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ランク外冒険者がゆく  作者: 小馬鳥
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マアトによるエティオ強化計画

 マアトはさらにエティオに告げる。


「総魔力量の調節などと言われても理解できないかもしれませんが、先ほどの例を用いて言うとするならば、虚数次元の魔力プールを作成したうえで、ダムであるエティオの魔力を一旦すべてそこへ移すのです。そこからワタシという高性能な水道のような経路を経て、エティオの元へ必要な時に必要な分だけその魔力をお返しします。そしてワタシがエティオの中に本体を移す今回の場合、エティオの状態をつぶさに解析し続けるので、必要な時もその量も、完璧にエティオに同調させつつ実現させることができます。これによりエティオは、完全なる肉体活性の発動が可能となります。また完全なる肉体活性の発動はすなわち、ワタシの消費する魔力の逐次補充も可能となるので、結果的に今後ワタシは魔力を消費することなく稼働することが可能となります。年会費実質無料のゴールドカードのようなものですね。


 しかも事は肉体活性の完全発動だけに留まりません。必要に応じて肉体活性の強化と回復の強度を、適切なバランスで逐次変動させることができるようになるのです。例えばいつもは強化と回復の強度を均衡させることで状態の維持を図りますが、もしもエティオの肉体強化を超えてダメージを与えられるようなことがあれば、即座に回復の強度を増してダメージの回復を図ることができます。もちろんその際には強化の強度を落とすことなどせず、あり余る魔力プールからワタシが多めに回復へと魔力供給をコントロールすることで、エティオには一切の手間をかけずに実現します。これはオーランドもできなかったことで、覇王術の発展型と言って差し支えありません。


 また魔力プールの運用は、実力の隠蔽も可能にします。その精度にバラツキはありますが、多くの実力者は空気漏れの量などから相手の力量の把握をしています。エティオのような例外もありますが、基本的に実力の上昇に伴い魔力の効率的な運用を心がけることから、空気漏れの量は減っていく傾向にあります。このことを逆用して、擬似的に空気漏れを再現することで実力を低く見せ、相手の油断を誘うことができるかと思います。なお擬似的な空気漏れですが、もちろん勿体ないのでのちほどきちんと回収しておくことも忘れません。高性能ですから。


 まだまだできることはありますが、すべてを語り尽くすのは時間がかかってしまいますので、折を見て随時お話させていただきたいと思っております。この場にて申し上げたいのは、この総魔力量の調節だけで、バルザックの打倒は間違いないと断言できると言うことです。

 エティオの破術の実力は、師であるオーランドを超えていると本人から言われていました。それはそうでしょう。エティオはあんなにも頑張ったのですから。エティオをもってすれば当然のことです。

 そうであれば、最上位魔族を打倒したオーランドに対し、それよりも劣るバルザック如き、どうしてエティオが打倒できないことがあるでしょうか。確かに肉体活性を実際に戦闘で活用したことのないエティオが、その運用に戸惑うことはあるかもしれません。また不完全ながらも試したことのある肉体活性に対し、武器や防具の強化はまったくの初の試みとなることで、色々と勝手が変わってくるかもしれないことも事実です。

 しかしそれらは些末な事と言ってしまって問題ありません。最も難しい魔力配分とその維持は、ワタシが担当させていただきます。エティオは意識することすら不要です。エティオの意図は、ワタシが誰よりも傍で完璧に汲み取り、完全に同調させますので。ですので、エティオはこれまで培ってきた破術の技術と、肉体活性によりもたらされる向上した挙動を、戦闘の中で擦り合わせていってください。最初は戸惑うかもしれませんが、エティオならすぐに慣れ、そうすれば打倒などあっという間です。


 いかがでしょうか? ご満足頂けましたでしょうか。


 そうですか、大変嬉しく思います。


 つきましては、エティオにお願いがあります。今後ワタシに、エティオのためとなることという大前提のうえで、エティオの能力の自発的な行使の許可を頂けないでしょうか?

 通常であればワタシはすべての能力の行使に、マスターであるエティオの許可を求める必要があります。これはワタシの勝手な判断による暴走を止めるための制限であり、それを解除することにリスクがあることは認めます。しかしこの場所とは違い、エティオにとっての現実世界であるオルビスでは、時間的な制約が致命的になる可能性もあるかと思います。そうした危惧を事前に排除するために、ワタシを信頼しては頂けないでしょうか。

 もちろんワタシが暴走していると判断された場合、エティオにはワタシの緊急停止、および先ほど求めた自発的な能力行使の許可の取り消しの方法をお伝えしておきます。そういった事態には至らないであろうことを強くお伝えしておきますが、自立思考型のシステムには暴走という概念が付き纏うものですので、大変遺憾ではありますが念の為です。


 信頼して頂けて、大変嬉しく思います。その信頼に応えるべく、全能力を尽くしますので。


 それでは早速一連の許可申請を実施し、魔力暴走を止めるための措置を行います。

 まずは魔力操作および魔法とスキルの発動に関する全権をワタシに委任する手続きの申請と実行……マスター・エティオの受諾確認、実行完了。

 これで自発的にエティオの能力の代行が可能となったため、以降はワタシが自動的に処理して参ります。


 乱されている体内魔力の流れを正常化……完了。

 衝突により体外へと排出されかけている魔力の抑制と波動の緩和……完了。

 魔力誘導による環境魔力の乱流を制御し沈静化……一部完了。これは時間の経過により完全に完了する見込み。

 最後に魔力暴走を引き起こしかけたことに起因する肉体の損傷を確認……口腔内の損傷を確認したため修復し、完了。それ以外は、現段階での肉体損傷を認めず。

 以上で魔力暴走の停止措置は完了し、問題がないことを確認致しました。


 続きまして、先ほど説明したとおりに魔力プールの作成を行います。魔力プールは虚数次元としておきますので、容量無制限に貯めておくことができます。今後エティオの総魔力量はゼロとしてしまっても、魔力運用上は問題ありません。ワタシが必要に応じて、魔力プールからタイムラグなく引っ張ることが可能ですから。

 しかし見かけ上とはいえ総魔力量がゼロであると、何らかの疑いの目を向けられたり、なぜ実際に魔力を使えているのかという問いに答えを窮することとなることが目に見えておりますので、ひとまずオーランドと同等程度の総魔力量をもたせておくことに致します。そうすれば覇王術の完全なる行使にも、なんら違和感を与えることなく説明できるでしょうから。そしてこれによる副次的な効果として、以前から悩まされていらした、魔力過多に伴う倦怠感を始めとした肉体の不調から開放されます。


 あ、やはりお気付きではなかったのですね。


 はい、魔力過多による肉体不調で間違いありません。

 ワタシから見ても異常な状態で、破裂寸前の風船に、さらに空気が押し込まれているような感じだったので、見えている側からすれば、いつ破裂してもおかしくないとハラハラしておりました。


 そうこうしている間に、魔力プールを作成し終え、また魔力の移動と見かけ上の総魔力量調整も完了しておきました。

 こちらにいる間はオルビスにおける時間経過はありませんので、エティオがあちらに戻り、時間の流れを認識し始めると同時に結果が反映されます。


 最後になりますが、この場所への帰還は今後、原則的にできないものとお考えください。ワタシがエティオについて行くことにより、召喚する形での来訪ができなくなるためです。また目印もないため、機能が開放されたとしても、次元転移での移動もできません。

 それでは向こうに戻り、エティオ自身の状況確認と心の準備ができ次第、バルザックの討伐と参りましょう。


 はい、無理せずできることをしっかり頑張りましょう!

 ただ気をつけてくださいね。今後ワタシもお手伝いさせていただきますが、できることは大変多くなりますよ?

 無理しないことをしっかり頑張って、ご自身を労って頂けるようにお願い申し上げます。


 繰り返しになりますが、どうぞ末永く、よろしくお願い致します。

 ワタシの唯一人の、マスター・エティオ」

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