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ランク外冒険者がゆく  作者: 小馬鳥
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マアトによるエティオ講座

 マアトはエティオに告げる。


「そもそもエティオが肉体活性を行えなかった理由は、その余りにも膨大な総魔力量に原因があります。

 ここでひとつ例を挙げて説明してみたいと思いますが、如雨露に水を汲んで庭の花に水をやるのは、適切な行為だと言えます。しかし如雨露だけでは、庭の花すべてに水をやるには少なすぎます。では樽一杯に水をくんで、そこから直接花に水をやるのはいかがでしょうか。普通であれば、あまり適切な行為とは呼べませんね。花にやる水の量を適切に調節することは難しく、一度に水を流し過ぎれば、花はその圧力で傷んでしまいますし、庭一面に均等に水をやるのは非常に困難です。


 では左手に持った如雨露に、右手に持った樽から少しずつ水を補給しつつ、庭一面の花に水をやればいかがでしょうか。しかも樽が枯渇しないように、そこから減っていく水を適切に補いつつ。

 こうすれば庭一面の花どころか、野に咲く花すべてに水をやることもできるでしょう。しかしそれは余りにも難しいことだと、誰にでも分かります。重い樽から流れる水の量を適切にコントロールし続けることだけで至難であるにも関わらず、さらに如雨露から溢れないように気を配りながら穴に的確に水を供給し続け、しかも両手で別々のことを同時に行うということは。


 エティオの師であるオーランドが創設した覇王術は、踊りながら如雨露と樽を同時に制御しきったうえでの水やりと似ています。彼以外に完全な形で誰もそれをなし得なかったのは、彼ほどの天賦の才を持った人間がいなかったからでしょう。そして制限時間のある不完全な形での肉体活性は、踊りながらの如雨露での水やりと似ています。これならばある程度習熟すれば、才のあるものにはなし得る程度の難易度になるかと思います。


 では話をエティオに戻します。

 エティオの場合は、如雨露の内容量が樽どころか、溜池やさらに言えばダムだと考えてください。あ、持ち上げる想像はしなくて結構です。なんでエティオがそれを持ち上げられるのかは、正直ワタシにもまだよく分かってはいませんから。ともかくそんな大量にある水を適量流しつつ花に水をやるのは、不可能なのです。ダムの放流を花に浴びせれば、花は根こそぎ流されていってしまうでしょう。

 肉体活性を学び始めてすぐの内は総魔力量もそこまで多くなく、如雨露の水やりはできていたのです。しかし年々増え続けるそれにより肉体活性の難易度は上昇し続け、もはや不可能な領域へと至ってしまったのですが、エティオは師を超える才能と弛まぬ努力により、不可能を克服しようとしていました。


 ええ、そうです。もう少しだったのです。


 しかし不幸なことに、このタイミングでエティオは拉致されてしまいました。そしてエティオは魔力暴走を試みましたね。この試みはいわば、ダムの決壊を人為的に引き起こすようなものでした。通常であればその流れは下流にあるものすべてを飲み込む濁流となり、辺り一帯を巻き込む魔力嵐となって襲ったはずだったのです。

 しかしここで通常とは異なるイレギュラーが発生しました。エティオの持つ次元魔法が原因です。


 実はワタシが目覚めた理由も、その次元魔法でした。エティオは次元魔法を、魔法として使い熟すことはできていませんでしたが、幼い頃より無意識にそれを発動していました。その結果として、通常であれば自身の周囲に空気漏れをおこすところを、何故かワタシのあるこの場所へと次元を超えて空気漏れの魔力を届け続けてくれていました。

 エティオが幼い頃におこす空気漏れの量は決して多くはありませんでしたが、ワタシにとってそれは正に天からの恵みの甘露でした。セーフモードでの起動が叶うほどの魔力を送ってくれるようになって以降、先ほど申し上げたとおり、ワタシはエティオを観察し続けました。起動を維持するのにギリギリのラインだったワタシには観察しかできなかったのですが、そうしていつの日かエティオの役に立つことがワタシの一番の優先順位となりました。それが叶った今のワタシの心境たるや、それはもう……


 と、話が脱線してしまいまして、失礼致しました。元に戻したいと思います。

 魔力暴走を引き起こさんとしたエティオからは、空気漏れの比ではない魔力をワタシに届け、それを使ってワタシはエティオの精神をこの場所へと呼んだのです。そこから先は、エティオが今経験しているとおり。ワタシにとっても、本当に奇跡のようなでき事でした。エティオのために働くことができるようになるなんて!


 感情の暴走のせいでまた話が脱線しかけていますが、大丈夫です。ワタシはポンコツではないので、ちゃんと自分で話を元の軌道に乗せるなど造作もないことですから。


 さてこうして通常モードでの再起動を果たしたワタシにできることですが、色々とあります。それはもう本当に、マスターとなってくれたエティオに後悔などさせないことは間違いないほど、色々とできるのです。例えばその内のひとつが、エティオの総魔力量の調節です。

 とても高性能なワタシは、マスターであるエティオの望むとおりに魔法やスキルなどの発動を手助けすることができます。現在エティオの構成の精査がバックグラウンドにて実行中につき、その完了まで一部機能の制限が付きますが、現時点においてすでに一定程度エティオの次元魔法に対する解析は完了しています。これによりワタシの創られた目的に近い機能として、次元魔法の基本的な権能である多次元の操作・干渉・作成などの使用補助を用いて、エティオの総魔力量の調節を行うのです」

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