのか見てみたいし。ただあとでじっくりOHANASHIしようじゃないか)


(ではエティオの真の実力を目の当たりにして、震えて眠っていただきましょうか)


(それ、悪者が言いそうな台詞であって、自身に向かって言うものじゃないからな? 震えて眠るのは、オレか?

 寝ちゃったらダメじゃないかな〜、って、こんなんじゃダメだ! 弱い!!)


 今生を受けてからずっとシリアス気味に生きてきたため、久しく忘れて鈍ってしまった突っ込みの感覚に歯噛みをしつつ、エティオはわくわくし始めている自分に薄っすらと気付いていた。


(エティオには笑顔が良く似合うと思いますよ。ではそれを存分に見せて頂くためにも、早速いってみましょう!)


 マアトも嬉しくなってきたのだろう。声音はずっと明るく、期待しているのが良く分かった。

 そしてエティオはそれを聞き、期待に応えたいと思ったのだった。


 変化はすぐには分からなかった。

 そこで、何が変わったのか、エティオは自分の状況を注意深く見つめてみることにした。


 まず気付いたのは、拘束されているにも関わらず、体が軽く感じることだった。

 手足を動かせるわけではないが、まるで体中に付けられていた修行用の重りを取り去ったような感覚。これはすごい、とエティオは思ったが、マアトに笑われた。


(ふふふ、エティオ、それは身体強化ではなく、魔力過多の解消に伴う身体的不調の払拭に伴うものですよ。

 目覚めてからずっとその状態だったのですが、気付いたのが今だった、という話ですね。

 身体強化の結果を確認するには、体を動かさなければダメですよ)


 恥ずかしいと思うと同時に、自分の考えがマアトに筒抜けなのを感じ、こちらから意思疎通を図りたいと思うとき以外は自分の考えを覗かないように、とマアトに要請した。そうでなくては、おちおち変なことを考えることもできない。

 マアトはその要請を当然のこととして受諾し、ホッとしたところでエティオは改めて肉体強化の結果を確認することにした。


 バキンッ! ゴトン!


 最初は恐る恐る、拘束されていた右手と左手を反対方向にゆっくりと撚るように力を加えていくつもりだった。しかし視界の隅にキラキラと光る一枚の羽のようなものが舞うのを視たと思った瞬間、何の抵抗も感じることなく、先ほどまで微塵も揺るがなかった金属製の手枷は、あっさりと砕けて床に落ちてしまった。

 その結果にエティオは、前言を翻して震えて眠りたくなってしまったほど驚愕した。


(思ったよりも脆かったですね。これならば強化の強度を相当落としても大丈夫でしょう。

 エティオ自身の認識の摺り合わせのつもりでしたが、ワタシもしっかりと出力の調整をしておきましょうか)


 マアトは高次生命体が築き上げた文明において利用されていた類似金属の数段落ちの性能を想定していたのだが、それでもなお過剰な性能だったため、即座にエティオが生活するオルビスの基準を算定しなおす。そのままであれば日常生活が困難な状況も想定されたからだ。

 なお本来であれば肉体活性は戦闘時のみ使用すれば良いのだが、エティオの場合は肉体活性の出力制御をマアトが担当しているため、その発動維持に神経を使う必要がない。むしろ発動を維持している方が魔力の自然回復を促進し、肉体活性およびマアトの稼働魔力消費分と補充分とが相殺できるため、常時発動を行って必要に応じその強度の変化で対応するようにマアトが調整していた。

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